今年亡くなった母は、結局料理は生涯まるで駄目でしたが、裁縫は戦前生まれの女性としては人並みの腕前を持っていました。型紙とかが無くても結構一通り作れたようで、つまり現代人にしてみれば相当出来た訳です。独身時代は既製服が高く田舎で種類も少なかったから自分の洋服等も作っていたそうだし、私が生まれる前の姉が幼児だった頃には抱き人形の着替えを縫って上げた事もあり、また私達姉妹のネグリジェを縫ってくれた事もありました(余りに時間が掛かり過ぎて、仕上がった時には私達は成長して、既につんつるてんになっていたが…)。
それで母が定年退職した後、時間はたっぷり出来たのだから、私にドールの着物を縫ってくれと、原寸大型紙の付属した日本ヴォーグ社の「わたしのドールブック3 ゆかたと着物」の本と、モデル用にジェニーのお友達人形を一体渡し託しました。
それで今回母の遺品を整理処分している時、あの人形と本は今でも何処か仕舞ってあるはずだと思ってはいましたが、母のアトリエの畳式のチェストの中から発掘されました。
暗い場所に仕舞われていたせいか、もう二十年以上経っている割に人形は良い状態でした。一緒に作り掛けの縮緬のドール用着物も出て来て、挑戦しようと試みてはいたようです。確かにこのヴォーグ社の本は本格的過ぎて、今自分が見ても参考にはなるものの難易度は高いとは思います。もし当時ちまちょこさんの「ゆかたの本」があり、それを母に上げていたら、母でも完成出来たのかも知れません。それとも「本を見ながら説明に沿って作る」と言う行為が、母の脳の構造上は難し過ぎて無理だったのかも、とも思います。
その時私が着物モデルとして選んで母に渡したのは、元々着物を着た仕様で発売された「桂由美ちゃん」と言う名前のドールでした。そう、あのブライダル・ファッションデザイナーの桂由美のプロデュースです。タカラ社(現タカラトミー)で製造しており日本製で、ボディや仕様はジェニーと同じ。しかしウェディング・ドレスではなく振袖を着ていた訳で、その着物が桂由美デザインとも思えず、一体どのようにコラボだったのかは知りませんでした。
が、今突き止めた事には、実際に桂由美がアウトフィットをデザインした「きもの」と言うシリーズで、他にもジェニーを始め何人かのフレンズが桂由美の着物を着用して販売され、その中で桂由美ちゃんドールはデザイナー本人がモデルだそうです。…えっそうなの?? 頭にターバン巻いてないから、気付きませんでした~。
当時のファッション・ドールとしては未だ珍しかった(日本でさえ)漆黒の直毛で、凛とした瞳にキリッと赤い唇を持った、正に和装にぴったりのドールです。この唇が、他のジェニフレと比べても小さ目で、言わばおちょぼ口なのが特徴。また鮮やかな紫色の瞳も、割と珍しいと思いました。
このアイプリントは今眺めると驚きの繊細さで、現代の中国産タカラトミー製は勿論、今はキャッスル製でさえ作れないクウォリティなのではと思えます。
元は前髪ぱつーんで重過ぎ、折角のアイプリントが陰になって見えなくなってしまう為、少しだけギザギザにカットしました。パッケージの写真には透かし前髪になって撮影されていましたが、実物をそうするのは無理でした。
しかし余りにも着物向き過ぎるドールで、確かに正統派な和装はばっちり似合うものの、ハズシや冒険心のある今時の着こなしは返って難しそうです。
結局このドールには、まずはやっぱり着物を着せる以外は考えられませんでしたが、夏だから浴衣にしました。例え大振袖を作って着せたとしても、デフォルト服とイメージが余り変わらなくて面白くなかっただろうとは思います。しかし浴衣に適した和柄の布の持ち合わせが無くて、以前山小屋風チャリティショップで購入した、全幅×3m位の長さがある生地を利用しました。
ダンガリーのようなナチュラルな薄い水色地に、正直ショボい花柄が渋い色合いでプリントされています。多分ビンテージと呼べる程古い布ですが、残念ながら古臭いだけでレトロっぽさはありません。布地の薄さと柄の細かさは、ドール服に適しています。和風ではありませんが、しっとりはんなり感は十分感じられ、加えて織り地も密過ぎず涼しげで、浴衣には合うだろうと思いました。
確かに浴衣に仕立てるのには似合う生地なのですが、…思った通り相当地味で、まるでおばーちゃんの寝巻っぽい! ここは帯や装飾で、若々しさと華やかさを加えなくては思いました。
作っている最中は、帯は絶対鮮やかな赤だろうなと思っていましたが、色々合わせて見て、鮮やかじゃなくても強い色の帯なら合うと実感しました。どちらかと言うと、帯の布の柄や装飾の方が決め手で、返って和柄の帯じゃない方が若々しく見えるようです。どちらにせよ、実際に合わせてみないと今だ分からない事だらけで、意外な組み合わせの映える所が和服の面白さだと改めて思いました。
そしてこんな地味浴衣でも、それ程地味に見えずにしっくり着こなす桂由美ちゃんドールのポテンシャルが、何気にスゴイ。逆に、彼女には和服意外に似合う服装は一体あるんだろうか?とも考えます。
やはり髪はクセが付いちゃって、跳ね上がりが直らない箇所もあります。ファッション・ドールに良くある非現実的な異様に長い髪ではなく、普通のロングヘア―の長さなのは意外でした。しかしこの長さだと、1/6ドールの場合は扇形に広がってしまい勝ちなようです。
髪は元からハーフアップ風ちょんまげでしたが、発見時には経年でゴムは切れていました。その部分だけ、他の髪より長くなっています。この髪型は確かに和装には合いますが、奇妙に盛り上がって(多分私の結わい方のせい)頭の形が変に見えるし、今後は降ろした方が良いかもと思っています。
私は子供の頃、母が姉には人形の洋服を縫って上げていたと言うのが羨ましくて仕方ありませんでした。しかし私が生まれた後は続けざまに弟が生まれた為、三人の子持ちとなり仕事も持ってた母が到底其処まで手が回らなったのは当然だと、子供心にも自分に言い聞かせて来ました。でもその羨ましさが成人しても残っていたからこそ、母にドールの着物を依頼したのですが、結局夢は叶いませんでした。その不満の分、自分で姪達に人形の服をせっせと縫いましたが、やはり自分の子供の頃の憧れを満たすのには至りませんでした。そう言う幼少時の遊び足りなさが残っている事もあり、今もドール遊びを続けているように思います。







