昨年の晩秋に夫婦で一泊したPeak District ピーク地方国立公園内の中心地Castleton キャッスルトンで、宿の朝食を済ませた後のチェックアウトまでの時間、朝の人少ない村を散歩しました。
前からこの村に宿泊してみたいと思っていたのは、この朝の景色を眺めたかったからでもあります。寒さは半端ありませんが、天気はこの日も清々しい快晴のお出掛け日和。
しかし、こんな山間の小さな村で冬間近の観光オフ・シーズンの午前中でさえ、同じように散歩する観光客を結構見掛けました。
キャッスルトンは 山間の不便な場所にも関わらず、Domesday Book(ウィリアム征服王に寄る11世紀の世界最古の土地台帳)にも記載されている程の歴史の長い村で、かつては鉛鉱山で栄えたそうです。
キャッスルトンの家並み自体が魅力的なのは、石造りの家が多いから。この石は、この地方で多く産出される石灰岩のようです。つまりこの一帯は石灰岩に覆われたカルスト台地で、実際キャッスルトンには観光鍾乳洞が幾つかある為(入洞料が高過ぎて我々には無縁…)人気なのです。
村の中心を清流が流れているのも、キャッスルトンの魅力の一つ。
小川沿いには、家の模型が並べられていました。
住民が寄付したのか、イギリスらしい陶器の家の置物もあれば…、
…シルヴァニアの家っぽい、単なる玩具も混じっているのが微笑ましい。
そして、小川沿いでは野鳥を見掛けました。Song Thrush (ツグミの一種)ではないかと思います。赤い実と野鳥は絵になります。
実は、真上にもう一羽黒っぽい鳥が居ました。
思いっ切りカメラ目線。こちらもツグミの仲間のようで、もしかしたらFieldfare ノハラツグミ、またはBlackbird クロウタドリの幼鳥??
凍り付くような水温の川のはずなのに、鴨等の水鳥達も沢山泳いでいました。
村の南の古城Peveril Castleの立つ丘からは、9時過ぎ頃に日の出。
元教会の現コミュニティ・センターの前には、ミルク・レディーの顔嵌め。その後ろのコンテナの中には、イギリスで初めて見た牛乳の自販機が。
キャッスルトンはHope Valley ホープ谷と言う谷間に在り、日本人にしてみれば最早盆地と呼ぶ方がしっくり来る広さかも知れません。
明け方には丘の中腹に掛かっていた煙の層が、丘の上に飛行機雲のように帯状に伸びています。そして下界では、新たに煙の層を作っています。
長閑な眺めとは裏腹にここは本当に煙く、返って街よりも空気が汚い程です。化石燃料じゃないから地球に優しいとでも思っているのかも知れませんが、めっちゃ人間には厳しいんですよ。
もっとも、ここは当然都市ガスは通っていないだろうし、電気代だけでこの寒さを凌ぐには高く付き過ぎるので(イギリスの光熱費の値上がりは凄まじい)、暖房としては薪が返って手軽で安上がりで仕方ないのかも。
山肌が赤く見えるのは、羊歯かエリカが紅葉しているように見えます。
朝のキャッスルトンの最大の目的が、このMam Tor マム・トアを眺める事でした。村のやや北西に聳える独特な姿が目を引く丘で、ここを村から眺める、または写真を撮るのなら朝日の差す午前中がベスト。…と言う事実を、普段旅の予定は私に任せっきりのP太は、初めて実感して感動していました。いや、ちったあ自分で調べろや。
マム・トアが少し変わった形の丘なのは、頂上に鉄器時代のhillfort 丘砦、つまり要塞遺跡が在り、古代から既に人の手が加わっている為です。
また、マム・トアとは古英語で「母なる丘」の意味で、山崩れを繰り返し大量の「岩の子供」を産む事から名付けられました。その山崩れでえぐれたように切り立つ崖になった部分も、丘を忘れ難い姿に見せています。
こんな風光明媚な場所なのに、ピーク地方の訪問者は質が悪い事で知られているようです。私もそう実感しましたし、コロナ渦では都市封鎖中なのにも関わらず社会的距離感を丸無視して混み過ぎているとか、路上駐車が多過ぎて道路(正にここの写真だった)を塞ぎ通行を大きく妨害している等、度々ニュースで悪評を聞きました。そもそもこの道路の駐車は有料だったはずなのに、料金箱が全て破壊されて支払い不可能なのです! だからこそ、再び訪れるなら観光客の少ない季節に限ると思っていました。
マム・トアの南、村の東にはWinnats Passウィナッツ峠があり、恐らくイングランドで最もスリリングな自動車道の一つだと思います。元々は村へ通じる主要道路はマム・トアの真下に通っていましたが、度々崖崩れを起こして通行止めになる為、近年この岩山を削って新しい道路を通したそうです。しかしこの峠とて、豪雨時や冬期の凍結時には通行禁止になる為、真冬にキャッスルトンを訪れるのは難しいかも知れません。
村のアイコン的な老舗旅籠の魅力、御伽噺のようなクリスマスのイルミネーション、そして理想的な朝の風景も相まって、念願叶ってのキャッスルトン宿泊は、期待以上に収穫の多い素晴らしい体験となりました。
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