2023/07/26

ノーフォークの宿

 

イースト・アングリアのノーフォーク州は、我が家からは微妙に遠い場所に位置します。ロンドンからそう離れていないのに、交通の便が余り発達していない為、距離の割に移動時間が掛かり、一泊する程ではないけれど、日帰りで行くにはかなりキツイと言った所です。今回帰国前の2月に夫婦でノーフォークを旅行した際は、一番の目的地であるKing’s Lyne キングス・リン自体が相当遠くて不便な場所に在り、また日が短い季節だった為、初めてノーフォーク州内で一泊する事に決めました。予約した宿は、18世紀築の貴族の元カントリー・ハウス。宿泊予約サイトで最高クラスの評価を得ている四つ星ホテルで、普段なら我々には縁が無い宿泊料金です。が、2月の観光の最閑散期だったせいか、破格の割引価格で宿泊する事が出来ました。

この丘の向こうへ1㎞程歩くと、浜辺へ出る立地です。残念ながら、海まで散歩する時間はありませんでした。

実際には陽がどっぷり暮れてから到着したので、最初に目にしたのはこの状態でした。名前を「The Pheasant Hotel」と言い、ノーフォーク州の北部で、蟹で有名なCromer クロマーからそう遠くない場所に在ります。

内部は全面綺麗に改装してある為、言われなくては古いお屋敷だとは気付きません。

そして真新しく改装してある分、本当に完璧なバリアフリー。ここなら、足腰の不自由な義母でも安心して滞在出来そうです。

ヨーロッパの古い宿には、野生動物の剥製の飾られている事が多くありますが、ここのは良く出来た籐で編んだ「剥製風」の鹿の頭部なのが、現代の感覚に合っているしお洒落です。

私達の部屋は、こんな感じでした。これと言って豪華ではないし特徴もありませんが、返って変に凝った気に触る装飾もなく、充分機能的な上に清潔で快適です。

備え付けのヘアドライヤーがダイソン社製の最新式で、使ってみたら髪が一発でサラサラになって脅威! また置き菓子が、国中で見掛ける大量生産のビスケットではなく、地元ベイカリー製のフィナンシェだったのが、イギリスでは特筆に値します。こんな些細な所にも、一流ホテルらしさを感じました。

結構遅い時間に到着したので、すぐにホテル内のレストランに夕食を食べに行きました。

ここのお料理はフレンチを基礎にしているようで、イギリスのパブ等では見掛けない独特なメニューばかりで心が躍りました。前菜は飛ばして、地エールを注文。

私は主菜として、「サーモンのオーブン・ロースト、トマト味のパイ皮、ルメスク・ソース、バルサミコ酢の照り焼き根菜、アーティチョークのピューレ添え」を選びました。最近の盛り付けの流行りのようで、生の豆苗が乗っていますが、イギリス人にも日本人にも受けが悪いようです。

サーモンは勿論焼き加減が的確で、皮がパリッ、中がふんわりジューシー。ルメスクとの組み合わせもピッタリ合い新鮮で、正に人生の中で最高級に美味しいサーモンだと感じました。付け合わせの根菜も余り主張過ぎない良い塩梅に味付けされて、サーモンとの相性がばっちりです。

正直ピューレは、特にアーティチョークらしさは感じられませんでしたが、クリーミーで美味なのは確かでした。

一方P太は、主菜に「H.V. Graves(地元のブランド精肉屋店らしい)の仔羊のランプ肉焼き、山羊のチーズと赤玉ネギのベニエ、そら豆とえんどう豆のフリカッセ(煮込み)、仔羊肉のクロケット、ラべージとミントのペスト添え」を注文。私が仔羊肉が苦手な為に普段家で食べる事がないので、外食では良くラムを注文するP太ですが、こちらも全て凄く美味しかったそうです。今改めて眺めると、手前のオレンジ色のピューレは何だろう??

次にP太は、デザートとして「ジンジャーブレッドのミルフィーユ、ダーク・チョコレートのクリーム、飴掛けオレンジ、オレンジ・ジュレ付き」を注文しました。

ジンジャーブレッドと聞くと、イギリスの子供が好きなクリスマスに出て来る人型クッキーのアレしか思い浮かばず、どうも美味しそうに思えなかったのですが、…想像と全く違う高級感で出て来たー! チョコレートとオレンジの組み合わせは勿論鉄板で、後引く美味しさだったそうです。

私が選んだデザートは、「飴掛け洋梨とホワイト・チョコレート、アール・グレイのカスタード、カカオニブのチュイール添え」でした。運ばれて来た時、正直まるでゴミみたいに投げやりな盛り付けに愕然としましたが…、

…食べてみて、見た目からは全く予想出来ない美味しさに再び愕然としました。噛み応えのある洋梨、香ばしくカリカリのチュイール、濃厚なホワイト・チョコ、滑らかでまろやかなカスタードと、味わい&食感の組み合わせが絶妙で新体験の、感動の美味しさでした。

非常に満足度の高い夕食でしたが、お値段の方もかなり良いので、この二人分の食事で、宿泊費自体と余り変わらない料金に()

そして、折角こんなお上品なレストランでのディナーなのに、P太の服装が…鬼滅のTシャツに進撃のバッグで酷い()。でもどうせ日本人に見られる訳じゃないからイイや~と思いきや、こんなロンドンから離れたホテルなのに、奥の席から日本語の会話が聞こえて来て耳を疑いました! 男性の二人客で、その内一人は日本人ではなく、日本語ペラペラの西洋人だったようです。敬語だったから、個人的な旅行ではなくビジネスのようでした。

翌日の朝食は宿泊料に含まれていますが、別個に支払うと17ポンド以上、日本円で3千円以上するそうです。スコットランド風のオートミール、コンチネンタル式、農家風(※肉無し)、キッパー、アボカド乗せトースト、オムレツ、エッグ・ベネディクト、エッグ・ロイヤル、エッグ・フロランタン等の中から選べました。我々二人は「The Pheasant Cooked Breakfast」、すなわち一般的なイングリッシュ・ブレックファーストを注文しました。


その前に、ビュッフェ形式でシリアルやギリシャ風ヨーグルト、果物を頂きました。写真を撮り忘れましたが、ここのグラノーラが、グラノーラってこんなに美味しい物だったけ~??と驚く程美味でした。これまた絶対美味しいのに違いない、ペストリー類にまでは手を出せなかったのが心残り。

イングリッシュ・ブレックファースト自体も、やはり上品な薄味で極力素材の味が生きていてすこぶる美味。

食器が金彩花柄のボーンチャイナとかではなく、食べ物が美味しそうに映える、どっしり素朴なアースンウェアなのにも好感持てます。

トースト・ラックのハンドルが、TOASTと読める仕組みになっている所がお茶目。

最高値の評判に全く違わぬ、文句の付け所がない素晴らしいホテルで、最高級の旅の思い出となりました。チェックアウトの際、スタッフが「滞在中何か問題はありませんでしたか?」と尋ねて来て、普通こう言う場合イギリスでは「全て大丈夫でしたか?」と聞いて来るのに、このホテルのプロ意識は凄いと、普段辛口のP太でさえ絶賛していました。機会があれば、是非また宿泊したいホテルです。ただし、やはり特別割引価格期間に限りますけど(笑)。

 

 

 


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