2024/10/30

イギリスの墓石ウォッチング 2

 

いよいよハロウィーンが近付いて来ました。仮装もパーティーも子供に菓子をバラ撒く事もしない私にとっては正直どーでも良い祭りですが、墓の写真の自分のコレクションをお見せするのには絶好の機会です(…要らんわ、そんなもん!)。撮影地は、ケント州のAylesford アイルスフォードと言う川沿いの美しい村。訪れたのは、丁度昨年の秋です。ここの教区教会を取り囲む墓地には、古い中々魅力的な墓石が残っていました。

まず、まるで遺体を覆い被せるような筒状の石の、私達夫婦が勝手にミイラ型と呼んでいるタイプが、ここには多く集まっているのが印象的でした。

旅行の先々で機会があれば墓碑を見て来ましたが、ヨーロッパの他のキリスト教国でも、こんな悪趣味な形の墓石は見た覚えがありません。イギリス特有の墓石の形ではと思っています。

ミイラ型自体には、埋葬者の名前や没年等の文字は彫られていません。中には情報の刻まれたヘッドストーンの付いたミイラ型もあり、もしかしたら元は全てヘッドストーンとセットになっていたのかも。

この薄っぺらいヘッドストーンが、土台も支えもなく、単に地面に直に刺さっている場合が多い為、イギリスの古い墓石は大抵派手に傾き捲って荒れて見えます。そもそも、区画の境界線のような物はほとんど見られません。

更に、多くが脆い砂岩で出来ている為、崩れて朽ち果てている墓石も多く見掛けます。これなんて、崩壊した上に地中に埋もれ、左端に辛うじて墓石だった痕跡が見られます。

墓地ではズバリ石棺にしか見えない、チェスト型やティーカディ(茶葉が高級だった時代の紅茶入れ箱)型と呼ばれるタイプも、イギリスならではの墓だと思っています。


棺桶型…いや箱型に、十字架の乗った物。

屋根のような形が乗ったタイプ。

箱型ではなく、正にテーブル型の墓石も。一体どんな理由でこんな墓石を建てたのか、そもそも何故こんな形の墓石が流行したのだろう?? もしかして、この上でピクニックをするつもりだったとか。

彫像の付いたタイプは、多くのキリスト教国の墓地で見掛けますが、凝っているのでやはり目を引きます。

しかし「Dr. WHO」を見て以来、天使の石像を素直に美しいとは思えない…。

ケルト文様の美しいケルト十字型も、やはり目を留めずにはいられません。


最も新しいタイプの墓石は、板碑を地面に寝せて嵌め込んだこのタイプ。多分正確には遺体を埋葬した上の「墓碑」ではなく、この土地に散灰した「記念碑」だと思います。日本同様に墓地不足&高騰のイギリスなので、これとて教会の墓地に記念碑の設置が許されるのは、相当お金が掛かっていると思われます。

教会の入り口脇にあった、鉄柵に囲まれた、この墓地で一番偉そうだった墓石。どなたかは存じ上げませんが、村の有力者のお墓と想像します

因みに、イギリスで一番古い墓石はと言うと、ーク地方南部のAlstonefieldと言う村の、1518年に亡くなったAnn Greenと言う女性の墓だそうです(注:上の写真ではありませぬ)。同村では、Ann Green祭りも行われるそうです。16世紀前半ですから、意外と新しいですね。もっとも、埋葬地なら遥か昔の石器時代の物もイギリスで沢山発掘されている訳で、墓「石」と言う点で最古なのだと思います。それ以前の時代は、王侯貴族なら教会や大聖堂、または城の礼拝堂の地下墓所(これは今でも)、一般人は土饅頭か木製の十字架とかの墓標だったのかも。

ところで、「お墓から見るニッポン」と言うTV番組が好きで見ています。民間放送のバラエティ番組ですが、中々真面目な内容で、考古学や民俗学、生死観や宗教観からも勉強になります。前半が偉人のお墓訪問、後半は昔の庶民のお墓に付いて説明され、日本でも墓地の形式に地域性があるのは凄く興味深いと思いました。






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