2026/03/07

オクステッドの和食屋でお誕生日ディナー

昨年のP太のお誕生日に、いつも通り前もってプレゼントは何が良いか尋ねました。大抵は希望を聞いて服とか靴等を贈りますが、昨年は特に何も要らないと答えが返って来ました。では、和食を御馳走するのはどうか?と提案しました。P太は2019年以来日本へ行っておらず、外食では日本食を味わう機会はほとんどありません。それで、P太はこの提案を喜んで受け入れる事にしました。


しかし、問題は何処で食べるかです。日本食レストランは、今やイギリスの大抵の中規模以上の町に必ず在る程ですが、ロンドン以外で日本人シェフが真っ当な日本料理を提供する飲食店は非常に稀です(他のアジア料理との混合の店は絶対アカン)。しかし、ロンドンへ車で行くのは実質不可能です。平日は高い混雑税が掛かり、週末であっても駐車料金が高く、そもそも駐車場の空きの確保が極めて難しいからです。また、列車の便は我が家からは良いものの、料金は馬鹿高く遅延欠便も非常に多く、結局ロンドンは容易に近付ける場所では全くありません。例外的に、カンタベリーの日本食レストランは純粋和食で確実に美味しいのですが、バレンタインで行ったばかりだし、やはり観光地で駐車料金は概ね高い為、しょっちゅう行ける立地ではありません。

ネットで検索してみると、我が家からそう遠く無い町に、良さげな和食屋があるのを発見しました。シェフには日本人は居ないものの、全員日本人の板前から本格的に修業したとの事。店名も店内の装飾のセンスも、胡散臭い和食屋とは明らかに違い信頼出来そうです。店名は「きんじょ」。このフォントの選択のセンス一つにしても、ニセ和食屋なら日本人には一発で見破れます。Oxted オックステッドと言う町のハイストリートにあり、レストランの直ぐ裏手の無料の共同駐車場が利用出来ます。それで、P太のお誕生日ディナーは其処を予約する事にしました。

二階席に通されました。イギリスの飲食店では、本当に椅子が丁度利用人数分しか用意されておらず、荷物を置くのに困る席に通される場合が多く、当然荷物置き用のバスケット等が用意されている配慮は皆無で、客の多くはバッグを床に直置きするしかないのですが、この店はゆったり余裕のある席を用意してくれたので好感度が上がりました。こんな壁に備え付けのソファは、イギリスの飲食店では割と新しい傾向だと聞いた事があります。

二階の半分は吹き抜けになっていて、一階の客席と調理場を見下ろせます。金・土曜ではない早い時間なのにも関わらず、既に相当賑わっていて、直ぐに満席近くになりました。客席からカウンター越しに調理場が見えるのもイギリスでは新鮮なスタイルで、P太は日本でそう言う飲食店に入る度にテンションが上がります。

ただし、照明がかなり暗いのは気になりました。欧米では、伝統的に明る過ぎる照明を嫌い、関節照明が当たり前です。しかし中には、これ手探りで食べるのかよ…と思える暗過ぎる飲食店も珍しくありません。やはり暗いと目が疲れるし、料理は見た目でも楽しみながら食べたいものです。

飲み物としては、柚子エードと柚子のエルダーフラワー(西洋ニワトコ)のモックテールを選びました。抹茶やカツカレー、モチに続いて、イギリスにYUZUブームが来つつあります。 

アルコールを飲んでいないのに、食事と言うよりは居酒屋のような選択をしました。まずは、キノコの炒め物。キノコはシイタケやシメジ、エリンギで、多分オイスター・ソースの利いた甘辛いタレで味付けされています。

次に、脱皮直後の柔らかい甲羅ごと食べられる、ソフトシェル・クラブの天ぷら。

甲羅は全く気になりません。味わいは淡泊なので、少しだけ酸味のある特製ダレが合います。

ここでは出来るだけ家では入手が難しい食材を使った料理や、私が作れない料理を選びたいとも思い、ワギュー・コロッケも注文しました。ワギューとは和牛の事で、イギリスでも日本の美味しい高級牛肉として飼育する農家が増え、知名度が広がりつつあります。今はバーガー・★ングでさえワギュー・バーガーなんてのを売っているそうですが、正直全く信用していません。

が、これはコロッケではなく実はメンチカツでした。肉率がコロッケより高いので名前損していますが、たっぷりの肉汁がじゅわっと溢れ出て非常に美味しかったのは確かです。付け合わせのサツマイモの素揚げも、イギリスでは見掛けないシシトウ付きなのも嬉しい。

刺身の盛り合わせも注文しました。日本らしさを的確に表現した、ワビサビな美しい盛り付けです。これで4千円位するのに魚はほんのちょびっとだけですが、もしイギリスの一般家庭で数種の魚の刺身の盛り合わせを食べるとなると、当然量は多くなるけれど、確かにこれ位の価格は掛かってしまうから仕方ありません。

それに、どれも文句無しに質の良い刺身でした。イギリスの生魚の安全性はと言えば、離脱後もEUの食品基準規制には従っているはずだから、返ってアニキサスの心配は日本より少ないのではと思います。

最後にフクレモノ(御飯物)として、豚丼を注文。これ、日本風プルド・ポークですね。甘辛く煮込んだ豚肉を解し白米に乗せた物で、食べ易くて美味しい!


 枝豆や刻みネギ、紅ショウガとの組み合わせも良好。後から、家で真似して作りました。

どれも真正な和食で美味しく、尚且つ新しい工夫も加わり、給仕も申し分なく、P太は大満足で喜んでいました。デザートは無しで、全部で二人分サービス料込みで1万6千円位でした。イギリスの夕食の外食としては平均的だし、品数を考えれば割安な程です。半分は私が食べた訳だから、結局それ程高いプレゼントではありません()




2026/03/06

アラン川沿いのサウス・ストークのノルマン教会

 

昨年のP太のお誕生日に出掛けた城下町Arundel アランデルで、お城の裏側の湖を訪れた後は、その更に奥に在る集落の11世紀築の教会まで行ってみる事にしました、

複雑に蛇行するRiver Arun アラン川にほぼ沿って北上する、Mill Roadと言う細い(しかし起伏は結構多い)道路が一本だけが通じる、South Stoke サウス・ストークと言う行き止まりの集落です。教会があるからには昔は村だったのでしょうが、今はアランデル町の一部となり、教会を囲む農家が数軒立つのみで、店舗もパブの一軒もありません。

教会は、まず少し変わった形式の搭が目を引きます。どちらかと言うと、中欧の中世の城の塔のようです。また、教会の大きさに対して高さは相当あると思いました。

正式名をSt Leonard's Churchと言い、56世紀のフランク王国の修道士であった、囚人と妊婦と農民と馬の守護聖人を祀っています。ここは昔から農村地帯だったであろうから、農民&馬の守護聖人と言うのは合点が行きます。

集落の規模を考えると教会は大き目で、昔はもっと人口の高い場所だったのが想像出来ます。

内部は、特徴らしき物が何も見当たらない程至って簡素でした。会衆席の数は、例え集落全員が参列しても埋まらなさそう。

唯一、天井近くの梁に描かれた文様は興味を引きました。


千年近い間に何回も改装を繰り返して来た為、ノルマン様式らしい特色も残っていません。分厚い壁と出来る限り小さく取られた窓のみが、起源の古さを物語っています。

毎週日曜日ではありませんが、定期的に礼拝は未だ行われているそうです。この集落には、かつての農家の納屋を改装した結婚式場もあるようなので、意外と教会の需要は高いのかも。

実はここから1㎞も離れていないNorth Stoke ノース・ストークと言う集落に、もう一つ興味深い中世の小さな教会が在るのですが、それ程近い場所なのにも関わらず、蛇行するアラン川の氾濫原に遮られて直通の道路は一つも通っていません。遊歩道は通じていて、徒歩でなら行けるようです。

もし日本だったら平家の落ち武者伝説でも残っていそうな、まるで隠れ里のような場所です。アランデルと言う人気の観光地からそう遠くない場所に、こんな現世から隔離されたような集落が未だ存在している事が、返って教会以上に印象的でした。




2026/03/05

アランデルの湖

 

御伽噺のようなアランデル城の立つ丘の影の北側に、Swanbourne Lake スワンボーン湖と言う湖があります。と言うのは以前から地図で眺めて知ってはいましたが、実際に訪れた事は未だありませんでした。昨年の三月のP太のお誕生日にArundel アランデルの町を歩いた後は、その湖へ行ってみる事にしました。

お城の正面入り口前のMill Roadと言う道路を、River Arun アラン川沿いに北上します。今回は街歩きには有料駐車場を利用しましたが、何だこの通り沿いなら、街までは少し歩くけれど、無料で駐車出来るじゃん…と思いました。

湖の畔には、優雅な石造りの建物が立っています。元は城付属のボート・ハウスだったのかも知れませんが、今はSwanbourne Lodge Tearoomと言う人気のティー・ルームになっています。 

湖は南東から北西に長く伸び、北の高台はArundel Parkと言う城の敷地である広大な公園になっています。 

湖は、勿論水鳥達の格好の生息地です。

夏期はボート乗りも楽しめるようで、湖の中央にボートが積み上げられていますが、この時楽しんでいたのはカモメのみ。 

湖の名前の通り、白鳥も見掛けました。後はキンクロハジロとかクイナとか、イギリスでは割と何処でも良く見掛ける水鳥ばかりでした。 

水の透明度は高く綺麗なようですが、魚は全く見当たりませんでした。水底にチョーク(白亜)の塊が沢山見えるので、多分水質は石灰が溶け込むアルカリ性なのだと思います。 

そもそもこの湖自体が、城を建設する為の石材(チョーク質に埋まるフリント石)を採掘する為に彫られた窪地に出来たのかも知れません。実際湖の周囲は、切り崩したようなチョークの崖になっています。

このティー・ルームでは、アフタヌーン・ティーが一人16.75ポンド(注:昨年の価格)で食べられるそうです。イギリスとしては、かなりの安さ。実は本場イギリスでのヌン活は、姉夫婦が渡英した際の一回のみしかありません。

大抵要予約制なのと、P太が「たかがサンドウィッチとケーキに一人20ポンド以上とか在り得ない」と興味がない処か敵視しているからですが、単なるサンドウィッチじゃねーっつーの(多分彼は本物を見た事すら無い)。耳を切り落とさない、正にハムとチーズをパンに挟んだだけの秒単位で出来るイギリスの一般的なサンドウィッチと、アフタヌーン・ティーのサンドウィッチは全く別物です。

未だ春浅い季節な上、丘の影の日当たりの悪い北側なので、晴れてはいても水辺は寒々しく見えましたが、返って夏の涼しげな心地良さは抜群な場所なのではと想像します。ただし、アランデルは人気の観光地だから、夏には道路脇の無料の駐車スペースは、すぐに埋まってしまうかも知れません。