2026/08/26

サクステッドのゴシック教区教会 1

二年前に訪れた古い市場町Thaxted サクステッドを、昨年再び訪れようと思ったのは、天気の良い日に改めて素敵な街並みを眺めたいと思ったのと同時に、前回は到着した時間が遅過ぎて閉まっていた為に出来なかった、教区教会の内部を見学したいと思ったからです。

この教会には、「St John the Baptist with Our Lady and St Laurence, Thaxted Parish Church 洗礼者聖ヨハネと聖母及び聖ラウレンティウスのサクステッド教区教会」と言う長ったらしい正式名が付いています。が、一般的には単にサクステッド教会と呼ばれるようです。

現在の町の規模にしては大きく立派と思いきや、実際にエセックス州で最大級の教区教会だとか。 

南側にもポーチが張り出していますが、現在の一般的な入り口は北側に在ります。日本の門の脇戸や潜り戸のような、普段は右下の小さな扉で出入りする仕組みになっています。

そして潜り戸同様に低いドアなので(私には問題ナシ)、こんな注意書きが貼ってありました。天使なのに、じーさんに描かれている所が味。

サクステッド教会は、13世紀から15世紀に掛けて建設され、典型的な「Perpendicular Gothic 垂直ゴシック様式」と言われています。この様式は、14世紀後半から16世紀にかけて主にイングランドで発展したゴシック建築の最終段階のスタイルです。 

その名の通り、直線的で強調された垂直の線、巨大なステンド・グラス窓、そして「扇形ヴォールト」と呼ばれる精巧な天井装飾が特徴です。代表例は、私がイギリスで最も美しいゴシック建築と信じるケンブリッジのキングス・カレッジ礼拝堂や、グロスター大聖堂の回廊

この様式は、ペスト(黒死病)の大流行後に熟練した石工が減少したことから、装飾を簡素化しつつも壮大に見せるための合理的な工法として生まれました。後にイギリスの教会建築の標準的な様式として、広く普及しました。…とまあ、グーグルAI先生の回答をほぼ丸写し()


イギリスを旅行し始めた頃、石造りの教会であっても、天井だけは木製なのに少し驚きました。それまで旅行し慣れていた中欧では、そんな教会建築は見た事がなかったからです。石製の天井を支えるだけの建築工学の技術がイギリスに無かったせいではないかと長らく思っていましたが、その通りだそうです。

しかし木製天井にも、ならではの興味深さがあります。ここの教会の身廊の天井には、眼を凝らすとレリーフの付いているのが分かります。

この窓際の天井部分には、実は太陽のような模様が描かれています。  

良く見ると、所々に中世の壁画らしき物もうっすらと残っています。  

祭壇脇の不思議な壁の穴は、螺旋階段に繋がっています。階段への入り口だとしても、何故こんな中途半端な行き辛い開け方…。この部分に階段の在る事自体が珍しく、もしかして隠し階段?

給仕コーナーの脇には、何気なく素敵なトールペイントのアンティークのキャビネットが。イギリスでは珍しい、重厚なフォークロアっぷりです。

余り古い物ではなさそうですが、カラフルに彩色された金属製の花々のモチーフが愛らしい、宙吊り燭台?。元々は、こう言う吊り下げ燭台をシャンデリアと呼んだそうです。

この教会で印象的だったのが、北側のステンド・グラス。東、西、南側は多分19世紀のヴィクトリア時代の制作ですが、北側は16世紀のステンド・グラスを再利用しているそうです。

 

この教会は今まで数度巨大暴風雨の被害に遭い、その度にステンド・グラスも大きく破損したようです。

破片を根気良く広い集めて繋ぎ合わせる作業は、ステンド・グラスを新たに制作するのと大差無い程大変であっただろうと想像します。 

これは落書きではなく、氏名と生没年が記してあり、ここの墓地に埋葬、または散灰された故人の、言わば墓標代わりの記念碑のようです。ガラスに薄っすらと色の付いているのが、儚な気で綺麗。

外観からの期待通り、内部も見応えの十分な、訪れる価値のある教会でした。裕福だった地域の大きな教区教会って、長い年月の間に大きくどんどん豪華に(当時としては流行最先端の様式に)改装され、オリジナルに近い部分の余り残っていない事も多いのですが、ここは度々暴風雨で破壊され修復されたのにも関わらず、中世の装飾が多く大切に残されているのが、私にとっては殊更興味深く楽しめた決め手です。




2026/08/25

アクア&クリア・ラインストーンのスプレイ型ブローチ

 

六月のArdingly アーディングリーのアンティーク・フェアで、次に買ったのはこのビンテージ・ブローチでした。今まで何度も見掛け手に入れて来たスプレイ型ですが、これはアクアマリン色とクリアにはっきり分けたコントラストが目を引きます。この配色と配置には、妙に惹かれました。 

特に、弓なりに沿って平行に三列に並んだクリアのラインストーンの部分が印象的で、流れ星や噴水のようにも見えます。

円型のワイヤーの上にほぼ整列したアクア色のラインストーンも、スプレイ型としては異例の配置です。

言ってしまえば、1950年代から60年代に掛けて流行した、スペース・エイジやアトミック・エイジと呼ばれるスタイルっぽいと思いました。確かに、製造年代は同じ頃のはずです。しかし、そんなスタイルの家具なら多く出回っていたようですが、はっきりとそれを意識させるジュエリーを見るのは初めてかも知れません。


少なくとも、手に入れるのは初めてかも。多分見掛けたとしても、こんなラインストーンが煌めくようなデザインじゃない限り、気に留めず今まで見落としていた可能性はあります。在り来たりなスプレイ型ながら、身に着ける抽象画のような遊び心と若々しさが感じられるブローチです。

 

 


2026/08/24

風車の丘の町サクステッド 2

 

 

二年前の八月に、全くの気まぐれで唐突にエセックス州のThaxted サクステッドと言う古い市場町を訪れ、天気が悪い日だったのにも関わらず、興味深い建築物や街並みの良さに魅了されました。それで昨年の八月の快晴の日に、再び訪れて見る事にしました。

前回も今回も町の無料駐車場に車を停めましたが、その脇にあるチャリティショップは開いていた事がありません。外に置かれて雨晒しにされているのは、商品なのか、それとも寄付品と称して打ち捨てられたゴミなのか…? 

やはりイギリスの風景は、さんさんと陽の光が当たってこそ絵になります。 

町の中心に在る15世紀築の白い漆喰壁のギルドホールも、青空に映えて見えます。上階へ行く程床面積の広い建物なのが、インパクト強し。ドイツなんかだと、昔は一階の床面積で納める税金の額が決まったらしく、出来るだけ安く抑える為に時折こう言う建築物が残っています。

そしてこの日は実際に一階のピロティ部分で、出店数は4,5軒なものの骨董市が開催されていました。

更にこの日は、ギルドホールの内部が無料公開されていました。八月末の公休月曜日のある週末な上に快晴で、夏休み最後の絶好の観光日和だったからだと思います。

興味深い建築物の様子が観察出来るだけでなく、町の歴史の博物館にもなっています。

今では産業が跡形もなく残っていませんが、実はサクステッドは中世にはカトラリー製造の英国の中心地だったそうです。イギリスの料理自体は伝統的にアレですけど、何故かカトラリーには非常に拘る文化で、肉料理用と魚料理用をわざわざ分ける等、やたら種類だけは増やして複雑化させていました。

また、イースト・アングリアだけに羊毛産業も盛んで、毛織物もこの町の重要な産業であったようです。このギルドホールは、それら職人や商人達の協会や商会所でした。 

この部屋のかつて暖炉だった部分には、このギルドホールをミニチュア化したドール・ハウスが飾られています。 

建物を再現するだけでも大変なのに、内装も隅々まで拘って作られています。


左から2,3番目の人物二人がやけにリアルに作られている、…と思ったら、他の来館者がガラスに写り込んでいるだけでした~。偶然、丁度縮小率がどんぴしゃりで…。 

この町に住んでいた事のある作曲家のホルストについてや、地元で発掘された考古学品等も展示されています。サクステッドは中世に繁栄しただけでなく、元々古代ローマ時代の道上に発展した居住区が元になっていて、ここではそれ以前の新石器時代や青銅器時代の痕跡も発見されています。 

このドアの形、非常に歪んで全く長方形でもなければ平行四辺形でもないのが、写真でも分かりますか?

アンティーク&コレクタブルズとして人気の高い、ムーアクラフトの絵皿も。

ギルドホール内部の見学を終え、この並びの一軒で料理用リンゴを無料で配っていたので、一袋頂いて来ました。

一年前に夕食を食べて美味しかった、老舗旅籠兼パブの「The Swan 白鳥亭」の昼間の姿。

教区教会脇の独特なアルムズハウスは、生憎この時間は逆光になってしまいました。中央に見える風車には、唯一通じている遊歩道が結構長いので、今回は行きませんでした。 


パージェティング建築は、やはり多く見掛けます。右隣の水色の壁もパージェティングです。


窓枠の下に、ちょこんとブタさんのレリーフ。もしかしてこの家がかつて肉屋だったからとか、それとも単に豚は富の象徴だからなのか。

風見鶏ならぬ風見猫の乗った家。猫がシルエットだけの風見なら市販されていますが、これは御手製のようで良い味が出ています。

再びギルドホールの前に戻って来ると…、ややっ、この紅白の衣装の人達は、モーリス・ダンサーズではないか。

実はサクステッドは、伝統的にモーリス・ダンスでも有名な町なのだそうです。中々ダンス自体は始まらず、名残惜しくこの町を去りました。

…が、車で再びこの前を通る時に、やっとダンスが始まっていました。いつも思うのですが、モーリス・ダンスの女性の衣装は素敵。

左端の男性、めっちゃ高く垂直飛びしています!


ここの教区教会の墓地ではこんな墓石も見掛け、この墓に眠る主はモーリス・ダンスに捧げる人生だったんだな…としみじみ思いました。