2026/08/04

20世紀築のジョージアン様式の館ヒントン・アンプナー 1



昨年の今頃、ハンプシャー州のNT(ナショナルトラスト)のお屋敷&庭園「Hinton Ampner ヒントン・アンプナー」へ、夫婦で初めて出掛けました。ここの手前の道路は今まで何回も通過し(主にNTの別のお屋敷&庭園「Mottisfornt Abbey モティスフォント・アビー」へ行く途中)、更にNT会員ならいつでも来れた訳ですが、例に寄って豪華絢爛屋敷に余り惹かれなかった為に、今まで訪れたようと思った事はありませんでした。

考えていたよりもずっと人気の場所で、また夏休み中だった事もあり混んでいて、予備の更に予備みたいな入り口から相当離れた駐車場に通されました。ここはサウスダウンズ国立公園の中で、風光明媚な丘陵地帯の中に在り、敷地内に先史時代の遺跡が点在し、青銅器時代の古墳も幾つか発見されています。

この館の立地自体の歴史も相当古く、11世紀の土地台帳デュームズデイ・ブックにも記載され、ノルマン時代には修道院に属する土地だったのではと言われています。16世紀のチューダー時代には荘園館が建てられ、19世紀にDutton family ダットン家の所有となりました。その19世紀には、ここで怪奇現象が目撃されたと記録が残っていますが、イギリスの古い屋敷なら、そりゃ幽霊話の残っていない方が珍しいのではとさえ思います。


1930年代に、最後の当主Ralph Dutton ラルフ・ダットン卿に寄って新ジョージアン様式に改装されました。1930年代と言えばアール・デコ様式が持て囃された時代でしたが、一方ジョージアン様式は18世紀後半から19世紀中頃の流行。どうもダットン卿は、古典美術品の収集と18世紀的な内装を愛する懐古主義者だったようです。

ダットン卿は生涯独身で、収集では特にイタリア絵画に熱心でした。現在の日本の独身男性であれば、まずアニメやゲーム、アイドル等のヲタクに走りそうな物ですが、昔の西洋の上流階級の独身男にとっては、兎角美術品収集が推し活の筆頭だったようです(…比較する事自体間違っているか)。いや、返って収集に夢中になり過ぎた為、結婚に興味を持てなかったのかも知れません。

何故このギロチン夫婦の銅像が飾ってあるのかと言えば、ダットン卿がフランス好きだったからのようです。彼の寝室には、お気に入りのベルサイユ宮殿の鳥観図が飾られています。返って、像が乗っている大理石のテーブルが見事で目を引きます。

こちらのテーブルは脚部分まで装飾が凝っていて、センスは確かだったようだと感じました。

また、ダットン卿は「貴石好き」だったようです。

館内では、見事な石象嵌のテーブルやチェスト、キャビネットを見る事が出来ます。 

こちらの石象嵌のサイドテーブルは、ラピスラズリの鮮やかな青は、特に目立ちます。 


ブルー・ジョン石のゴブレットは、今では滅多に採掘されなくなった、貴重な大きさの石塊から出来ています。左は、スタッフさんが内側から懐中電灯で照らしてくれた所。 

館は収集品と共に、ダットン卿の死後1985年にNTに託されたそうですが、もしかしたら1980年代でもこんな内装で暮らしていたのか…?  だとしたら、本当に映画や物語の世界で、筋金入りの懐古主義者です。

インテリアのハイライトの一つとも言えるのが、この食堂大広間。 

招待客を必ず通し数時間を過ごさせるこの部屋は、特に調度や内装に力を入れたはずです。 

見事なイタリア・ルネッサンス風の天井画は、Elizabeth Biddulphと言う王室油彩画協会員のアイルランド人女性画家に寄って修復されたそうです。完璧な腕前なのに、彼女についてはほとんど分かっていないとか。

この館は、実は1960年に火災に遭っています。三年後に元通りに復興されましたが、貴重な無二の収集品や夥しい数の蔵書は消失したらそれまでなので、使用人総出で懸命に運び出したそうです。

しかし今考えると、従業員の安全性を無視して火災の中で運搬作業をさせるなど、家主としては非情で失格…。 

廊下にも、ラピスラズリの鮮やかさが目を引く石象嵌のテーブルが。 

ここは厨房脇のパントリーで、この敷地で発掘された興味深い考古学品が展示されています。

この脇に、ビンテージの可愛いエプロンが掛けてありました。この館で唯一、一般的な1960年らしさが感じられるアイテムでした。


 

 

 

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