昨年の早春のお出掛けで、Worthing ワージングの巨大チャリティショップを訪れた後は、もう一つの海辺の町Shoreham-by-Sea ショアハム・バイ・シーの北西端の教会を見学しました。
ショアハムの中心部からかなり離れた町外れにポツンと立つ、一見何の変哲もない人知れずと言った教会ですが、実はノルマン様式の特徴を良く残した、歴史的に中々興味深い教会なのです。
正式名を、St Nicolas Church 聖ニコラス教会と言います。建物はノルマン様式ですが、創建は9世紀のアングロ・サクソン時代と言われ、その前の5世紀には既に何らかの宗教施設が存在していた立地と考えられています。
元々ショアハムは、初代サセックス(=南サクソン)王が三人の息子達と上陸し、先住民のブリトン人と戦って勝利した、サセックス建国の地だと伝えられて来ました。しかし、今までそれを証明するものは発見されず、今日ではその説は疑わしいと考えられています。どちらにせよ、サクソン時代から重要視され、ノルマン時代には繁栄を誇った港町ではあったようです。↑上の写真は、もしかしたらサセックス王がモデル…かも知れないパブの看板。
教会はRiver Adur エイドゥー川の畔に立っていて、墓地からは古風な木橋の一部が見えます。この木橋については、後ほど御紹介します。
また、対岸の大聖堂と見紛うLancing Collage ランシング校の巨大な礼拝堂も見えます。
建物は上空から見るとほぼ十字架型をしているそうで、全て石造でバルコニー式になった中央塔が印象的です。しかし、これはサセックスの古い教会には良く見られるスタイルだそうです。
本来多くの教会建築で正面である西側には、ここでは出入り口、またそれらしき物がかつて存在した形跡さえ全くありません。
この教会の正面玄関は元から南翼廊側のようで、上部アーチには典型的なノルマン様式のギザギザ模様の彫刻が施されています。
ノルマン建築らしい小さな細い窓(窓を大きく設ける技術が未だ無かった)にも、ギザギザ模様が。こんな窓は初めて見ました。
内部でも、ノルマン教会の特徴のギザギザの石彫付きアーチが見られます。こちらは、身廊から中央交差を挟んで内陣&祭壇部分を眺めたところ。
鐘楼でもある中央塔の真下、つまりCrossing 中央交差は四方をギザギザ・アーチに囲まれていて、鐘を鳴らす為のロープが垂れています。
内部の説明書きに寄ると、中央交差と翼廊は主に12世紀、内陣は13世紀の築。既存のサクソン教会に手を加えて12世紀にほぼ完成し、14世紀に拡張し、19世紀のヴィクトリア時代に大改修したと言われています。
ショアハムはノルマン時代には王立港として相当裕福な町だったのにも関わらず、何故新たに建てずにサクソン教会をリサイクルしたのかは謎だそうですが、長年勤めを果たして来た教会に敬意あってこそだったのかも知れません(注:単なる素人考え)。
中央交差部分には、私の好きなノルマンらしいプリミティブなガーゴイルが多く残り、楽しませてくれました。
稚拙な造形だから怖い…と言うより、酷く崩れ過ぎていてコワイ。微笑むなっちゅーの。
その直ぐ横に電気設備の配線の設置されているのが、何とも奇妙で面白さを高めています。
中央交差から西側、つまり身廊で、この部分の壁はサクソン時代の建造物だそうです。南側壁は、サクソン時代の壁の上に11世紀のノルマン時代の壁を重ねているとか。その最後尾に聖歌隊席があるのは珍しく、普通は中央交差から東側の内陣に設けられます。
ステンドグラスは、やはりここでもヴィクトリア時代以降に制作された物。
期待した通り、ここも訪れる価値の十分ある興味深い教会でした。イングリッシュ・ヘリテイジの、歴史的建造物第一級に指定されています。