2026/06/01

カロチャ刺繍の半袖ブラウス

 

母の葬儀の後の実家での遺品整理では、大量の衣料品も待ち構えていました。と言っても、母が介護施設に入所するや否や、弟夫婦が既に大方処分してしまっていたので、納棺の際に添える母のお気に入りの服を選ぶのにも困った程でした。母は衣料の手入れもまるで無頓着で、大抵はシミが付いていたり虫食いがあったりと傷んでいない物の方が珍しかった為、残った服も結局ほとんど処分するしかありませんでした。 

そんな中、このハンガリー刺繍のブラウスをゴミ袋の中で見付け、奇跡的に状態は良かったのを確認し、自分で引き取る事にしました。

どう考えても、かつて私や姉がハンガリー旅行をした際に、母にお土産として買い贈った物でした。襟元と袖に、ハンガリー南部のカロチャ地方特有の刺繍が入っています。

カロチャ刺繍では今まで長袖ブラウスしか持っていなかったし、十分オフショルダーに見える長めのフレンチ・スリーブも、ゆとりあるシンプルなフォルムも、今時の日本の普段のファッションに合わせて可笑しくないデザインだと思いました。 

ブラウス自体の素材は、乾き易く皺になりにくいポリコットン。その反面、毛羽立ち易い素材なのは難点です。襟開きがたっぷり取られ、透かしもふんだんに施されて涼し気なので、着心地的にも夏にぴったりです。

ちょっと肌寒い季節なら、こんな風に重ね着しても。ボトムは、デニムのワイド・パンツなんかを合わせたい気分です。首に掛けているコットン・パールのネックレスも、母の遺品から引き取った物。姉からの母へプレゼントで、軽いからと喜んで使っていました。

ハンガリーは今でも伝統手工芸を重んじる国で、地方毎に異なる個性豊かな刺繍が残っています。その中でも華やかなモチーフ、鮮やかな色彩、凝った大胆なカットワークを施したカロチャ刺繍は、マチョー刺繍と並んで国を代表するフォークロアです。

ステッチは普通のサテン刺繍ですが、ハンガリー独特の刺繍糸でふっくら立体感が出るように縫われています。

 こちらは、袖の刺繍部分。 

このブラウスの刺繡には、カロチャを象徴するはずの赤の糸は使用されていません。母は赤が嫌いだったし既に年配だった為、この少し落ち着いた色合いのを私達姉妹は母用に選んだのだと思います。カロチャ刺繍には、この他青系のグラデーションや白だけで纏めた物も存在し、かなり印象が変わって見えます。