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2026/10/30

イギリスの墓石ウォッチング 4

 

最近教会の墓地で、壺のような不思議な形の墓石を見掛けました。つい初めて見る型だと喜んでいましたが、実は前にも見た事があるのに気付かなかっただけでした。これはurn=骨壺と呼ばれるタイプのようです。骨壺をわざわざ墓石のモチーフに選ぶ理解し難い発想は、やはりmemento moriの思想からなのかも知れません。

また、柱型も見掛けました。建てた後から何かの事故で折れてしまったのか、元からわざわざ遺跡をイメージして折れた形に制作した(イギリスなので大いに有り得る)のかは謎です。 

イギリスの19世紀の墓石として良く見掛けるチェスト型ですが、チェストと言うよりは棺桶にしか見えず、中にダイレクトに死体が納まっているのでは?(つまりsarcophagus)と常々恐れていました。

しかし最近、このチェスト型の崩れた物を見掛ける機会がありました。

中には支えとしてレンガが積まれている構造が見え、これでは死体は納められようもないと分かり正直ホッとしました。P太も興味津々で、内部の写真を熱心に撮っていました。

同じ墓地内では他にも崩れたチェスト型を見掛け、こちらなんて支えも消えぺしゃんこに潰れ、元が墓だったのかベンチだったのかさえ分からない状態です。 

多分修理・管理する子孫も最早残っていない無縁墓なのでしょうが、荒れた墓石がこんなに多くては、教会側も困っているのではと思います。

我々夫婦が勝手にミイラ型と呼んでいるタイプも、また見る度に気味悪い気持ちになります。 

最近やっと正式一般名称が分かり、本当は(curved )body stone tomb、 coffin tomb、または coped stoneと言うそうです。…結局やっぱ死体型って訳か。

こちらは、そのミイラ型が粉々に崩れたのか、瓦状になったまま残っています。

こちらなんて、ヘッドストーンもフットストーンも消えてミイラ型のみが残り地中に埋もれ、最早土管にしか見えません。

これなんて、本当に棺桶型だし。何故わざわざ中に埋まっている物を、墓石の形で表現するのだろう? そこまでしなくとも、墓地なんだから分かるものを。  

常々イギリスの古い教会墓地では、一つの墓所に大抵して囲いのような物は余り存在せず、何処までがその墓石の領域なのか、敷地とか区画とかどーなってんの?と不思議に思います。

例えば、近親者であろうと、普通はこんなにみっちみちには墓石を建てないはずです。 

 

もしヘッドストーン(これが大抵墓碑)とフットストーンが存在すれば、その間が墓所の一区画だとは分かります。また、kerbと呼ばれる低い縁石で囲まれてある場合も区画が明確です。 

遺族が頻繁に墓参りに来る場合、このkerbの中をプランター代わりに花を沢山植え、またはお供え物でいっぱいにします。

裕福者の墓所は、grave-railsかgrave-boardsと呼ばれる柵で囲む場合があります。 

これはcradle(ゆりかご)タイプと言う、ヘッドストーンとフットストーンの間がkerbよりも高い縁石で囲まれ、桶のように深くなったタイプ。

準男爵の墓で、側面には大変美しい植物のレリーフが彫刻されています。 この部分にも、プランター代わりに花をいっぱいに植える遺族は多いようです。 

文様の細かく美しいケルト十字の墓標は、見ると写真を撮らずには居られません。

 
サビサビになった鉄製の墓標も、古い教会墓地では毎回一つ位は見掛けます。

この日も、オーブがいっぱい写っちゃったなあ…。まあ墓地だから仕方ないですね‼





2026/10/29

イギリスの墓石ウォッチング 3

 

ハロウィーンが近いので、勝手に墓石特集。イギリスの墓石ウォッチング第三段‼(クドイよ) 西洋の墓石と聞くと、大抵の日本人はまず十字架を思い浮かべると思います。

しかし、イギリスの古い教会の墓地で一番多いのは、実はこんな板碑タイプです。

この厚さ10㎝程度の石板の多くが、土台・礎石の支えもなく地面に直接刺さっているだけな為、大抵は当然豪快に傾き、それがイギリスの教会墓地特有のゴスな光景を作っています。


土台があっても、根本的に建て方が悪いのか、地震もない国なのに傾いている墓石は非常に多いのですが。

板碑にしても、本当に形、また彫刻のモチーフは様々です。

時代に寄る流行や特徴、地域性(多分地元の石屋の得意な意匠とか)もあるように思います。

素材には明らかに地域性が現れ、大抵はその土地で多く産出されるか一番入手し易い石材が使用されます。  

 墓石のバリエーションに関しては、イギリスの方が日本よりずっと豊富なはずです。

キリスト教徒の墓だけでもそう見えるのだから、他宗教が混合する共同墓地へ行けば、更に様々だと思います。

ところで、グーグルマップで古い教会を検索すると、その教会墓地のドクロのレリーフの付いた墓標の写真が、一般ユーザーから多く投稿されています。


現代のイギリス人の感覚にとっても、それは相当奇妙に映って目を引くからでしょう。

墓標にドクロ柄を付けるのは、memento mori symbolismとして17~18世紀の流行だったようです。

多分同じ時代の墓標として、天使のレリーフが付いた物も多く見掛けます。

 

ケルビム・タイプの子供天使の顔だけなのですが、当時の稚拙な表現力な為か、可愛いと言うよりは…大抵ドクロに負けない程不気味に見えます。

そもそも、墓標に書いてある文字自体も、「○○の遺体がここに横たわる~」とか生々しく、この時代は言わんでも良い事を一々強調したようです。 

ドクロと天使が同居するタイプもあり。

こちらは、我々夫婦が勝手にミイラ型と呼んでいる墓石で、そのヘッドストーンにも天使が付いている事から、つまりミイラ型は17~18世紀の流行の型なのかも。

天使モチーフのお墓なら、やはりこう清らかな美しさであって欲しい。

 

その点、植物モチーフのレリーフの板碑墓標は、いつの時代の意匠も安らぎを与えてくれます。

墓石ウォッチングが興味深いのは、墓石のデザインだけでなく、墓標の文字から、墓の主である故人の歩んで来た歴史や、家族関係等の一部も垣間見られるからです。

日本の墓石には戒名(神道では諡)・俗名・没年・享年を刻むのが一般的で、形式的で味気ない物がほとんどですが、西洋の墓標には遺族の愛情、更に古い物なら個人の思想等の様々な情報が刻まれています。


とは言え、19世紀以前の古い墓標は文体が古風だったり、石が風化していたり(イギリスの墓石は崩れ易い砂岩が多い)半端なく岩苔むしていたりで、文字の解読が中々困難です。…またオーブが沢山写っちゃったわい。 

  

「彼を知る全ての人から愛されていた特別な唯一の人」と記してあります。下半分が大きく開いているのは、未だ存命中の妻の分だと思うと切なく感じます。

良くあるlovedの代わりに「devoted(献身的な、愛情深い)夫で父親で祖父だった」と書いてあるのが印象的です。

13歳で亡くなった息子と、その10年後に53歳で亡くなった父親の墓標。…他の家族は何処へ? もしかして母親(妻)はその後再婚したとか?などと勝手な想像を掻き立てます。  

勿論、氏名と生没年だけのシンプルな墓標も。上部に刻まれた風車はこの村のランドマークで、ここに眠る夫婦の地元愛を簡潔に表しています。

墓とは思えない力強いフォントで、しかもみっちみちのレイアウトが目が留まりました。この時代の流行のデザインだったのか。それにしてもやはり昔の人は、随分早く亡くなる人が多かったのだと改めて実感します。