イギリスでは物価高騰が凄まじく、多くの人々は食品の購入数や額を抑え、中には一日の食事から一食抜く人さえ多いそうです。一方我が家は、他を切り詰めてでも、今返って食品を普段より多く買っています。何故なら、P太が世界規模の致命的な食糧不足が近付いていると固く信じていて、缶詰等の長期保存の利く食料を毎回せっせと買い貯めているからです。正直そんな危機感を毎回聞かされるのはウンザリだし、最早空き場所を確保して仕舞い込むのも大変だし、勿論実際に世界的な食糧危機が来ては非常に困ります。しかし終わりの見えないウクライナでの戦争、燃料不足&高騰、加えて多くの地域のこの干ばつを考えると、食糧危機は益々現実味を帯びて来ました。
そんな保存食料の中に、スパゲッティーを含むパスタ類があります。乾燥パスタは概ね常温で数十年も保存できるそうで、実際災害非常時用に保管している自治体も多いそうです。そこで、今回世界最小のパスタと言われるクスクスを、保存食料に加える事にしました。クスクスは、モロッコ等のアフリカ北部、またはかつて其処に植民地を多く持っていたフランスでは御馴染みの食品です。今まで味付きで乾燥野菜の混じったインスタントのパックなら何度か買った事がありますが、今回初めてプレーンなクスクスのみのお徳用袋を買ってみました。因みにクスクスは、パスタ・コーナーではなく穀物コーナーに売られています。
クスクスの魅力は、大量のお湯を沸かして10分間以上茹でて湯を切る一般のパスタとは違い、例えインスタントじゃなくとも、お湯を注いで蓋をしてしばし蒸らすだけと言う、言わば日清チキンラーメンと同じ手軽さで食用可能な状態になる事です。これは、火を使って調理する時間を出来るだけ短くしたい夏には、持って来いの食品ではないでしょうか。また暑さで食欲が落ちた時も、クスクスなら簡単に喉を通ります。暖かい料理でも冷たくともイケます。更に、炭水化物としてはカロリーもGI値も低く、タンパク質やミネラル、ビタミン等の栄養素を多めに含んでいます。我々が買ったのは全粒粉のクスクスなので、一層カロリーとGIが低いはずです。全粒粉のパスタは、幾ら健康に良くとも不味くて食べられた物ではありませんが、クスクスなら全粒粉でも全く問題はありません。
モロッコ等の北アフリカでは、羊や鶏肉の澄んだスープ等と食べるようです。「タブレ」と呼ばれる、野菜を混ぜたサラダ(写真上)として食べるのも一般的ですが、実を言うと私は余りそそられません。私達が好きなのは、チキンのトマト煮、ラタトゥユ、魚貝のサフラン煮等と食べる事です。地中海沿岸の食品なので、流石にトマトとは相性ばっちりです。大抵のパスタ・ソースに合うはずですが、普通のパスタよりも薄味でOKなのも嬉しい所。しかしトマト味ばかりではすぐに飽きてしまうので、何か他にクスクスを美味しく素早く食べられる方法はないかと模索中です。
そんなクスクスについて調べていた処、「ブルグル」なる食べ物の存在を知りました。今まで気付かなかっただけで、普通のスーパーでもクスクスの隣辺りに並んでいました。ブルグル(英語ではbulgur wheat)は、トルコを始めとする中近東一帯からインド等で一般的な穀物で、クスクスの原材料と同じデュラムセモリナ等の小麦を挽き割り乾燥加工した粒。このブルグル、日本で人気のオートミールにも勝るスーパー穀物なのです。食物繊維は白米の30倍(そもそも米にはほとんど繊維が無いのだが)、オーツ麦とさえ比べても2倍あります。カロリーも低めで、特にGI値は50を下回り、穀物としては破格の低さ! タンパク質やミネラルやビタミンも、クスクスより更に高いのです。もしかしたら、ブルグルとふりかけだけ食べていても(笑)栄養のバランスが大体摂れるのでは?と思う程です。
是非これも非常事態用保存食料に加え、尚且つしょっちゅう食べねばと思いました。ブルグルは見た目はクスクスに似ていますが、調理はクスクスよりは少し手間が掛かります。まず穀物臭さを取って香ばしい風味を出す為、鍋かフライパンで乾煎りし、倍量の水か湯を加えて蓋をし、水分が無くなるまで蒸し煮します。水分はすぐに吸収され消えますが、沸騰した際に蓋の裏面にもこびり付く程吹き上がるのが厄介です。もっともこのイギリスのパッケージには、水は4倍加えろと書いてあり、私はその方が食べ易くて好みです。
日本では米の代わりにオートミールを食べるのが流行っていますが、P太がオートミール嫌いなので、うちでは私だけがポーリッジとして朝食に食べるしかありません。しかしブルグルなら、P太でも食べられるのが有難いと思いました。パンや米の代わりにブルグルを食べ続ければ、確実に減量は出来ると思います。しかし米も好きなので、米にブルグルと大麦を混ぜて雑穀米として普通に炊いて食べています。それが調理も一番手軽です。特に、長米種を焼きめし以外で食べる場合、パサパサして私には少し食べにくかったのですが、ブルグルを加えて炊くとしっとりして食べ易くなります。大麦は米に混ぜ過ぎると全体的に固くなりますが、ブルグルなら3割以上混ぜても大丈夫です。写真は、ブルグルの豆乳リゾット。一人100gで調理しましたが、それでは多過ぎて(野菜の量も半端ないしね…)食べ切れないとP太から文句を言われました。不水溶性食物繊維もたっぷりだし、恐らく少量でも満腹感&腹持ちが抜群だと思います。このブルグルの美味しい食べ方も、もっと追及して行きたいと思います。
そう思っていた矢先、義母の購読している新聞に毎週付いて来るレシピ雑誌(本当にこれ見て料理する英国人が何人居るんだろか?ってな内容だが)には、ブルグルが食材として結構登場している事に気付きました。その中でも、お湯で戻したブルグルに野菜を混ぜて丸めてフライパンで焼いた、ブルグル版お好み焼きかパンケーキのような物+サルサ(ってかほぼサラダ)は、特に手軽で美味しそうで、早速自分流にアレンジして試してみました。
本当はパンケーキの中にもサルサにも刻んだプラム・トマトをどっさり入れる、トマト嫌いの私の姉にとっては天敵のようなレシピでしたが、私はパンケーキにはトマトピューレとズッキーニのサイコロ切り、そしてチーズを入れてみました。…これは美味しい! バルサミコだけで味付けしたサルサが、こってり目のチーズ味のパンケーキをさっぱりさせてくれて非常に合います。P太も、一口目から気に入っていました。
パンケーキに混ぜる野菜は、コーンでも豆でもトマト味に合うものなら何でもOKだと思います。しかし、入れ過ぎると崩れ易くなります。崩れを防ぐ保険として、私は卵と片栗粉も混ぜました。手で丸めるのだけが少し面倒なので、スパニッシュ・オムレツのように大きく焼いて切り分けたら、もしかしてもっと時短になるかも知れません。
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