2024/09/20

「トラつば」な着物

 

東京に住んでいた頃、出勤前にNHKの朝の連続ドラマ小説は大抵見ていました。今も日本に滞在する際は、姉の家で朝の連ドラを見ています。やたら主人公がでっかい独り言を言い、何かと行き付けの喫茶店に主要キャラ全員が集まって秘密を打ち明け(何故そんなわざわざ一番リスクの高い場所で…)、キャリアを目指しているはずの主人公が結婚すると何の計画&迷いも無く直ちに妊娠・出産して大喜びだったり、学芸会並みの演技や安直な演出が健在なのは日本の朝ドラならではで、正直久々に見ると慣れるのにしばし時間が掛かる世界です。

中には本当にイライラし過ぎる付いて行けない内容で、実際見続けられない物もありました。しかし現在放送中の「虎に翼」、略して「トラつば」は、自分的にはかなり楽しみに見ていました。OPの米津の歌と映像も良き。

最初は主人公寅子を演じる伊藤沙莉の声が、「朝ドラの主人公にしちゃ随分渋い声だなー」と気になっていましたが、今となっては甲高い可愛い声でペタ~っと喋る主役よりも返って現実的で、当時の女性としては珍しく物事をはっきりズバズバ言うキャラクターに相応しく、力強くて気に入っています。

寅子は社会人になる前は和装でしたが、いつも黄色の着物に赤い半襟をしていた組み合わせが、時代を切り開く主人公らしい知性と個性が感じられるピリッとした着こなしで印象的でした。一方で親友で義理の姉のとなる花江ちゃん(この女優さん、「全裸監督」で黒木香を演じていたと毎回姉が言う)は専らピンクのふわふわしたイメージの着物で、そんな服装のイメージの差別化の設定も面白く感じました。

そんな寅子の和服の着こなしを、リカちゃんで再現してみたいと思いました。

本当は寅子の着物は、いかにも昭和初期のビンテージらしい柄が魅力だったのですが、黄色地の着物の古裂なんて持ち合わせがあるはずもなく、そもそも探しても見つからなさそうです。黄八丈でもない限り、実際黄色の着物自体が結構珍しいのじゃないでしょうか。
 

この黄色地の小花(チューリップ)プリント生地は、イギリスかアメリカのパッチワーク用なのですが、柄が縦の一方向だけの上に、二部式にするのにさえ縦幅が足りなくて焦りました。しかし眩しい黄色よりは芥子に近い位渋めの色の方が未だイメージに近く、私の持っている布の中ではこれが一番合うと思ったのです。

帯は、またしても会津木綿の使い回しです。寅子は通学には着物に臙脂か海老茶の袴を着用していましたが、袴を縫うのは私には難し過ぎてパス。袴姿自体は好きなので、いつかは挑戦してみたいとは思っています

寅子の髪型は、女学生時代は前髪付き三つ編みでしたが、法学校時代は前髪無しの斜め分けになりました。髪は後ろで長いのを束ねて纏めているのかと思いきや、実は断髪に近い短さで、裾を外側に巻き上げていた(多分電気ゴテで)ようです。朝に巻く時間がなかったのか、ストレートのままで登校している場面もありました。

法学校を卒業し法律事務所で働き始めると、寅子は和装から洋装に変えます。それでも戦前は、荷物をバッグではなく風呂敷包みで持ち歩いていました。バッグより遥かに不便だと思いますが、当時の女性は慣れていたのでしょうね。こんなラフな持ち方ではなく、結び目が上になるよう丁寧に手で押さえていたと思います。

前半を部分的にしか観ていないものの(福島の実家に滞在中は見れなかった)、このドラマで印象に残るシーンは多々あります。寅子の同期・男装の麗人よねさんから、同じく同期の轟さんが寅子の初恋の相手・花岡さんを実は愛していた事を見抜かれるのも、その一つ。しかも花岡さんの亡くなった後で、凄くサラッと暴露されますが、それまで轟さんがゲイらしき傾向があった描写は多分無く、更に連ドラに同性愛者が登場するのはこれが初めてだとか??で、結構衝撃的なシーンだったそうです。

今年の日本に滞在中は、数年前にNHKで放送された、光源氏が現代社会にタイムスリップ(?)するドラマ「いいね! 光源氏くん」も見ました。主人公は伊藤沙莉だしテーマは「光る君」だし、今年見てこそ面白いドラマです(光くんが子供から「おじゃる丸」呼ばわりされるのが何とも…w)。また昨年アマプラで見た、現代人が源氏物語の世界にスリップする映画「十二単を着た悪魔」でも、伊藤沙莉が好演しています。

イギリスでもNHKの連ドラを無料で観られない事はないのかも知れませんが(違法配信で?)、こう言うドラマはタイムリーに見てこそが大切だから、そこまでして追い掛けようとは思わず、ネットであらすじの展開を追うだけで十分です。9月なので、トラつばもそろそろクライマックスですね。寂しいような、新しい連ドラも楽しみのような、毎年そんな秋の始まりの繰り返しも日本ならではだと思います。




2024/09/18

クリア・ラインストーンのブローチ

 

フリマの中古アクセサリーが一つどれでも1ポンドのストールでは、このブローチも買いました。

幅は4㎝位で、無色透明のラインストーンが並んだだけの、正直何の特徴もないブローチです。石の大きさは二種類で、全体的に見ると全くの長方形ではなく、中央が縊れたようなリボンのような形になっています。

しかも、一方の端の三つは並びがガタガタ。台座が歪んじゃったのか、台座の幅に対して大きさの合わない石を、無理矢理みっちみちに並べているからのようです。

しかし、ラインストーンの輝きや透明感は抜群です。そして一応石は、全て爪留めになっています。ビンテージの爪留めではない貼り付けの石のジュエリーは、50年代以上に良く見られます。貼り付けの場合、当時は接着剤の質が悪かったのか、寄り石の欠ける事が多いようで、また接着剤が醜くはみ出している事もあります。やはり爪止めの方が、状態良く残っている場合が多く、見た目も映えると思います。




2024/09/17

秋月夜

今日の中秋の名月に因んで、突然ドールに着物を着せて撮影したくなりました。と、思い立って実行したのは昨日。ドールの撮影は面倒なので、私の場合は予め計画して色々と用意してからでないと大変なのですが、何とか前日の午前中1時間程度でテキトウに済ませました。

着物は新たに縫った物ではなく、勿論前に製作した物の使い回しです。

最初はmomoko DOLLをモデルにと考えていましたが、27㎝用の着物&浴衣は大方姉に送ってしまい、お月見に相応しいデザインが一着も残っていなかった為、22㎝のリカちゃんの出番となりました。

この着物は、以前キャッスル製の紫髪のリカちゃん用に縫いました。その時は髪色に合わせて全体的に紫で纏めていましたが、今回は帯をモノクロに替えて渋めに引き締めてみました。

リカちゃんの中でも特に幼く見える、この金髪三つ編みのリカちゃんに、渋い和服の着こなしをさせるのは初めてですが、意外と可笑しくなくしっくり来るようです。

このリカちゃんには、今までピュアニーモ・フレクションSの可動式ボディを使用して来ましたが、今回はオビツ22㎝に替えました。和装の場合、可動式ボディに替えなくても特に不便はないのですが、正座出来る点はマルです。

日本はまだまだとんでもなく暑そうで、秋の気配を感じるのさえ難しいのかも知れませんね。しかし実はイギリスは、既に夏服で過ごすには薄ら寒い程で、衣替えを前倒しにしたい位の涼しさなのです。朝夕なんて気温3度になる事もあるから、ダウンコートを着ている人も見掛けるし。40度を記録する暑さも困りますが、今年のイギリスの夏は、30度を超える日が本当に数える程しかなかったなあ…。エアコンどころか扇風機もほとんど使わず、素足でサンダルを履く機会もほとんどありませんでした。

改めて日本とイギリスの夏の差に愕然としますが、今宵はどちらでも美しい月夜を楽しめますように。

追記:イギリスの中秋の名月は、大変珍しく部分月食と重なりました。中秋の名月は英語では、ネイティブ・アメリカンの習慣から農事暦で「Harvest Moon 収穫の月」と呼ばれるそうです。




2024/09/15

オープン・バックの青いカボションのブローチ

 


パール・ホワイトのエナメル花ブローチを買った、フリマで中古アクセサリーをどっさり売るストールでは、このブローチも買いました。元は縁のフェイク・パールが幾つか無くなっていて、普通は石の欠けているビンテージ・ジュエリーに1ポンドは払わないのですが、家に補充があり修復可能だと見込んで買いました。何より、中央のロイヤル・ブルー色のカボションが印象的かつ神秘的で、見逃すのには惜しい美しさだったからです。

狙った通り、家にあった穴無しフェイク・パールのビーズは、大きさも色もぴったりで補充出来ました。ついでに、パール塗装の剥げが酷かったビーズも全部外し、新品に交換しました。オリジナルのパールは、一個だけ残っています。すると、全体が見違えるように蘇り、中央のカボションも益々映えて見えます。

直径は3.5㎝で、ブローチとしては大きくありませんが、その割にずっしり重みはあります。中央の青いカボションは、直径2㎝強。このカボションがオープン・バックになっているので、深い色ながら透明感が際立っています。

裏面から光を当てると、こんな感じ。ブローチなので、衣類等に着けると実際には裏面から光が入る事はないのですが、全体的にも有りそうで中々無いデザインで美しい、使い勝手の良さそうなブローチです。

 

 

 


2024/09/13

momoko DOLL「うんざりな日々」自分用

昨年姉の家でmomoko DOLLで遊んでいた時、「うんざりな日々(姉は『響ちゃん』と言う名前を勝手に付けている)」が、私にとって使い勝手がとても良く魅力的なドールである事に気付きました。そこで今年の帰国時には、私用にもう一体、ネット・オークションでマッパ状態のを落札して貰いました。

元々モモコの中でもブルネットのボブヘアーは、日本の普通の女の子らしくて特に好きなのですが、この子はブルネットにブロンドのメッシュが入っていて、髪を耳にかき上げて出している所が独特です。色白肌で、唇はぷるぷるの桃色。瞳の周囲にはピンクのアイシャドーがほんのりと入っていて、幼さの残る甘い顔立ちになっています。

ところがこのモモコは、元はパンク・ロックっぽい服装で発売されました。本体自体はこんなに可愛く使い易いドールなのに、姉に言わせると、ロック系のハードな格好で販売されたモモコは人気がないそうで、この「うんざりな日々」や「シガレットチョコ」は沢山ネットに流出しているそうです。ネットで多く出回っているからって、人気がないとは限らないと思いますが、中古を比較的手に入れ易いのは確かなようです。

デフォルト服のようなロック系、ストリート・カジュアルは勿論、ロマンティックやナチュラルな可愛いスタイルも難無く着こなしそう。

姉の家ではアール・デコ風のローウェストのドレスを着せてみましたが、これも違和感無く似合ってました。

何より、絶対に着物が似合うのに違いない!のが、私にとっては魅力的でした。

が、着物が着せたくて溜まらないのをグッと押さえ、「一月の着物強化月間のお楽しみ」として保留にして、まず今回は和風ドレスを作って着せてみました。

和ロリと言うよりは、アニメやゲームの和風キャラクターっぽい。

どうもエセ巫女コスプレとか、「モモコはアイドル?」展のV-tuber狐っ娘アイドルが頭にあって、一瞬キツネ耳や尻尾を付けようかとも考えました。

実際にあの展示を見に行った姉の話に寄れば、「可愛いは正義♪」の歌が耳に焼き付いて離れなくなるとか()

狩衣や水干のように肩が開いて紐を通した袖は、一度挑戦してみたいと思っていました。

この麻の葉に桜紋の和柄生地は、数年前に色違いで三種類買った物。使い易くて何度もドール服に利用したと思っていましたが、この紺地だけは意外にも未だ一度も切り刻んでいない事に気付きました。製作中に思いましたが、藍染の麻の葉柄って、少しモンペを思い出させて田舎臭いような(笑)。

ドレスの下に履かせたパニエも、今回合わせて作りました。ドレスのスカート部分が十分膨らむよう、また重ね着してもウェストがもたつかないように一応工夫して作ったので、他の服にも色々活用出来るはずです。そしてスカートとしてパニエ単独でも着用出来るよう、透けない造りにしています。

フットウェアは、アナ雪人形のブーツ(…イギリスの中古人形として一番手に入り易いアナ雪、何かと役に立つw)。本来モモコには大き過ぎるし、ヒールも恐ろしく高いのですが、これ位ゴツい方が、文字通り立たせた時にバランスが良く、全体的な見た目も悪くないと思うのです。

ヘッドドレスは、少しだけ巫女さんの額飾りをイメージし、大げさな位にジャラジャラと目立つようにしてみました。あれは正式には「天冠」と呼ぶそうで、ついでにお雛様の冠や、死者の額に着ける白い三角形の布(日本の幽霊のシンボル)も天冠の一種だそうです。

うん、和服は間違いなく似合いそうですね。思いっ切り大人っぽい恰好よりは、若々しいティーンらしい雰囲気の方が決まるモモコのように見えます。

今思うに、「うんざりな日々」ってネガティブなデザイン名と反社的な(爆)イメージが、やはりちょっと損しているのかも知れません。しかしファッション・ドール自体としては、期待通りに創作意欲を掻き立ててくれ、また着こなしてくれる優秀なモデルさんです。

 

 

 


2024/09/12

ビンテージ・レースの付け襟

 

 一時帰国から月に英国に戻って来て以来、八月の姉の誕生日に向けて、プレゼント用のビンテージ・ジュエリーを集め始めました。幾つかのアンティーク・モールを訪ね、アンティーク・フェアへも行き、フリマでも欠かさず探したつもりでしたが、中々集まりませんでした。やはり古物との出会いは運次第と言うのもありますが、長らく姉へビンテージ・ジュエリーを贈り続けている為、姉の好みのタイプは既に贈り尽くしてしまい、今まで贈った事のない珍しいデザインには出会わなくなったと言うのもあります。

そこで今回はプレゼントのメインを、ビンテージ・ジュエリーではなくビンテージのレースの付け襟にしてみました。日本では付け襟が結構流行っているようで、一般衣料店でもしょっちゅう見掛けましたし、姉もイギリスのビンテージ・レースなら嬉しいと言っていました。買ったのは、アンティークの町で知られたPetworth ペットワースのアンティーク・モール

状態が良い分そう古くは見えないし、実際もしかしたら余り古い物ではないかも知れませんが、この場合実用出来るかどうかがまず重要です。


着用すると、上品な豪華さは申し分ない程出ます。それでいて、まるでコスプレのように仰々し過ぎると言うことはありません。合わせる服は、やはりレースが映える濃い地色の、クラシックなトップかワンピースがベスト。

留め具類は付いていないので、前部分をブローチで留めるか、または軽く服に縫い付けます。留めるブローチは、やはりビンテージだと映えます。部分的に薄くシミがあったので、一応手洗いしてから送りました。