昨年訪れたエセックス州のほぼ北西端の町Saffron Walden サフロン・ウォルデンは、かつてサフランの産地として栄えた古い市場町だけあって、今も立派な歴史的な建物が沢山残っていました。
その中でも特に独特で目を引き興味深いと思ったのが、外壁の漆喰にレリーフ状の模様を施した建物でした。
教区教会に近いChurch Street 教会通りには、この町では特に一見の価値がある見事な建物が並んでいます。
この町へ来る前に訪れたBartlow バートロウ村の旧郵便局の建物でもこんな外壁模様を見掛け、今までも主にイースト・アングリアで度々見掛けて気になってはいました。
サフロン・ウォルデンの町のHPに寄れば、これは「pargeting パージェティング(pargettingや wall pargetingとも綴られる)」と呼ばれる建築技法で、16世紀に国王ヘンリー八世の命でサリー州の城館Nonsuch Palaceノンサッチ・プレイス(息子のエドワード六世が生まれた場所)を装飾する際にイタリアから輸入された、「stucco スタッコ=化粧漆喰」と言う技法が元になっていると伝えられています。
それ故、16世紀から17世紀掛けてイングランドで広まって行きました。しかし、19世紀末のアーツ&クラフツの懐古主義が持て囃された時代にも、人気が復活しました。
かつて馬車が潜ったアーチの内側の、側面の壁にもパージェティング。
こんな小路に面した僅かな部分(右下)にさえ、ちょっとだけパージェティング。
パージェティングは、石灰の漆喰、またはモルタルが乾かない内に、木型で判を押して作成します。
または、櫛を使っても模様付けするそうです。
しかし、これ程盛り上がっているレリーフだと、もっと深い型か手作業で立体化しているように見えます。
モチーフは幾何学模様の他、植物や鳥、動物が多いらしいのですが、上部の花に群がっているのは鳥?魚??
人物を表現した場合、造形の稚拙さが極まって面白コワイ。芸術家ではなく当時の職人が作成すると、こんな造形になったようです。
…何故か脚…。いや、きっと何か意味は込められているはずです。
イースト・アングリアでも特にサフォーク州とエセックス州に多く見られると言われ、これは明らかにイギリスでは貴重なフォークロアです。イースト・アングリアの古い町を訪問する際は、外壁に是非注目してみて下さい。