2026/05/31

五月の庭便り

  

五・六月はイギリスで最も美しい季節だと言う事に、異論を唱える人は余り居ないのではと思います。バラが咲き、それに合わせてイングリッシュ・ガーデンの典型的な他の植物達も花開くこの季節、あちこちが正に絵に描いたようなイギリスの光景に見えます(…と毎年同じような事を言っているような)。 

今年の二か月間の臨時一時帰国で、またしても沢山の春の球根植物の開花時は逃してしまいましたが、少なくとも今回は自宅の庭のバラの開花時には間に合いました。

裏庭に面した掃き出し窓を開けた途端、バラ(とハニーサックル)の芳しい香りが漂って来るのは、バラを育てている最高の御褒美と言えます。

兎に角天気の悪い日が多く、冬が暗くて長くて辛いイギリスなので、この最も光り輝く最高の季節を逃すと、最早この国に住む気力すら失うような気持ちになります。

我が家のバラはほとんどが四季咲きですが、一番初めの最盛期がやはり最も美しく咲き揃い見応えがあります。 

その最初のバラの開花の最盛期は、ここイギリス南東部では数年前までは六月に入ってからでしたが、今は四月からバラが咲き始める事も珍しくはなくなりました。

我が家でこの春に最初に開花したバラは、P太からの報告に寄れば、蔓バラの「スパークリング・レッド」だったそうです。モッコウバラにさえ先駆けて咲いたようで、その早さに驚かされます。私が日本から戻った時、そのモッコウバラは終盤の散る間際でした。

その時はライラックも丁度終わった所で、日当たりの良い場所、または開花時期の比較的早い品種のバラだけが咲いていました。

後は開花の遅いバラが咲き揃うのを待つばかり…のはずでしたが、五月のイギリスとしても丁度異様に寒い時期で、最高気温でも10度位。残りのバラの蕾は硬く、中々育ちそうもありませんでした。


西日の良く当たるこの部分が、特に花付きが早く良かったようです。 左からER「ザ・ハーバリスト」、FL「ブルー・フォー・ユー」、ER「ゴールデン・セレブレーション」、そして上部のランブラー「オープン・アームズ」の色の組み合わせと配置は、我ながら上手く行ったと思っています。

「ザ・ハーバリスト」は微香と記されていますが、我が家の株は強香に近い程で、オールド・ローズ系の芳香を強く放ちます。有名な「薬剤師のバラ(ランカスターの赤バラ)」の四季咲き版なので、先祖返りしているのかも。ただし四季咲きと言うよりは返り咲きで、初夏に多く開花した後は、秋まで中々花が付きません。

「ゴールデン・セレブレーション」は、両親の金婚式に日本のデヴィッド・オースティン社経由で贈った事のある品種です。その後すぐに母はこのバラを枯らし、悔しいので自分で購入したものの再び枯らし、今三代目が実家で育っています。花付きも抜群に良ければ、一つ一つの花弁の大きさも迫力です。 

 

ところが、英国に戻って一週間後位から、突如気流が変わって熱波が到来し急に気温が上昇し、月末にはイングランドの五月の観察史上最高気温を記録しました。↑この写真は、帰宅直後の東端の花壇。

 ↑そして、同じ場所の約一週間後の熱波がやって来た時の写真。ERのランブラー・ローズ「ザ・レディ・オブ・ザ・レイク(湖上の美人)」が、ランブラーらしく大きく蔓を伸ばして旺盛に育っています。

この花壇の左端に2年前に植えたER「ガブリエル・オーク」は、やっと株が安定し出したのか、今年は沢山花を付けてくれました。  

家の北側の公道に面した、バラの開花が裏庭に比べて概ね遅れていた前庭も、熱波の後はこの通りになりました。 

しかし、気温上昇で確かに一気にバラは咲き進んだものの、余りに高温過ぎて、あっと言う間にチリチリに乾燥し萎れてしまった花弁も多く見られました。 

ついでに、この暑さで大量のアブラムシも爆誕したような…。 

本当は花の終わったライラックやモッコウの剪定、バラの花殻摘み等やるべき庭仕事が山程待っていましたが、余りの暑さに丸ッと後回しにしました。

 

この極端な気温差は、植物にだけでなく、自分にとっても年齢的に自律神経の調整やらで厳しいィィとつくづく感じます。 

昨秋に球根を植えたダッチ・アイリスは、自宅に戻った時に丁度咲き始めた所でしたが、この一週間後に全てが咲き揃いました。一つだけ白花の混じっていたのが御愛嬌。しかし、やはり急激な気温上昇に耐えられなかったのか、この後割とすぐに花が終わりました。

この熱波の間に、シャクヤクも一気に花開きました。バラに負けない華やかさがあります。

傷んだトマト(食品)を土に埋めていたら、芽が出てこんな風に育ちました。花も咲いたので、その内収穫出来るかも知れません。 

ところで、帰国前の冬の終わりの朝に、この裏庭で鳩の大量の羽根と死体の一部💦を発見しました。

タラちゃんは夜間は外出させない為、最初は他所の猫に襲われたのかと思いました。しかし、 木塀の地面近くが壊されて大きな穴が開き、その周囲にも鳩の羽根が付着していたので、どうやらキツネが我が家の庭に侵入して犯行に及んだようです。もし猫であれば、塀を乗り越えられるので、塀に穴を開ける必要はありません。

その穴は緊急に塞ぎましたが、キツネはその後も再び無理矢理侵入を試みたらしく、 更に塀が壊されていました。

一方、前庭で生卵が地中に埋められている奇怪な現象を何度か目撃した事があり…、ググってみると、どうやらイギリスでは度々起こるキツネの仕業のようです。牛乳配達の際に卵等の食品も一緒に注文する家があり、早朝玄関先に置き配された物をキツネがパックから盗み、卵を埋めるらしいのです。 

以前からロンドン市内ではキツネを良く見掛けましたが、ここ数年は私が住む地方の住宅地や街中でもキツネを見掛けるようになりました。春先は夜間お風呂に入っている時、しょっちゅうキツネの鳴き声が聞こえて来ました。

キツネは害獣で、現にうちは塀を壊された訳だし、ゴミを荒らすし伝染病も怖いのですが、まあどう考えてもクマが出現するよりは絶対マシかと。

愛猫タラちゃんは、きっとキツネが庭に侵略して来る度に、夜の窓辺で「こんにゃろめっ」と悔しく眺めていたのに違いありません。

寒い季節から一変して、この季節は、タラちゃんは毎朝庭に出るのを待ち遠しくしています。 

更に私が庭に出る度に一緒に出たがり、庭の写真の何処かしらには写っている事が良くあります。

丁度草花に映える毛皮の良いモデルさんだとは思うのですが、カメラを向けると「撫でて~♡」とすぐに近寄って来てしまう為、中々シャッターチャンスの掴めないのが玉に傷です。 

六月も引き続きバラのお世話には気が抜けず、今後の水不足や物価高に寄る肥料や薬剤の入手の難しさも気になります。とは言え、マメな手入れとは程遠く、正直最低限の世話しかしていません。しかし、私のイギリスでの暮らしにとって、今やバラは無くてはならない存在となりました。


2026/05/30

桃色ムーングロウ・カボションのブローチ

主に友達への誕生日プレゼントを探しに行った今年三月のArdingly アーディングリーのアンティーク・フェアでは、このブローチも買いました。ストールは全く別なのにも関わらず、先に購入した翡翠色のムーングロウのカボションのブローチ偶然そっくりでした。

大きさは、翡翠色と全く同じ。楕円の花型のフレームのデザインもほぼ同じですが、翡翠色が多分クローム製なのに対し、こちらは恐らくピューター製で輝きがなく渋く見え、実際更にずっしり重みがあります。

また製造年代が翡翠色より若干古いのか、フレームの透かし模様に糸鋸を利用した&手彫りのような武骨さがあります。その為、寄り一層アーツ&クラフツっぽく見えます。少なくとも、同じようなデザインに見えても花の大きさ等が微妙に異なっているようで、同じ抜型を使っている訳ではなさそうです。

カボションの大きさも全く同じで乳白色ですが、こちらは蕩ける桃のようなピンク色です。また、猫目石のようなシャトヤンシー(筋)が入って見えます。

このカボションの表面に、傷のあるのがちと残念でした。最初は汚れだと思い、家に帰って拭けば落ちると思っていたのです。




2026/05/29

五月のロンドン

 

一時帰国で二カ月滞在した日本からイギリスの自宅に戻って一週間後、私は首都ロンドンへ行かなくてはなりませんでした。母が亡くなる前からパスポートの更新を申請していた為にその受け取りと、遺産相続に必要な書類関係で、在英日本大使館へ行かなくてはならなかったからです。現在日本国外ではパスポートを発行するのに申請から一カ月以上掛かり、しかし受け取るのは発行から六カ月以内と期限があり、またイギリスに入国するのにパスポートの残存期間が六カ月は必要なので、今回の帰国に気を揉んだのはそのせいもあります。大使館へ行くのは要予約で、日程と時間は既に日本に居た時から予約していました。海外在住の日本人にとって、日本に関する行政手続きの大半は大使館へ自ら赴かなければならないのが厄介です。それでも我が家からは日帰りで十分ロンドンへ行ける距離なのだから(ロンドンの端へは毎週行っておる)、未だ恵まれていると言えます。幾ら一日出張領事館が主要都市で定期時に行われているとは言え、イギリスの遠隔地に住んでいる日本国籍者は大変だと思います。

ロンドンへ行くのは、高い、面倒臭い、人混み、空気が悪い、治安が悪い、ので正直大嫌いです。本当は我が家からロンドンへは、頻繁に通っている直通列車で30分ちょいで、おまけに家から駅も近いから簡単に行けます。しかし、運賃がとんでもなく高くシステムが複雑な為、わざわざP太に有休を取って貰い、ロンドン市内で混雑税の掛からない、尚且つ駅の近くに奇跡的に無料駐車出来る場所へ自家用車で行き、其処から電車に乗ります。乗車券は、交通アプリを利用してスマホで払います。地下鉄、バスも含め一日乗り放題で凡そ10ポンド(約二千円)。ロンドン郊外からの場合、その方が一日乗車券を買うより、オイスター・カード(Suicaのような課金制電子マネー・カードのロンドン版。ただししょっちゅう誤作動を起こす)を利用するより、安上がりで確実だからです。

ロンドンの空気は汚い処か生命の危機を感じる程で、実際に行った後に何度か病気になった為に、最早ロンドンへ行くのがトラウマになっています。現に地下鉄のホームは、走行の際にレールで削れた車輪?の金属の粉塵が大量に空中に舞っていて霞んで見える程です。これで毎日通勤している人は、きっとその内肺病になるのに違いない…。

一昔前までは一人でロンドンへ行っていましたが、その頃に比べると運賃が爆上がりしているのと、治安が顕著に悪くなって来ている為、最近はP太が一緒に付いて来てくれます。もっともロンドンの本当の中心地にしか行かない為、観光客ばかりだから、返って住民中心の地域よりは治安が若干マシかも知れません。

在英日本大使館はGreen Park グリーン・パークに面していて、この公園で時間を潰したり、私が大使館へ行っている間はP太に待っていて貰います。今回はここの木陰のベンチに座って休んでいたら、童話のような光景に出くわしました。アジア人のおじいさんが一人でやって来ると、彼の周りに野鳥やリス達がどんどん群がって来ました。手にナッツを持っていて与えているのですが、恐らくしょっちゅうそんな風にこの公園に来ているからか、彼の姿を見ただけでワラワラと動物達が集まって来るのです。

おじいさんは、何故か私達にもナッツを分けてくれました。この公園の動物達は、全般的に動物に優しいイギリスの中でも特に人馴れしていますが、おじいさんに懐いている動物達は、特に人を恐れず手から餌を食べる程です。 

その中には、オウムも混じっていました。東京同様に、ロンドンにも逃げ出したペットのオウムが大繁殖して沢山生息しています。 

声がうるさい上に庭の大切な果実を盗み食いするので嫌い、と義母は良く文句を言っていますが、間近で見るオウムは綺麗で結構可愛い物です。

グリーン・パークを南に突っ切ると、すぐにパッキンガム宮殿に出ます。ロンドンの中でも、当然最も観光客率の高い場所の一つです。 

大使館へ行く度にここも訪れますが、毎回特に感動も無く…()。返ってこれだけ外国人が集中していると、テロの格好の標的じゃないかと少し怖くなります。

ただし今回は、まるでお土産にしか見えないコレが実際に居る事に、改めて妙に感心しました。この後、近衛兵軍楽隊に寄る演奏が行われ、柵に観光客が群がって近付けなくなりました。曲目は、最新ポップスやスター・ウォーズのテーマとかでした。

この後、私達は宮殿の東に伸びるSt. James Park セント・ジェームス・パークへ行く事にしました。汗ばむような暑い日だったので、水辺を囲むこの公園は心地良く感じました。

ここから眺めるバッキンガム宮殿は、返って間近の広場からよりも見栄えが良いかも知れません。  

一方こちらは、公園の東の近衛兵博物館方面。 

東西に長い湖は、水鳥達の楽園になっていました。この季節は、雛連れも多く見掛けました。

青鷺も居ましたが、これ程大きく目立つのに、余りに動かないせいで生物と思われなかったのか、大勢の観光客は全く気付いていませんでした。この湖では、白鳥やペリカンも見掛けました。


公園からWaterloo Place ウォータールー広場を通って、Leichester Square レスター広場方面に向かいました。意外にも、ウォータールー広場を通るのは初めてでした。この広場には、歴史的な著名人の彫像が沢山並んでいます。しかし我々の関心を最も引いたのは、このバンクシー作の「Man Blinded by Flag」。盲目的な愛国心を皮肉った作品で、この場所に立っている事が一層効果的です。


レスター広場方面へ向かったのは、その近くのジャパン・センターで日本食が食べたかったから。出来合いの物を加熱しただけだとは思いますが、日本から戻った直後でもちゃんとし美味しく感じる適格に調理された和食で、ふんだんに掛けられた削り節も結構上質でした。単にお弁当を買っただけでもイートインも出来るこの場所は、イギリス国内では真正な和食を最も安く楽しめる場所かも知れません。店の外でフリーレンのTシャツを着た若者(白人)を見掛け、オマ絶対にジャパセンに来たんだろうと思いましたが、意外にも素通りして行きました(笑)。ーーー何だかんだ言っても、結局この日のロンドン訪問も結構楽しめました。