昨年のP太のお誕生日に、いつも通り前もってプレゼントは何が良いか尋ねました。大抵は希望を聞いて服とか靴等を贈りますが、昨年は特に何も要らないと答えが返って来ました。では、和食を御馳走するのはどうか?と提案しました。P太は2019年以来日本へ行っておらず、外食では日本食を味わう機会はほとんどありません。それで、P太はこの提案を喜んで受け入れる事にしました。
しかし、問題は何処で食べるかです。日本食レストランは、今やイギリスの大抵の中規模以上の町に必ず在る程ですが、ロンドン以外で日本人シェフが真っ当な日本料理を提供する飲食店は非常に稀です(他のアジア料理との混合の店は絶対アカン)。しかし、ロンドンへ車で行くのは実質不可能です。平日は高い混雑税が掛かり、週末であっても駐車料金が高く、そもそも駐車場の空きの確保が極めて難しいからです。また、列車の便は我が家からは良いものの、料金は馬鹿高く遅延欠便も非常に多く、結局ロンドンは容易に近付ける場所では全くありません。例外的に、カンタベリーの日本食レストランは純粋和食で確実に美味しいのですが、バレンタインで行ったばかりだし、やはり観光地で駐車料金は概ね高い為、しょっちゅう行ける立地ではありません。
ネットで検索してみると、我が家からそう遠く無い町に、良さげな和食屋があるのを発見しました。シェフには日本人は居ないものの、全員日本人の板前から本格的に修業したとの事。店名も店内の装飾のセンスも、胡散臭い和食屋とは明らかに違い信頼出来そうです。店名は「きんじょ」。このフォントの選択のセンス一つにしても、ニセ和食屋なら日本人には一発で見破れます。Oxted オックステッドと言う町のハイストリートにあり、レストランの直ぐ裏手の無料の共同駐車場が利用出来ます。それで、P太のお誕生日ディナーは其処を予約する事にしました。
二階席に通されました。イギリスの飲食店では、本当に椅子が丁度利用人数分しか用意されておらず、荷物を置くのに困る席に通される場合が多く、当然荷物置き用のバスケット等が用意されている配慮は皆無で、客の多くはバッグを床に直置きするしかないのですが、この店はゆったり余裕のある席を用意してくれたので好感度が上がりました。こんな壁に備え付けのソファは、イギリスの飲食店では割と新しい傾向だと聞いた事があります。
二階の半分は吹き抜けになっていて、一階の客席と調理場を見下ろせます。金・土曜ではない早い時間なのにも関わらず、既に相当賑わっていて、直ぐに満席近くになりました。客席からカウンター越しに調理場が見えるのもイギリスでは新鮮なスタイルで、P太は日本でそう言う飲食店に入る度にテンションが上がります。
ただし、照明がかなり暗いのは気になりました。欧米では、伝統的に明る過ぎる照明を嫌い、関節照明が当たり前です。しかし中には、これ手探りで食べるのかよ…と思える暗過ぎる飲食店も珍しくありません。やはり暗いと目が疲れるし、料理は見た目でも楽しみながら食べたいものです。
飲み物としては、柚子エードと柚子のエルダーフラワー(西洋ニワトコ)のモックテールを選びました。抹茶やカツカレー、モチに続いて、イギリスにYUZUブームが来つつあります。
アルコールを飲んでいないのに、食事と言うよりは居酒屋のような選択をしました。まずは、キノコの炒め物。キノコはシイタケやシメジ、エリンギで、多分オイスター・ソースの利いた甘辛いタレで味付けされています。
次に、脱皮直後の柔らかい甲羅ごと食べられる、ソフトシェル・クラブの天ぷら。
甲羅は全く気になりません。味わいは淡泊なので、少しだけ酸味のある特製ダレが合います。
ここでは出来るだけ家では入手が難しい食材を使った料理や、私が作れない料理を選びたいとも思い、ワギュー・コロッケも注文しました。ワギューとは和牛の事で、イギリスでも日本の美味しい高級牛肉として飼育する農家が増え、知名度が広がりつつあります。今はバーガー・★ングでさえワギュー・バーガーなんてのを売っているそうですが、正直全く信用していません。
が、これはコロッケではなく実はメンチカツでした。肉率がコロッケより高いので名前損していますが、たっぷりの肉汁がじゅわっと溢れ出て非常に美味しかったのは確かです。付け合わせのサツマイモの素揚げも、イギリスでは見掛けないシシトウ付きなのも嬉しい。
刺身の盛り合わせも注文しました。日本らしさを的確に表現した、ワビサビな美しい盛り付けです。これで4千円位するのに魚はほんのちょびっとだけですが、もしイギリスの一般家庭で数種の魚の刺身の盛り合わせを食べるとなると、当然量は多くなるけれど、確かにこれ位の価格は掛かってしまうから仕方ありません。
それに、どれも文句無しに質の良い刺身でした。イギリスの生魚の安全性はと言えば、離脱後もEUの食品基準規制には従っているはずだから、返ってアニキサスの心配は日本より少ないのではと思います。
最後にフクレモノ(御飯物)として、豚丼を注文。これ、日本風プルド・ポークですね。甘辛く煮込んだ豚肉を解し白米に乗せた物で、食べ易くて美味しい!
枝豆や刻みネギ、紅ショウガとの組み合わせも良好。後から、家で真似して作りました。
どれも真正な和食で美味しく、尚且つ新しい工夫も加わり、給仕も申し分なく、P太は大満足で喜んでいました。デザートは無しで、全部で二人分サービス料込みで1万6千円位でした。イギリスの夕食の外食としては平均的だし、品数を考えれば割安な程です。半分は私が食べた訳だから、結局それ程高いプレゼントではありません(笑)。