昨年の晩秋にP太のマンチェスター出張に同行し、翌日はPeak District ピーク地方国立公園に一泊し観光をしようとP太が提案した時、国立公園内の宿泊地はCastleton キャッスルトン(※キャッストンとも日本語表記される)にしたいと希望を言いました。キャッスルトンはピーク地方の観光の中心都市(村)で、訪れるのはこれで三回目になります。最初に訪れた時からこの村に魅了され、一度は宿泊してみたいと思っていました。が、人気があり過ぎて、気候の良い季節は宿泊施設どころか駐車場や飲食店を確保するのさえ難しいのです。しかし、観光シーズンから掛け離れた冬間近の平日であれば、キャッスルトンに宿泊すると言う長年の夢が叶うのではないかと思いました。
期待通り、村のド真ん中の評判の良い老舗旅籠を予約する事が出来ました。名前を「Ye Olde Nags Head」と言い、目抜き通りの角に在る、この村のシンボル的な17世紀築の三ツ星ホテル兼パブです。「Ye Olde Nags Head」は年老いた馬の頭と言う意味で、イギリスのパブ名として他でも時々見掛けますが、ここは検索すると筆頭に表示される程有名なようです。
前日のデザイナーズ・ホテルの斬新な内装とは打って変わり、我々が泊まったのはこんな古風な部屋でした。
セントラル・ヒーティングは完備されていますが、それでも不十分な程冷え込むらしく、オイル・ヒーターも置いてありました。
重厚な木製家具は、全てアンティークのようです。
フォークロアな木彫が、この古い建物に良く合っています。
木製のベッド・ヘッドにはガーゴイルのような彫刻があり、もしかしたら元は教会の装飾品だったのでは?とP太。この宿のHPを見ると、四柱の天蓋付きベッドの部屋も存在するようです。
宿の裏側は、村の教区教会になっています(翌朝泊まった部屋の窓から撮影)。
その後ろの丘の上の古城も、部屋の窓から見えます。つまりキャッスル・ビューです。ノルマン時代築のPeveril Castle べブリル城で、最初にキャッスルトンを訪れた時に丘に登って見学しました。
そして教会の隣と言う事は、実は宿泊した部屋の真下が墓地‼ 流石に今まで墓地のこんなに近くで寝た事はなく、夜に何か異変を感じたりして…と結構ワクワクドキドキしましたが、なーんにも感じず熟睡出来ました。きっと「死」に関する事を異様に忌み嫌う中国からの観光客は、この宿には泊まらないだろうね、と夫婦で話しました。
パブが併設されているので、当然夕食は宿内で取りました。
カントリー・スタイルそのものの店内には、やはりクリスマスの装飾はバッチリ映えます。
まるでドラマのセットのようなイギリスの老舗パブの典型的なバー・コーナーも、絵になっています。
ドラフト地ビールも、この通りズラリ。
黒光りする古めかしい太い梁には、ビアマットがびっしり貼られています。ハンガリーの友達のBFがコレクションしているので、手に入る度に送りますが、イギリスでは外食する機会が少ない上に、ビアマットを供給するパブ自体がどんどん稀になって来ました。
まずは、地エールで乾杯。私のは、半パイント(約280ml)グラスです。
メニューは、在り来たりなパブ料理ばかりでした。私は、メインにこの店特製のハンバーガーを注文しました。
どの辺が特製かと言うと、普通はオプションで付けるチーズやカリカリ・ベーコンが予め入っています。家でハンバーグやバーガーを作る時は、塩分や脂質を気にして(歳とるってヤだね…)ベーコンを加えるのは控えますが、そりゃ加えた方が美味しいのに決まっています。
田舎らしい垢抜けない盛り付けの普通の美味しさでしたが、前夜の辛かった夕食、ショボかったブッフェ朝食、質素過ぎる昼食を考えると、この平凡な美味しさにしみじみ幸せと安堵を感じました。
P太は、その日のスペシャル・メニューのラムの脛肉の煮込みを注文しました。ラムがホロホロと崩れる程柔らかく煮込まれて、マッシュ・ポテトも滑らかクリーミーで、グレービーもたっぷりで美味しかったそうです。
私がラムは苦手なもんで、家で全く調理しない為、P太は良く外食でラムを選びます(すまんのう…)。
デザートには、ベイクウェル・プディングに温かいカスタードを添えて、二人で分けました。Bakewell ベイクウェルはこのピーク地方に在る町の名前で、イギリス中のパン屋で見掛けるベイクウェル「タルト」の発祥の地ですが、ベイクウェル「プディング」は珍しいと興味を持ったからです。
実際にはタルトにしか見えませんでしたが(笑)、見た目通り飾り気のない素朴な味わいでした。
翌朝の、部屋の窓からの眺め。これで朝八時過ぎなのですが、南東に小高い丘がある為、この季節のイギリスの他の地域より更に日の出が遅いようです。
一見美しい長閑そのものの風景ですが、実は空気はかなり煙くて長閑ではありません。
薪の暖炉やストーブを使う家が多いらしいからで、丘には煙の層すら掛かっていました。
部屋からパブ部分への階段にも、クリスマスの装飾。
朝食は、数種類から選択出来る仕組みになっていました。
P太は、普通のイングリッシュ・ブレックファースト、ブラック・プディング付き、ベイクド・ビーンズ抜きを注文しました。卵料理は、P太の好きなスクランブル・エッグは選べなかったようで目玉焼きです。
一方私は、選択肢にエッグ・ベネディクトがあったからには、ここぞとばかりに選びました。何せ卵二個、更に卵ソース(オランディーズ・ソース)なんて、普段はコレストロール値を気にして食べられないし、ポーチド・エッグを家で理想的な状態で作り食べるのは意外と難しいものです。
トロットロのポーチド・エッグと、厚切りスモーク・サーモンの組み合わせはやはり堪らん‼
念願のキャッスルトンでの宿泊は、この古風な宿の魅力も勿論大きく、期待以上に価値のある、嬉しい思い出深い一泊となりました。
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