2026/08/06

20世紀築のジョージアン様式の館ヒントン・アンプナー 2

 

昨年の今頃夫婦で初めて訪れた、ハンプシャー州のNT(ナショナルトラスト)のお屋敷&庭園「Hinton Ampner ヒントン・アンプナー」で、続いて二階を見学します。

廊下にも、収集品の食器類が所狭しと飾られています。 

ここはラルフ・ダットンの寝室で、彼の一番のお気に入りの風景である、サウスダウンズの田園風景を眺めるのに最適な部屋になっています。

こんな豪華な四柱ベッドなのに、ベッドカバーがイギリスらしい素朴なヘキサゴン・パッチワークなのが微笑ましいと思いました。

豪華屋敷では、つい浴室に注目してしまいます。どんなに物語や映画の中のような御屋敷でも、浴室が旧式で使い辛そうだと現実に戻れるからですが、流石にここは1960年代築なので、十分モダンで快適そうです。特に、浴槽の真上の天窓が素敵。

ダットン卿は独り暮らしだったはずで、他の寝室は客室だったと思われます。 

どの部屋も、それぞれ意匠が凝らしてあります。

そして、あちこちにブルー・ジョン石の装飾品が置かれています。 

石象嵌テーブルの上に、まるでメトロノームのような形のブルー・ジョン石のオブジェが。 

こちらは、貝で出来た立体モザイク画…?  

姿見の枠に東洋風の竹の使われているのが、返って面白いと思いました。  

多くのイギリスの裕福者のカントリー・ハウス同様に、第二次世界大戦中は、ここも寄宿学校として使用されました。市街地から遠く離れているので、疎開の為だったと思われます。 

ダットン卿の美術収集品は、莫大な財力があったからとは言え、庶民には全く理解出来ないレベルのセンスではなく、興味深い物も多く楽しめました。 

ラルフ・ダットンは生涯独身で直接的な後継者が居なかった為、死後この館は彼のコレクションと共にNTに寄贈されました。しかし例え子供が居たとしても、引き継ぐのが必ずしも有難い訳ではないどころか、負担になる事の方が多いだろうし、親の趣味に理解があって収集品の全てを手元に残し続けたとは思えません。返ってこうして今でも大事に展示され沢山の人に鑑賞して貰っている方が、コレクターにとっては本望だったかもと想像します。現在亡くなった父母の遺品が、まるで彼等の生きていた痕跡を全て消し去りたりが為のように、根こそぎ処分されている(しかも母が存命だった頃から)自分の実家を考えると、尚更そう考えます。




2026/08/05

エナメル塗装+アクア系ラインストーンのブローチ

 

六月の記録的な猛暑の日に訪れたArdingly アーディングリーのアンティーク・フェア最大の屋内会場に、中古アクセサリーを山積みして一個どれでも1ポンドで売っているストールがありました。その屋内会場では、1ポンド均一の中古アクセサリーを売るストールが毎回幾つか出店しますが、大抵はビンテージではない単なる現代の中古品も多く混じり、石が欠けているorピンが無くなっている等の難有がほとんどで、またネックレスやペンダントが酷くこんがらがっている為、漁るのが一苦労です。しかし其処は、ほとんどがビンテージで魅力的なデザインが多く、更に状態も概ね悪くなく、ここは絶対に見逃してなるものか~と思いながら漁りました。 


しかし選んでいる最中、余りの暑さに汗がポタポタと滴り落ちて来て…、やっべーなと即座に汗を拭き水分を補給しました。私の場合は、汗って灼熱の日差しの下を歩いている最中よりも、返って一休みして立ち止まった時にドドッと溢れ出て来る気がします。日差しのない屋内会場でさえ、通気がない分相当暑かったのは確かです。風は結構強かったので、結局この猛暑の日に一番快適だったのは、屋外の木陰の売り場だったかも知れません。

色々悩んで絞ってさえ、最終的にそのストールで合計八つもビンテージ・ジュエリーを買いました。その時真っ先に選んだ一つが、このブローチです。

爪留めではないし、確か同じ型の台座の色違いを既に持っていたか、見掛けた事があるように思いました。つまり大して高級ではない、大量に出回っていた廉価品だったのかも知れません。しかし、そんなうだるような暑い日には、見るだけで気温が下がるようなこのブローチの涼し気な色合いが、殊更印象的で魅力的に映りました。

ラインストーンは青味掛かった不思議な色の上にAB加工で、氷のように輝きます。 

ラインストーンだけでなく、葉型の台座にも青系の塗装が施されています。ラインストーンとエナメル塗装の組み合わせって、充実して見えるので私は好きです。地金がマットに近い銀色なのも、涼し気に見えます。 

近付き過ぎて撮影してみたら、ブローチの上に不思議な編み目模様が映り込んで…、遂にパラレル・ワールドでも覗き込んでしまったか?と一瞬思いましたが、 単なる近くに置いた扇風機のネット・カバーでした(笑)。

天地は多分縦長で、リボンのようなループが上、茎のような部分が下になると思っています。試しに横長にしてみると、やはり縦長の方が素敵に見えます。しかし、着けたい場所に好きなように着けて良いのがブローチです。


 

 

2026/08/04

20世紀築のジョージアン様式の館ヒントン・アンプナー 1



昨年の今頃、ハンプシャー州のNT(ナショナルトラスト)のお屋敷&庭園「Hinton Ampner ヒントン・アンプナー」へ、夫婦で初めて出掛けました。ここの手前の道路は今まで何回も通過し(主にNTの別のお屋敷&庭園「Mottisfornt Abbey モティスフォント・アビー」へ行く途中)、更にNT会員ならいつでも来れた訳ですが、例に寄って豪華絢爛屋敷に余り惹かれなかった為に、今まで訪れたようと思った事はありませんでした。

考えていたよりもずっと人気の場所で、また夏休み中だった事もあり混んでいて、予備の更に予備みたいな入り口から相当離れた駐車場に通されました。ここはサウスダウンズ国立公園の中で、風光明媚な丘陵地帯の中に在り、敷地内に先史時代の遺跡が点在し、青銅器時代の古墳も幾つか発見されています。

この館の立地自体の歴史も相当古く、11世紀の土地台帳デュームズデイ・ブックにも記載され、ノルマン時代には修道院に属する土地だったのではと言われています。16世紀のチューダー時代には荘園館が建てられ、19世紀にDutton family ダットン家の所有となりました。その19世紀には、ここで怪奇現象が目撃されたと記録が残っていますが、イギリスの古い屋敷なら、そりゃ幽霊話の残っていない方が珍しいのではとさえ思います。


1930年代に、最後の当主Ralph Dutton ラルフ・ダットン卿に寄って新ジョージアン様式に改装されました。1930年代と言えばアール・デコ様式が持て囃された時代でしたが、一方ジョージアン様式は18世紀後半から19世紀中頃の流行。どうもダットン卿は、古典美術品の収集と18世紀的な内装を愛する懐古主義者だったようです。

ダットン卿は生涯独身で、収集では特にイタリア絵画に熱心でした。現在の日本の独身男性であれば、まずアニメやゲーム、アイドル等のヲタクに走りそうな物ですが、昔の西洋の上流階級の独身男にとっては、兎角美術品収集が推し活の筆頭だったようです(…比較する事自体間違っているか)。いや、返って収集に夢中になり過ぎた為、結婚に興味を持てなかったのかも知れません。

何故このギロチン夫婦の銅像が飾ってあるのかと言えば、ダットン卿がフランス好きだったからのようです。彼の寝室には、お気に入りのベルサイユ宮殿の鳥観図が飾られています。返って、像が乗っている大理石のテーブルが見事で目を引きます。

こちらのテーブルは脚部分まで装飾が凝っていて、センスは確かだったようだと感じました。

また、ダットン卿は「貴石好き」だったようです。

館内では、見事な石象嵌のテーブルやチェスト、キャビネットを見る事が出来ます。 

こちらの石象嵌のサイドテーブルは、ラピスラズリの鮮やかな青は、特に目立ちます。 


ブルー・ジョン石のゴブレットは、今では滅多に採掘されなくなった、貴重な大きさの石塊から出来ています。左は、スタッフさんが内側から懐中電灯で照らしてくれた所。 

館は収集品と共に、ダットン卿の死後1985年にNTに託されたそうですが、もしかしたら1980年代でもこんな内装で暮らしていたのか…?  だとしたら、本当に映画や物語の世界で、筋金入りの懐古主義者です。

インテリアのハイライトの一つとも言えるのが、この食堂大広間。 

招待客を必ず通し数時間を過ごさせるこの部屋は、特に調度や内装に力を入れたはずです。 

見事なイタリア・ルネッサンス風の天井画は、Elizabeth Biddulphと言う王室油彩画協会員のアイルランド人女性画家に寄って修復されたそうです。完璧な腕前なのに、彼女についてはほとんど分かっていないとか。

この館は、実は1960年に火災に遭っています。三年後に元通りに復興されましたが、貴重な無二の収集品や夥しい数の蔵書は消失したらそれまでなので、使用人総出で懸命に運び出したそうです。

しかし今考えると、従業員の安全性を無視して火災の中で運搬作業をさせるなど、家主としては非情で失格…。 

廊下にも、ラピスラズリの鮮やかさが目を引く石象嵌のテーブルが。 

ここは厨房脇のパントリーで、この敷地で発掘された興味深い考古学品が展示されています。

この脇に、ビンテージの可愛いエプロンが掛けてありました。この館で唯一、一般的な1960年らしさが感じられるアイテムでした。