昨年の初夏に夫婦で自動車メーカーMorris モーリスの創業者の邸宅Nuffield Place ナフィールド・プレイスを見学した後は、更に西へ進み、前から訪れたかったテームズ河畔の村Dorchester ドーチェスターを目指す事にしました。何故ここを訪れたかったかと言うと、かつて大聖堂でもあった修道院(の付属教会)が在るからです。
正式名称はThe Abbey Church of St Peter and St Paul 聖ペトロ聖パウロ大修道院教会ですが、一般的にはDorchester Abbey ドーチェスター・アビーと呼ばれています。
そもそもここは、立地からして相当強力なパワースポットのはずです。テームズ河を挟んだWitternham Clumps ウィッテナム・クランプスの対岸にあり、古くから歴史的に重要でした。古代人はここに何か霊的な物を感じたらしく、新石器時代にはヘンジ(土塁と堀に囲まれた円)とサーサス(土塁に囲まれた通路)が建造され、恐らく宗教儀式に使用されたと考えられています。4世紀の古代ローマ時代にも、神殿が存在したと言われています。
そしてアングロ・サクソン時代の七世紀には、ローマ教皇ホノリウス1世から遣わされた修道士、聖ビリーヌスがウェセックス王キネギルスに洗礼を授け、ウェセックス王国の大部分をキリスト教化する事に成功した為、司教座を敷きウェセックス初の大聖堂を建てる土地として選ばれました。最初は木造の大聖堂だったようですが、その後何度かの司教座の移動もあり、九世紀には石造に建て替えられます。
12世紀にはアルル―修道会の大修道院となるものの、16世紀に例に寄って国王ヘンリー八世から強制的に解散させられます。現在は付属教会が村の教区教会として残っているだけですが、元修道院の教会は大抵見所が多いのです。
教会の脇の古めかしい建物は、現在博物館になっています。これもかつては、司祭館等の教会付属の建物だったと思われます。
南側の教会への通路は、赤い蔓バラの生垣に囲まれて良い雰囲気。
墓地の周囲は、花が良く手入れされています。
教会の脇には、まるで童話の世界のような(墓地に接してはいるが)絵になる茅葺屋根の田舎家が。恐らく、Church Cottageとかの屋号が付いているんだろうな。
いよいよ中に入って見ます。長年増改築を重ね、今は身廊と南側にのみ側廊が在る造りになっています。
14世紀に付け加えられた南側廊には、私の大好物の中世の壁画が残っています。
磔刑のキリスト像。この場所の中世のタイルが残る床には、作家のSarah Fletcherの墓碑があります。
他の部分にも中世の壁画が残っていて、これは幼子イエスを肩に乗せた聖クリストファロス像のようです。褪せて判読出来ない物も含めると、昔は壁中が壁画で覆われていたのかも知れないと想像させられます。
身廊の大部分は、最も古い13世紀以前の築。確かに、単なる村の教区教会として見ると立派な規模です。
この洗礼盤は12世紀の作で、鉛製(有毒じゃん)としてはイングランド国内最高傑作の一つだとか。
イギリスの教会に付き物のkneeler(お祈り膝クッション)は、ここのはシックな色合いに纏めてあります。
南側の聖母礼拝堂には、この大聖堂の創立者の聖ビリーヌスを祀る祠が。
13世紀の騎士の貴重なエフィジーや、ブラス板が嵌め込まれた墓標も沢山残っています。
北側には、13世紀に増築された聖ビリーヌス礼拝堂。東側(最奥)の円型の小さなステンド・グラスは、ここで最も古い13世紀中頃の作だそうですが、余りに小さくてちゃんと観察していなかった💦
この教会で最も印象的だったのが、内陣聖域の祭壇を囲むのステンド・グラス。装飾的な石製の仕切り枠が、かなり細かい事にも注目です。
北側の14世紀作のステンド・グラスは、ダビデ王以降のイエス・キリストの家系図を示しているそうで、各仕切りに丁度1/6ドール位(例えがアレでごめん)の人物像が一人ずつ配置されています。
そして良く見ると、窓枠にはガラスの人物像と同じ位の大きさの彫像が付いています。こんな凝ったステンド・グラスは初めて見たので、ちょっと感動しました。
東側(祭壇背面)のステンド・グラスは更に繊細かつカラフルで、14世紀初期のガラスを19世紀の修復の際に再利用しているそうです。
その上部のバラ窓は、修復を受け持ったWilliam Butterfieldに寄ってデザインされました。
かつて回廊が在った北側部分は今は展示室になっていて、残骸となっている修道院の建物の装飾を時代様式別に展示しています。
敷地から発掘された12~13世紀の石棺も展示してあり、実際に修道院長らしき人物の遺体が発掘されたそうです。ここ半端なく暗くて、マジ怖いんじゃけど💦
期待通り、大変見所の多い大満足な修道院でした。 しかし念の為、日本に居る時はこんなに教会マニアでも歴史に熱心でもありません。そもそもクリスチャンですらないし、イギリスでは単に他に娯楽がないだけです…。
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