2026/08/30

八月の庭便り

 

猫とは思えない形に育ってしまった生き物

ガーデニングと言うよりは、今月もほとんど英国の天候の話題です。日本でも報道される程ですが、この夏はヨーロッパ全体が過酷な猛暑に見舞われ、高齢者を中心に沢山の人が命を落としました。やはり人々が暑さに慣れていないのと、住居自体が基本的にこんな高温の気候向けに作られていないのが被害を大きくしているようです。北・西・中欧の住居は、伝統的に冬の寒さ対策用に熱を溜め込む構造に考えられていて、また築百年以上の建物も多く残っている為、今後は根本的な改善が余儀なくされると言われています。

ヨーロッパではエアコンの普及率も低く、室外機の置き場所はイギリス以外の国でも似たような規制があるらしく、それも今後の緩和が必須です。また、私が住んでいる場所からそう遠くない場所で、今月暑さで線路のレールが歪み脱線事故を起こしました。今後は、様々な建築物の耐暑基準を変える必要があります。 

ヨーロッパ人が暑さに慣れていないと言えば、人間の体質的な問題だけでなく、感覚的な事も重要だと痛感します。例えこれ程の猛暑ではなくとも、イギリスでは少しでも気温が上がると(三月とかでも)、ほぼ裸同然の無防備な格好で歩く人が続出し、見苦しいだけでなく暑さに対する認識の甘さに呆れ返ります。

ところで、イギリスは本来ヨーロッパで最も雨の多い国の一つなのに、天候にそぐわないオープンカーの所有率は世界一だそうです。そして、何故かオープンカーのドライバーはハゲが多い。こんな強い日差しの下でオープンカーで地肌丸出しでは、暑さの脳みそへの直撃が心配で、せめて帽子を被って!と見ていて不安になります。

この夏のヨーロッパは、猛暑と共に雨不足に寄る干ばつも非常に深刻です。イギリスでは今の所熱波はせいぜい三日程度しか続かないので、暑さ自体はヨーロッパ大陸に比べれば随分マシですが、干ばつは同様に大問題です。多くの穀物が凶作となり、今後の食糧不足と高騰は回避出来そうもありません。今年は西洋で最も重要な作物の小麦がまるで駄目な上、牧草が育たなかった為に牛乳と牛肉等も不足するだろうと言われています。 

当然生活水も不足し、その内水道が止まり配給制になるのではとドキドキしました。貯水湖の水位は記録的に低く、通常並みに満たす為には二、三週間は雨が降り続けなければならないはず。それなのに、あちこちで老朽化した水道管が破裂して水が地上に吹き出し、大量に無駄にしているお粗末さ。 

そして極度な乾燥の為、ヨーロッパ中で火災が多発しています。私が住んでいる場所では、一時は湿度が21%を記録し、砂漠かよ…と感じました。実際に夜中、喉がイガイガする乾きで目を覚ました事も。

イギリス南部では、結局二か月間ほとんど雨が降りませんでした。因みに、イギリスで水不足になっているのは、イングランドの大半を占める南・東・中部で、こんな時でも北西部やハイランド(スコットランド西側高地)では、対照的にほぼ毎日雨が降っていました。

イギリスでこの夏の最高気温が予測されていた日、英国政府は国民のスマホに警報を送りました。政府警報をスマホで受け取るのは、私は初めてでした。火災を起こし易いBBQや花火、焚火等を禁止する御触れでしたが、多くの国民が「警報を送る程深刻な事か?」「大袈裟過ぎる」とSNSで大変不評だったそうです。P太も「そんなのニュースで十分だ。政府警報なんて核ミサイルが飛んで来る程深刻な場合に送るもんだ」と怒っていましたが、「だって馬鹿はニュース見ないじゃんよ…」と私とは全く意見が合いませんでした。

イギリス人の花火好き&BBQ好きは尋常ではなく、また実際にこの乾燥の中、私の住んでいる町の馬鹿が裏庭で焚火をし、家を10軒近く焼いた火災が起きたばかりだったのだから、政府が警報送り付けて深刻さを実感させる位は当然だと思っています。日本のように地震やら豪雨やら北の国からのミサイルやらでスマホ警報に普段から慣れていれば、返ってウザがらずに真っ当な危機管理が出来るようになる…のかも知れません。

八月末にようやく暑さが落ち着き、空に雲が増えて雨が降り出すようになりました。それと同時に、すっかり今まで見掛けなかったナメ&でんでん軍団が大量に庭に這い出して来て…、一体今まで何処でどうやって生き延びていたんだ。この異様な雨不足は当初七月末までと言われていたのに、遅れに遅れて散々待たされました。最早私に出来る事といえば、逆さてるてる坊主を飾る事ぐらいでした。この夏は概ね暑さで寝苦しく睡眠が浅い事もあり、私は始終イライラして、雨がどんどこ降る夢を何度も見た程です。猛暑&水不足の中でも健気に咲き続けた我が家の庭のバラ達は、今は花数が少なく一時休止的な状態になっています。

ここ数年のこの顕著な気温上昇で、英国式庭園の典型的な植物の幾つかは、今後は消えて行く物も出て来るだろうと言われています。イングリッシュ・ガーデンの御馴染みの植物達は、イギリスで最も育て易いからこそ好まれ多く見掛ける訳で、近い将来それらが失われて行く運命にあり、つまり伝統的な英国式庭園が、これからは姿を変えざるを得ないと言う事です。

義母の家の鉢植えの多くは、この夏の二か月間で水を貰えずに死んでしまいました。足腰が悪く歩くのもままならない義母では、大きなジョウロで水撒きするのは不可能だし、例え我々夫婦が毎週義母宅を訪れても、気温の高い日中は水を上げられないからです。そして、緯度の高いイギリスの夏の日は非常に長いのです。

我が家の庭も、この夏は水の確保と水撒きに一際苦労させられました。毎日水を上げていた鉢植えでさえ、小さな幾つかは暑さに耐え切れずに枯れました。周囲の緑地は既にすっかり茶けていますが、うちの裏庭の芝も陽当たりの良い部分は瀕死寸前です。今後は、同様の夏の暑さと乾燥に対応出来る庭造りを工夫しなくてはと思います。




2026/08/29

風車の丘の村フィンチングフィールド 1

 昨年の今の季節、夫婦でエセックス州の古い市場町Thaxted サクステッドを訪れた後は、この日の目的はエセックスの田舎を楽しむ事だったので、やはり昔ながらの家並みを残す雰囲気の良い村と言われている、その近くのFinchingfield フィンチングフィールドを訪れました。

イギリスに良くある、村の中心に広々とした緑地(イベント会場やクリケット場になっている場合が多い)が設けられた村ですが、其処に車で入って来て少しギョッとしました。凄いオートバイ&ライダーの数!

この日は丁度何かバイクの集会でも開催されているのかと思いきや、それらしきサインも全く見当たらず、単にバイカーにとって人気の場所なのだと思います。

しかし、もし毎週末この状態だとしたら、住民は嫌でしょうね。村の規模を考えたら、完全に「オーバー・ツーリズム」です。しかもバイク野郎は大抵騒音が大きければ大きい程カッコイイと思っていますし、排ガスも臭いと来たもんだ。(…しかしヴェスパは好き)  

自動車も多く停まっていますが、住民の自家用車も多いようです。 どちらにせよ、イギリスでは当たり前の、歴史的な街の中心部でも路上駐車が許されていたり、景観の要のド真ん中に駐車場が設けられている光景は、ドイツを始め中欧の人にとっては驚きなのだそうです。イギリスは伝統的に景観保護の進んだ国なのに、そう言う部分は全く気にしないのが意外です。

ここは観光に人気の村なのは確かなようで、規模の割に飲食店が多くありました。丘に囲まれた立地で、一番高い場所に教会が立ち、古風な風車も見え、一番低い場所には中心の緑地と小川が流れ込む池があり、レンガ造りの橋が架かっている所も絵になります。

また、この村にも15世紀築の木組みのギルドホールが残り、外壁はやはりパージェティング。生憎公道に面した側は、逆光で装飾が良く見えません。 

ギルドホールの入り口は、こんな建物の下を潜った反対側にあります。

反対側は陽当たりが良く、パージェティングが良く観察出来ます。やたら横に長い建物で、かつては教会付属の男子学校も兼ねていたそうです。

ギルドホールの内部は、博物館として一般公開されています。小規模ですが、村の歴史や昔の暮らしの様子が、デジタル資料をふんだんに使用して詳しく説明されています。 

サンプラーの制作は、 ヴィクトリア時代の10,11歳頃の女児にとって、刺繍の技術と文字の読み書きを習う重要な学習教材だったとか。 

この地は古代から居住区となっていたようで、出土品も色々と展示されています。 

この丸い石は、村の民家の庭から出土した古代ローマ時代の石臼。これを発見した時は、きっと砲弾だと思って焦ったでしょうね。直径は25㎝位で、差し込んだ木の棒(復元品)をガチャガチャ回して穀物を粉にします。

こんな麦藁細工が、かつてはここの伝統工芸だったそうです。やはりイギリスにも昔は存在したんだな、フォークロアってやつが。

この村には、「101匹わんちゃん」の作者で女優、実業家、劇作家でもあったDodie Smithドディー・スミスが住んでいた事があるそうです。

ギルドホールの二階は図書館や集会場になっていて、こんな半端なく古い建物なのに、エレベーターもあり非常にモダンに改装されているのが印象的でした。

ギルドホールの直ぐ裏には、教区教会と墓地があります。搭の段が、微妙にズレているのが気になる。 

正式名は「St John the Baptist Church 洗礼者聖ヨハネ教会」と言い、12世紀に建立されました。搭や身廊には、ほぼ築造時のままの部分が残っています。 

西側玄関のアーチが典型的な「ノルマン・ジグザグ」で、ノルマン様式の教会の特徴を良く伝えています。

サクステッド教会程は多くはありませんが、外壁には好物の、造形が原始的過ぎてキモ怖面白い中世の石像が幾つか見られます。 

塔のかなり高い部分にあったので、肉眼では確認出来ませんでしたが、写真で拡大してみて初めて知った事には、鼻の穴の余りのデカさに驚愕(爆)。

やはり裕福な地域だったらしく、村の規模にしては立派な教会です。

内部には、例の麦藁細工の大作が飾られていました。

これは16世紀の貴族の夫婦の墓所で、パーベック産大理石の棺の蓋に嵌め込まれた銅板墓標の像は、当時の服装の貴重な資料となっているそうです。面白い事に、1.5ポンドを払うとこの銅板墓標を擦る事が出来ます。何故わざわざ有料なのか、そんなに摩りたい人が存在するのか、もしかしたら日本の撫で牛のように御利益があると信じられているのかは謎ですが、無暗に触らせないで劣化を防ぐ策である事は確かだと思います。 この墓所は先に妻が亡くなった際に設けられ、後に夫が亡くなると一緒に納められるはずでしたが、その後夫は再婚した為、片側が実際に埋まる事は決してなかったと記されています。

昔は日本でも夫婦一組が墓石の単位だった場合が多く、うちの先祖の墓地には、夫と前妻&後妻の三人分の戒名が一つの墓石に記されているのが幾つかあり、それも何だかなぁと子供心にも思いながら眺めていました。

内部にも、キモ怖面白い彫像が幾つか見られました。 単なる装飾ではなく、あくまでアーチの梁を支えるブラケットとして機能しているようです。

教会に置かれた説明書には、更にキモ怖面白い彫像の見所が記されているんですけど、場所は明記されておらず(自分で探せと)、多くは小さいので見付けるのが大変です。

このイラストからして、味が滲み出ています。左下は、犬が犬を抱えている所ではなく、司祭がブタを抱えている様子と説明されています。誤解を招く表現なのは、実際にそのように作られているからか、絵のレベルなのかは、実物を発見出来なかったの為に分かりません。

念の為、私が掲載しないだけで、やはり何処の教会にも、心が洗われるような神々しい美しさの装飾も、ちゃんとあるんですよ…。 


 

 

 

2026/08/28

ミニチュアのアール・デコ風ティーセット

 

この金属製ティーセットのミニチュアは、イギリスでは何度か見掛けた事のある物で、昨年の秋にハンガーフォードのアンティーク・モールでも見掛けました。そして、もし持っていたらドールの撮影に使えるかもと思い付きました。が、その時は購入はしませんでした。

すると、その丁度翌日に山小屋風チャリティショップで、偶然同じ物が売られていました。価格は2ポンドで、アンティーク・モールの1/4程の値段でした。

店の人の話では、「これ可愛いよね。今朝寄付されたばかりなんだ」との事でした。他のお客さんも、「それ可愛いわね」と言っていました。

ティーポット、ホットウォーター・ジャグ、クリーマー、シュガーポット、トレイの五点セット。 蓋は開かず、ミニチュアとしての面白みはありませんが、形は細かく作られて、アール・デコ時代のデザインの特徴が良く表現されています。 

実際にアール・デコ時代に製造された物ではなさそうですが、茶器の形は典型的なデコのデザインです。実際にこんなデコ時代のティーセットの現物を今でも時折見掛け、大抵はハンドルが黒いベイクライト製になっています。

ベイクライトは熱に強い為、相当熱くなるはずの金属製ポットのハンドルとして使用するのには持って来いだし、尚且つ当時としては最先端の持て囃された素材だったのだと想像します。 

素材は、多分ソリッドのピューター製。ソリッドとは中が空洞ではないと言う意味で、その為小ささの割に驚く程ずっしり重く出来ています。重さ故にドールに持たせる事は不可能で、専らテーブルに置くか棚の飾りです。四つ脚のテーブルの上でさえ、乗せるとグラグラと安定が悪い程です。  

本来は一体何の為に作られたのか、用途は何なのか今だ分かりません。単なる置物か、はたまたペーパー・ウェイトか。重さは十分ある為、もし本体に切込みが入っていたら、テーブル・カード(座席表やメニュー)・スタンドとしては役に立ちそうですが、それらしき溝も見当たりません。

ググって見たら、1980年代の製造で、銀メッキ製のレア物だと表示されていました。しかしEstyEbayで幾つも売られている事から、レアではないとは思います。 

このミニチュアに合わせて、ドール用のデコ風のローウェストのワンピースを作りました。 

形自体は凄くシンプルですが、優雅なビンテージのレースをふんだんに使っているので(毎度ながら単に中古の方が安上がりなだけ)、思いの外ドレッシーに仕上がったように思います。

ただし、このヨガ(MTM)バービーの二の腕は、ジョイントの為に一般的なバービーのボディより少し太めに出来ているようで(その方が返ってバランス良くは見えますが)、フレンチ・スリーブの袖口が少しきつめでした。どちらにせよ袖口は広めの方が着用させ易いので、型紙を修正しておきました。 

モデルは、昨年カスタム&リぺしたバービーさん。バタ臭い顔のバービーにアール・デコの格好をさせると、たちまちキャツビーやアガサ・クリスティー、ダウントン・アビーの世界だな…と我ながら思います。リカちゃんやモモコでは、こうは感じません。

本当はブリムの狭いフェルト製のクロシュ・ハットを被ると、いかにもデコらしく見えるはずなのですが、作るのが面倒なのでそれっぽいボンネットで誤魔化しています。 


また長~いネックレスも、アール・デコ時代のファッションの定番。 

ヨガ・バービーの肘の関節は硬めな為、こんなに重いミニチュア・ポットでも抱える事は出来ます。 

ただし両腕で抱えるだけで、片手で持つのはやはり無理そう。多分これを持つ事が出来る可動式ボディは、ヨガ・バービーだけなのではと思います。

その割に、踵の関節だけはやたら緩く出来ているヨガ・バービー。多分足の甲自体が普通のバービーより更に小さい程で、つまり人間の比率で言うと纏足並みな為、立たせる安定性は良くありません。

今回はテーブルや椅子の背景道具で支えて貰い、立たせるのを助けられています。 

このバービーの髪型を変えて、やはり私にとってはモデルとして使い勝手が断然良くなりました。このウェイビーなボブなら、デコも50’sも現代モードも着こなせます。もし元のストレート&サイドパート&ワンレンのままだったら、いかにも今時のバービーらしい格好しか似合わず、ぶっちゃけ私の好みに合わなかったと思います。