2026/07/10

サクソン時代の城壁の町ウェアハム

昨年の今頃に訪れた、ドーセット州のドラマティックな古城跡Corfe Castle コーフ城に到着する手前で、「この先サクソン時代の城壁の町Wareham ウェアハム」と言う、非常に惹かれる道路標識を目撃しました。イギリスに残る中世の城壁(市外壁)はノルマン時代以降の物で、中には古代ローマ時代の城壁も残っていますが、その中間のアングロ・サクソン時代の城壁なんて今まで一度も聞いた事がありませんでした。俄然好奇心に逆らえず、コーフ城と城下の村を見学した後は、そのウェアハムを訪れてみる事にしました。 

今まで聞いた事はなかったものの、ここも観光に人気の町らしく、飲食店や宿泊施設が多く、夕方近く(午後4時位)なっても何組かの観光客が歩いているのを見掛けました。

場所は、コーフ・キャッスルの北西78㎞で、内陸に入り組んだ湾のPoole Harbour プール港の最奥に面しています。しかし町の中心は湾から離れている為、海辺の町と言う雰囲気はありません。 

この町を印象付けるのは海よりも川で、河口に近いRiver Frome フロム川がゆったりと流れ、心地良い雰囲気。

この教会は、Priory Church of Lady St Maryと言う名前が付いているからには、ここにはかつてpriory=小修道院が存在し、その付属教会だったのだと思います。内部には入っていませんが、サクソン時代に起源を持ち、ウェセックス及びサクソン・イングランド王家と関わり深かった教会のようです。8~9世紀のウェセックス国ベオルトリッチの埋葬地、またコーフ城で暗殺されたエドワード殉教王も一時埋葬されていたと言われています。

教会の隣には、その修道院の名残りの建物を利用したらしい、その名も「The Priory」のホテルがあります。 

その側には、こんな茅葺屋根の田舎家も。 

町の中心部は、古い市場町の面影を良く残しています。

時計台のある一際目を引く建物は、町の博物館。

通りにバンティング(ガーランド)が張り巡らされいるのは、やはり観光シーズンの夏だからでしょうか。 

しかし、行けども行けども城壁らしき物は見当たらず、それを示す道案内さえ全く見掛けませんでした。

城壁が今の町の境界線と重なるとは限らないので、もしかしてこの中心部に近い場所の、古そうな壁かなあ?と思ったり。今は、単なるスーパーマーケットの駐車場の塀なんですけど。 

結局見付けられず、家に帰ってから調べた事には、この町に西側から車で入る時に見た、せいぜい高さ×幅4~5m程度の土塁が実はそれだったようです。wallと言う単語が、石やレンガ造りの壁だけでなく、土手の事も差すとは。土塁は、鉄器時代の丘砦遺跡であればrampart、石器時代の環状列石であればhenge(※溝とセット)と呼ばれます。

その土塁の城壁…と言うか防御用の土手は、9世紀にウェセックス王国のアルフレッド大王に寄って、ヴァイキングからの襲撃に備えて築かれたと言われています。土塁は今も町の三方(西、北、東)を囲み、南側のみはフロム川が天然の防衛となる為に元々築かれなかったようです。北側の土塁は高さ15mもあり、特に町の北東端のBowling Greenと呼ばれる緑地が、今もはっきりと遺構を観察するのに最適なのだそうです。

また町の北端には、その土塁の上に建てられたSt Martin's-on-The-Wallsと言うサクソン教会があり、中世の壁画と「アラビアのローレンス」ことT.E.ローレンスのエフィジー(※ただし墓所ではない)が安置されているそうです。 

ーーーと言う訳で、改めてこの町をちゃんと訪れなくては~と思いました。





2026/07/09

フンメルの「小さなハイカー」フィギュリン

 

今年の自分の誕生日に初めて訪れたブライトンの競馬場のフリーマーケットでは、このフィギュリンも買いました。ドイツの画家マリーア・イノツェンツィア・フンメルが描いた子供達を立体化した陶器人形で、コレクタブルズとして人気の非常に高い旧西ドイツのゲーベル社製のフィギュリンです。 

価格は一体3ポンドで、人気があるからとフリマでは高めのお値段でしたが、二体なら5ポンドにして上げると言われ、二体とも買いました。アンティーク・モールやフェアと比べれば、一体15ポンド以下はお値打ちと言えます。

高さは、台も含めて10㎝位。このデザインは今まで何度か見掛けた事はあり、フンメルのフィギュリンとしては代表的なタイプだと思います。


服装は、サスペンダー付き半ズボンにローデンコート(チロル地方特産の分厚いフェルト製のジャケット)のような物を着て、いかにもドイツ語圏のアルプス地方の民族衣装みたいな恰好ですが、頭には「ニルスの不思議な旅」のニルスのような赤いキャップを被っています。 

台の側面にレベルが残っていまして、題名は「Little Hiker 小さなハイカー」。または日本では、「ハイキングする少年」とも呼ばれます。しかしドイツ語表記は「Hans im Glück 幸せなハンス」で、逆わらしべ長者みたいなグリム童話の物語の登主人公を意味しているようです。正確に英訳しなかったのは、その物語が英語圏で知られていないせいかも知れません。制作年は1972~1979年で、相場価格は状態にも寄りますが、10~40ポンドのようです。

杖付いて一生懸命歩いて来た子供が、一息付いて空を見上げているところか、それともお父さんかおじいちゃんの登山靴を履いてみて(明らかに靴がダブダブ)、ハイカーを気取っている様子なのか。どちらにせよ、子供の表情や仕草を良くとらえているところが、このシリーズの人気の秘訣のようです。また手彩色なので、一つ一つ顔が違い、個体の差の結構大きい所も、返ってコレクター心をくすぐる魅力なのかも。

私はこのフィギュリンのファンでもコレクターではないのですが、日本の義妹が好きだから買いました。以前上げたフンメルの女の子のフィギュリンも、何度も落として壊してでも(航空便で届いた時は無傷だったのだが…)飾る程気に入っているそうです。しかし義妹に実際に手渡すのは、ずっと先になるだろうとその時は思っていました。…が、その直後に緊急帰国する事になり、結局すぐに渡す事になりました。



2026/07/08

イギリスで一番美しい村コーフ・キャッスル

昨年の七月に、イングランド最古の中世の城の一つCorfe Castle コーフ城を、十数年ぶりにリベンジ訪問した後は、御城下である村を歩きます。

村の名前自体も城に則りCorfe Castle コーフ・キャッスル(カッスル)と言い、度々イギリスで最も美しい村の一つに数えられます。

城の立つ一際高い丘から、尾根伝いに石造りの古風な建物が並んでいるのですから、まるで御伽噺の世界のようで確かに絵になります。「町」じゃないけど、城の本丸が村全体を見下ろし、正に城下町と言った景観。


コーフ城がかつて王城だったのと同時に、村自体も王家直轄の所領でした。 

こんな石造りの家並みはイングランドでは少数派で貴重で、コッツウォルズ等の石材が手軽に手に入る特定の地域でしか見られません。

それ故に石造りの家並みの残る歴史的な市町村は、大抵人気の観光地となります。ここの建材に使用されている石は、地元パーベック半島産の石灰岩だそうです。

石灰岩の中でも化石含有率の高い上質な物が大理石だそうで、ここでは実際に大理石も産出され、カンタベリーソールズベリー大聖堂ウェストミンスター寺院等に使用されています。

屋根まで石葺き。粘板岩葺きの屋根ならコーンウォールやデヴォン等では見掛けますが、ここのは屋根まで薄く切断したパーベック石かも。

イギリスの観光地の村では、時折model village モデル・ビレッジと呼ばれる、東武ワールドスクエアの小規模版のミニチュア建築物テーマ・パークを見掛け、この村にも在ります。多くは地元近辺の家並みを再現していて、建材も出来るだけ実物と同じ物を利用しています。

 

時間が無くて見学はしていませんが、この村のモデル・ビレッジには、廃墟になる前のコーフ城のミニチュアが復元されているそうです。

土産物屋にも入ってみました。ドーセット・スパイスと言う、イギリスでは珍しくその土地ならではの製品を売っていました。こちらは、イギリス人のソウル・フード、チップス(揚げ芋)に振り掛ける為の調味料。

ドーセットには、ジュラシック海岸と呼ばれる化石の宝庫が在る為、其処で発掘される恐竜をイメージして、ワイルドなスパイスを調合したようです。決して、スパイスの原料がドーセット産なのではありません。味的にも特に珍しくもなく惹かれず、結局買うのには至りませんでした。

村の中心に立つ、教区教会にも入ってみました。若くしてこの城で暗殺されたと伝えられるサクソン時代のイングランド国王の名に因み、St. Edward, King & Martyrと名付けられています。

塔のガーゴイルは、雨が降ったらダイナミックにゲロを吐く仕組みです。

こちらの石像も、崩壊が進んでキモ怖さ倍増。 

しかし名前や外観からは意外な程、内部には興味を引く物は見当たりませんでした。

村から眺めるコーフ城の迫力ある姿は、やはり格別です。

暑い日だったので、最後に村でアイスクリームを買って食べました。しかしP太が例に寄って財布もスマホも車内に置き忘れた為、私が支払う羽目に。パーベック半島産の牛乳を使用した超地元産のアイスで、流石に美味! 同じ位の値段でも、NTの売店のアイスより遥かに嬉しいと思いました。 

帰りも、同じ遊歩道を通って車まで戻りました。心配した車上荒らしには遭いませんでしたが、そう言うウッカリで気を揉まされるだけでも嫌だから、私は数分間車を停めて撮影する時でも、高速道路のサービスでトイレに立ち寄る時も、必ずバッグは持ち歩くようにしています。