2026/07/03

鼈甲風樹脂のインタリオのペンダント

 

亡くなった母は、生前アクセサリー類もどっさり持っていました。勿論自身も好きで買う事が多かったし、姉や私がせっせとプレゼントしたせいでもあります。ところがそれらのほとんどは、母の葬儀の為に私と姉が実家に戻る前に、…どころか恐らく母が亡くなる前の介護施設に入所した途端、弟がほとんど処分してしまいました。一応貴金属宝飾類と価値があるかもと思える物は選んで残したそうですが、何故寄りに寄ってアクセサリーについて何も知らない弟が判断したのか、最早姉も私も絶句するしかありませんでした(本当は私が母に上げたイギリスのネックレスで引き取りたい物があったのだが、既に捨てられた後だった…)

その僅かに残された母のアクセサリーの中から、それぞれ姉と私が使えそうな物を選んで形見分けとして貰う事にしました。その中の一つが、この鼈甲風樹脂のペンダントです。

この樹脂はル―サイトかどうかは分かりませんが、カボションの裏面からバラの花が立体的に見えるよう彫られていて、ルーサイトのインタリオと同じ技術で作られているのが分かります。カボション自体は4×3㎝位の楕円形で、金属の枠に嵌め込まれているので、全体的に結構重みのあるペンダント・ヘッドです。

枠の意匠は結構凝っていて、アイビーのような植物が絡まっているように作られていて、クラシックな雰囲気を高めています。 枠と一体化した台座で塞がれている為、樹脂の裏面は見えません。

チェーンは結構長め。何の変哲もない喜平チェーンなのが、ちと残念です。 

母も、姉と同様にボリュームのあるアクセサリーが好きでした。ただし姉と違い、エスニック風の物を好んだようで、そう言う物が次から次へと出て来たと弟が言っていました。一方日本人にとって一般的に着用し易い小ぶりのネックレスやペンダントは、例え贈り物で貰ったとしても好みじゃなかったらしく、返って余り母は使わなかったせいで、割と状態が良く残っていたようです。




2026/07/02

バテン・レースの付け襟

いつものフリーマーケットで、綺麗なビンテージのレースの付け襟を買いました。そのストールでは、他にもレース襟、クロッシュ・ハットやカンカン帽等の、イギリスの一般的なファッションでは余り見掛けないアイテムを売っていて、明らかにクラシカルなファッションが好きな(好きだった)売り主さんに見えました。

細かいので一見そうとは気付きにくいのですが、バテン・レースの技法で編まれているようです。その為適度なナチュラル感があり、大袈裟にならずに着用出来ます。大き過ぎず地味過ぎず、大きさも私にとっては使い易そう。

縁には花のようなモチーフが連なっていて、愛らしいレース襟です。


手前に来る襟部分の中心のモチーフも、植物っぽく見えます。


留め具は付いていないので、着用する際はブローチか何かで留め付けます。または、自分でリボンかフック、ボタン等を縫い付けた方が、使い易いかも知れません。

今年東京で歩いていても、ここ数年日本では付け襟が結構流行っているんだなと思いました。フェミニンでクラシカルなファッションだけでなく、ロゴT+ワイド・パンツなんかの普通のカジュアルな格好に合わせるコーデが、返って今っぽいかも知れません。そう言うコーデにも、繊細さとナチュラル感を合わせ持ったこの襟は、ピッタリそうに見えます。兎に角持っているからには、もっと活用しなくちゃと思います。

 

 






2026/07/01

イギリス最古の礼拝堂

昨年の夏、エセックス州へ出掛けたついでに、イギリス最古の礼拝堂を夫婦で訪れました。古い小さな教会好きとしては、ずっと前から一度行ってみたいと思っていました。が、エセックス州の中でも地の果てみたいな辺鄙な海際に在る為、日帰りで行くには余程日が長い時期ではないと無理と思われ、またこれだけを目的に目指すのにはちと贅沢過ぎ、何かのついでではない限り行く機会は無いと思っていました。

最寄りの村はDengie デンジ―半島の北東に在るBradwell-on-Sea ブラッドウェル・オン・シーで、村の中心から農道を東へ2㎞以上進み、更に専用無料駐車場から直線一本道を10分程歩きます。

遊歩道の入り口には、毒蛇注意の看板が。Adder(ヨーロッパ・クサリヘビ)はイギリスに生息する唯一の毒蛇ですが、非常に憶病な為に滅多に遭遇する事はなく、毒性も致死的ではありません。しかし看板のイラストは、コブラの姿に捏造されていて恐怖を煽ります()

エセックスはイングランドの中でも特に海抜が低い事で知られていますが、海が間近なここは特に真っ平。平らな土地に異様な寂しさを覚える私には、一際荒涼とした寂しい場所に見えました。 

一応荒れ地ではなく小麦畑や牧草地にはなっているものの、余りに孤独な風景に、巡礼している気分になる人も居るそうです。

このすぐ北には、原子力発電所が重々しく聳え立っているのが見えます。元々その場所は、僻地な上に軍用跡地で周囲に民家が皆無だった為、原発を建てるのには好都合な立地だったそうです。 

木々も少ない平坦な農地の中にぽつんと立っている為、目的の礼拝堂は割とすぐに見えて来ます。 

横に立っている木造小屋は、近年加えられた倉庫兼休憩所のようです。

こちらは南西側で、私が考えていたよりは大きな建物でした。しかし余りにも簡素な造りで、教会らしさや宗教的な装飾はほとんどありません。知らなければ単なる古い石造りの納屋か何かにしか思えず、実はこれが礼拝堂で、しかもイギリスで最も古い、歴史的にも信仰的にも貴重な存在だとは気付けないはずです。

こちらは北側の壁。現在も機能している英語圏最古の教会は、カンタベリーのSt. Martin Church 聖マルティヌス教会ですが、ここは礼拝堂として最古です。

夕方近かった為、すっかり逆光になっている東側。名前を「The Chapel of St Peter Ad Murum」、または「The Chapel of St Peter-on-the-Wall 壁の上の聖ペテロ礼拝堂」と言います。 

「壁の上」と付くのは、ここがかつて「Othona オソナ」と言う古代ローマ帝国時代の要塞跡で、その城壁の在った場所に建てられたからのようです。

石材の多くは、要塞の残骸を再利用しているそうです。たった今通って来た遊歩道も、古代ローマの道でした。 

記録に乏しいアングロ・サクソン程の古い時代の歴史には珍しく、東サクソン(=エセックス)王国での布教に尽力したCedd セドと言う司教に寄って654年に建てられた事が、割とはっきり判明しています。元々は、聖セド修道院の付属教会だったようです。修道院は人里離れた、つまり俗世から隔離された場所が選ばれて建てられた為、こんな辺鄙な場所に礼拝堂が残っているのも頷けます。

15世紀中頃までは使用されていたと記録されていますが、16世紀のチューダー時代には廃礼拝堂となり、その後実際に納屋として使われたりで、20世紀に入り再び礼拝堂として復活しました。現在は、七、八月の毎週日曜日の夕方のみ礼拝が行われています。


内部には入れませんでしたが、一般公開している時もあるそうです。昔はサクソン教会建築らしい湾状に張り出したアプス(後陣部分)や塔も存在していたようで、ずっと教会らしい建物に見えたはずです。


また、外壁のあちこちにも出っ張りが残っていて、もっと規模が大きく複雑な建物だったのが伺えます。

海岸線まで300m程ですが、砂浜や岩浜ではなく湿地草原地帯や泥地で、当然海水浴に使われる事もなく、夏の快晴の日でさえ清々しさや明るさのカケラもない本当に荒涼とした海辺です。

礼拝堂のすぐ側の海辺に立つ、牡蠣やコックル(笊貝)の貝礁と塩田を監視する為の塔の廃墟?が、侘しさを一層盛り上げています。 

「登るな」との注意書きが沢山掲げられていますが、到底登る気にはなれない処か、見るからに今にも崩れ落ちそうで、普通のリスク感覚があれば近寄るのさえ憚られます。

また、牧草地の中には第二次世界大戦の掩蔽壕も残っていて…(結構今だイギリスのあちこちで見掛けるのだが)、本当に侘しい寂しい場所です。

対岸に見えるのは、同じくエセックス州のMersea Island マーシー島Clacton-on-Sea方面。マーシー島も冬は寂しい場所に見えましたが、恐らく夏期には海水浴客で賑わっているはずです。

余りに飾り気のない建物と孤高な立地に、返って只者ならぬスピリチュアルな雰囲気を漂わせているような、印象深い礼拝堂でした。

 

 

 


2026/06/30

六月の庭便り

 

本来六月は、イギリスの庭の一番見応えのある季節で、庭仕事も手が掛かるはずです。しかし、雨ばかりが続いたかと思えば、急激に暴力的な熱波に変わり、中々庭仕事をする機会がありません。暑い日は朝に花殻摘み程度をしますが、日差しが強過ぎてせいぜい午前9時までが限界です。水撒きは夕方の日没近くの暑さが収まってからですが、この時期のイギリスの日没は午後9時台なので大変です。


六月に入ってすぐに、「クィーン・エリザベス」と言うバラが初めて花を咲かせました。一昨年前に義母から貰ったバラで、自分にとっては初めての裸苗だったから、鉢植えに植えても暫くは全く変化がなく、「本当にこれ育つのか?」と半信半疑でした。4カ月程経った昨年の夏近くになって突然成長し始め、秋には地植えしました。

ハイブリット・ティー(イギリスではフロリバンダ)に分類されますが、咲き進むとオープン咲きで、蛍光掛かったピンクが可愛く気取り気が無く、自分の好みや我が家の庭に合います。耐陰性があり大型に育つらしく、花壇の一番奥に植えました。 

また同じ頃、クロウタドリの夫婦が、車庫の側面のバラの茂みに巣作りしているのを発見。この庭にはタラちゃんだけでなく他の猫も来るのに、そんな低い危険な場所じゃ子育ては無理だろ…と心配した通り、巣作りの途中で諦めて引っ越したようです。経験の少ない若い番いに、時々起こる失敗のようです。

タラちゃんは毎朝庭に出るのを楽しみにしていますが、余りに暑い日は、やはり午前9時頃までしか居られません。 

昨年地植えしたバラの中で、一番樹勢が良く花付きも順調なのが、P太が気に入って買ったこのイングリッシュ・ローズの「エミリ・ブロンテ」です。デヴィッド・オースティンのバラ園で直接購入したから、元々苗のコンディションからして良かったんでしょうね。 

バラの季節と言っても、全てが一斉にブワッとドラマティックに咲き出す訳ではなく、品種に寄って結構バラバラで一カ月以上の開きがあります。我が家で今年一番最後に咲き出したバラが、このコロコロ・バラこと「Raubritter ロウブリッター」。うどん粉病に罹ってしまったらしく、無事蕾が花開くのかと気を揉みました。我が家のバラで、うどん粉病なのは後にも先にもこれだけだからです。

ロウブリッターは前庭にも植えていて、蔓バラ風にフェンスに絡ませていますが、一季咲きで香りの全くないのが残念です。その代わり耐陰性はあり、花付きは抜群で花期は長めです。 

うちのバラで今年最初に咲き始めた赤い蔓バラ「スパークリング・レッド」は、私が日本から帰宅する前に沢山咲いた後に一度休憩に入り、今再び大量に花を付けています。  

我が家の庭で、唯一英国式庭園の宿根草花壇らしさを保っている東側花壇。…他の花壇は、何を植えても結局ほとんどバラとフウロソウだけになってしまいました(苦笑)。イングリッシュ・ラベンダーとアルケミラモリス(レディス・マントル)の組み合わせは、やはり絵になるのう。  

この花壇の、クレマティスの花付きが今年は圧巻です。目の覚めるような鮮やかな紫色で、濃淡のピンクのバラにぴったりなので気に入っています。 

暑さが落ち着いたら、育って来た鉢植えのバラや紫陽花を大きな鉢に植え替えたりと、やるべき事は沢山あります。しかし何せ夏なので、熱波は再びやって来そうです。そして何より、水不足が心配です。