2025/01/31

城春草木深

アニメ「薬屋のひとりごと」の二期が始まったので観ていますが、設定やキャラクターの確認の為に、改めて一期全話を見直しました。すると、最初に観ていた時より、二回目に続けて観た方が返って面白く感じられました。伏線が巧妙に張られていて話の組み立てが上手く、物語に引き込まれ易いのが一層分かります。

そして、昔の中国の架空の帝国の宮廷や花街を舞台にしているので、漢服風の華やかな衣装が多く登場するのも魅力です。そんな服装を見ていて、改めてドール用に作ってみたい気持ちがムクムクと湧いて来ました。 

古代~中世の中国を舞台にした日本の漫画やアニメの登場人物は、概ね漢服っぽい恰好をしています。しかし、これらはあくまで漢服のイメージでアレンジされた物であって、歴史的な根拠のあるデザインではなさそうです。

厳密には時代や王朝に寄って、当然それぞれ特徴や流行が大きく異なっていたはずです。それを漫画やアニメの中では大抵一緒くたにして、更に創作を加えているように見えます。

キングダム」にも、紀元前にこれは絶対ないだろってな恰好が沢山登場します(そこが好きだが)。私のも、あくまで「漢服風」の自分勝手なデザインです。ついでに、「薬屋~」に登場する衣装でもありません。

前にも書きましたが、現在中国風の衣装の代表とされているチイパオは、実は清朝の服、つまり満州族の民族衣装が元になっていて、1920年代に生まれ流行し世界に広まったそうです。これに対し、中国の大多数を占める漢民族の伝統的な衣装なのが漢服で、チイパオとは掛け離れています。

それ故に、漢服を中国の代表的な民族衣装として世界に広めよう!と言う「漢服復興運動」が、主にℤ世代の間で活発化していると聞きます(正直単にコスプレを楽しんでいるだけにも見えるが…)

日本の着物が現代風に自由にアレンジされて着付けされる事もあるように、この現代の漢服も様々に今風にアレンジされているようです。

日本の着物、そして多分朝鮮半島のチマチョゴリも、この漢服が元になっているようです。どちらも、袷は右前です。着物が今でも時に呉服(呉=古代中国の国名の一つ)と呼ばれるのは、その為です。因みに、ベトナムの越服や琉球王国の流装も、漢服の影響を受けているそうです。

残されている資料が極めて少ないのではっきりはしませんが、飛鳥~奈良・天平~平安時代初期の日本の宮廷衣装は、漢服の基本にかなり近かったと言われています。

ただし高松塚古墳の壁画の貴婦人像を見ると、袷が左前になっています。この頃は右前の習慣が未だ入ってこなかったのか(日本で法律化されたのは719)、高貴な身分だから左前なのか、それとも墓所の壁画な為、あえて埋葬者に合わせて左前にしたのかも知れません。

今回のモデルは、リカ城お人形教室スタンダードの紫髪リカちゃんに、ピュアニーモ・フレクションSボディを初めて合わせてみました。肌色も首穴の大きさも全体的なバランスも、大体しっくり来るようです。

最初はピュアニーモ2エモーションを合わせるつもりでしたが、上半身が余りにも華奢で肩幅がなく、この衣装を着ると撫で肩どころか全くの肩無しになってしまう為(普通は袷には撫で肩の方が似合うのですが…)、肩に丸みのあるフレクションに替えました。

私が作ったこの服装は、上衣、下衣、帯、髪飾り、唐団扇、領巾(ひれ)のセットになっています。本来の漢服の素材は絹や麻のはずで、それに対し綿の歴史は比較的浅く、「薬屋」の中でも綿は高級品だと言っています。

しかし現在の女性用漢服を見ていると、オーガンジーやチュールが多用されているように見えます。色も素材も兎に角淡く夢可愛いイメージで、天女のようなふわっとした嫋やかさが身上のようです。

ところが1/6ドールの大きさでそのふんわり具合を再現するとなると、小さなサイズではドレープが同じようには寄らず、相当難しいと実感しました。

私が作った漢服擬きは、下衣は綿ローンとチュール生地で出来るだけ柔らかく表現したものの、上衣はシーチングみたいな生地なので、袖にカッチリと張りが出過ぎてしまいました。

下衣のチュールは、随分前にフリマでインド人女性から買った物。元々ラインストーンが貼り付けてある、刺繍の美しい生地です。本来下衣は巻きスカートだそうですが、私のは全く普通のギャザースカートで、後から普通のコーデに使い回しするつもりです。

あちこちの装飾に使った普段は安っぽいだけの金プラが、ここでは中華っぽさを高めるのに中々良い仕事をしてくれています。

髪飾りの大きなオーガンジーの花は、最近山小屋風チャリティショップでパックで買った造花。袋に漢字が書いてある丁度中国製で、ピンク系の中々素敵な微妙な色合いが揃っていました。

ドールに対してはかなり大きな花ですが、ヘアアレンジをする技術がまるでなく、ヘッドドレスでしかそれっぽさを出せない為、なるべく大袈裟にしてみました。

領巾は、地元チャリティショップで買ったラメ入りチュール地を、細長く切っただけ。辺り一面ラメをぼろぼろと零して撒き散らし、自分の顔までラメラメになりました。

漢服(擬き)を作ったら、この手前の袖の中で手を組み合わせる中国人の典型的なポーズは、是非させてみたいと思っていました。しかし生憎フレクション・ボディでは、中々上手く出来ませんでした。

ホント自分で見ても、漢服と言うよりは中華魔法少女とでも言ったコスプレのようで、色髪だから尚更アニメかゲームのキャラクターみたいに見えます。 

昔の中国を舞台にした漫画やライトノベルは、今は定番の一つと言える程珍しくないようで、一昨年前の帰国時には「後宮の烏」と言うアニメをアマプラで観ていました。やはり中華風の仮想の帝国を舞台としたラノベが原作で、宮廷の難事件を少女が解決する話です。

しかしこちらの主人公は不思議な力を持ち、起こる事件も心霊的なファンタジーなのに対し、「薬屋」の主人公・猫猫(まおまお)は幽霊や呪いを否定し、豊富な医学の知識と好奇心で科学的に事件を解決するミステリーです。

もし濃い緑髪のリカちゃんを持っていたら、猫猫風リカちゃんを作ってみたかったところですが、次回帰国した時に、再びリカちゃんキャッスルに行って手に入れるしかなさそう。もっともその前に、姉から頼まれている「葬送のフリーレン」リカちゃんを完成させないといけないのです💦


 

2025/01/30

春節飾り

 

他にブログのネタがない為、ドール記事が続きます()春節バービーを撮影する前に、丁度大きな中華スーパーマーケットに行く機会があり、其処で春節用の紙小物が幾つか売られていました。ポスターと言うか張り紙(赤と金)、ミニチュアの提灯(赤と金)、お年玉袋(赤と金)、紙皿やナプキン()などで、ここ数年は近所の普通のスーパーでも一部売られています。どれも、レトロなキッチュさが思わずそそられるデザインでした。

今までドール撮影用の春節飾りは自分ででっち上げた物しかなく、ここで一丁本物の春節飾りを買ってみる事にしました。勿論、毎年使い回しする為です()

吊り下げる同じタイプの飾りが、5つ入ったセットです。この他にも、金運、家庭運、愛情運等をそれぞれ願う紙製吊り下げ飾りのセットや、干支の蛇モチーフも販売されていたように記憶しています。

色の中心は赤と金(兎に角中国人が好む色合いらしい)で、赤地はフロッキー加工、柄はエンボス加工され、更にラメが鏤められて目出度さを盛り上げています。「大吉大利」とは、とても縁起が良く順調だと言う意味で、中国人が好んで使う言葉だそうです。この他「春」「福」やそれらをを逆さにした文字も、春節飾りに多く見掛けます。

良く見ると、中心となるのは魚二匹が組み合わさった形。これは「双魚」と言う漢の時代から人気のモチーフで、魚の種類は鯉だそうです。日本ではお祝いの魚と言えば鯛ですが、中国では鯉だとか。

商品名は「幸せの種」と言う意味のようです。お店では、これらを梅の枝等の植物Xmasツリーのように沢山ぶら下げてディスプレイしていて、中々の可愛さでした。

ところで実を言うと、春節自体は私にとっては全く喜ばしくありません。毎年この季節に、ウィルスが世界中にバラまかれるのかと怖くなるからです。この休暇に大量の中国人が移動し、当然海外旅行もする訳で、もし中国で新しいウィルスが発生すれば、世界的な流失・拡大は間逃れないはずです。実際に今年は、風邪に似たコロナとは別の感染症が、再び中国本土で大流行していると聞いています。

心配し過ぎと思われるかも知れませんが、コロナ流行の初期だって、一体何人の人がこれ程まで世界の惨事に発展すると考えたでしょうか?? 日本に比べたら遥かに少ないはずのイギリスの中国人観光客でさえ、旧正月以外ですら驚く程の数を見掛けます。

差別と思われても仕方ありませんが、事実昔から専門的に中国南東部は新型ウィルスの誕生し易い場所だと言われ、また中国の世界一の人口の高さはそれだけで十分驚異です。

 

 

 


2025/01/29

春節のバービー

 

今日から春節、つまり陰暦に則った旧正月で、中華圏ではカレンダー上(太陽暦)の元旦以上に大々的に祝うそうです。バービー人形を企画・製造する米国マテル社では、毎年この時期に大人向けコレクタブルズの「Lunar New Year Barbie」を発売します。もしかしたらマテル本社の中国系デザイナーが企画しているのか、これが全て中々優秀なデザインなのです。漢服風もあればチイパオ等の満州服風、京劇の衣装風もあり、誰もが一目で中国らしいと分かる上にお洒落で美しく、更に毎年印象も違って新鮮に見えます。

その中でも2021年版の赤いチイパオ姿のバービーと、2023年版のモダンなショート・ツーピース中華服+外跳ねボブのバービーは、特に美しくスタイリッシュで素敵です。

しかし、どの春節バービーも実物を見ていないから、パッケージやウェブ上の写真で見る程は、「バービーあるある」で本当は素敵ではないのかもと疑っています。特にチイパオの柄は刺繍ではなくプリントのはずなので、近くで見ると安っぽいかも知れません。また、春節バービーのボディは可動式ではなく簡素なタイプみたいで、あくまで着せ替えして遊ぶのではなく、コレクションとしてデフォルトの衣装のまま飾るのが目的なようです。

アジア人バービーのリペイントをしていて、自分で2021年春節バービーに似たドールを、MTM(Move To Move=現在バービーのボディの中で最も可動域の広いタイプ)ボディを利用して作れないものか?と思い立ちました。

元になっているヘッドは、最も安価なファッショニスタ・バービーの東洋人版。元々のボディも、腕も広げられなければ首すら傾かない、単にプラスティックの塊のような一番安いタイプでした。ついでに、髪質も粗悪なパサ付き易い熱に弱いタイプ。しかし前にも書きましたが、フェイス・プリントを落とすと、バービーの顔のモルドとしては、もしかしてこれが一番優れているのでは?と思える程、変なクセがなく整って見えます。

2021年春節バービーの雰囲気は目指すものの、顔を模写するつもりはなかったので、兎に角自分で描き易いように、アジアン・ビューティーになるようにだけを目標にしました。しかし、グランスだけは真似しました。

バービーの基本は正面向きの瞳ですが、たまに2021年春節バービーのような横目向きも存在します。顔を模写しなくても顔型はほぼ同じはずだし、仕上がりはそう違わないだろう…と勝手に思っていましたが、仕上がってから気付いた事には、色気が本家にまるで及ばない(苦笑)


今回は顔のリペが仕上がってから、ボディを
MTMに替えました。しかし、元のボディの首からヘッドを引っこ抜く際に、お湯で温めて素材を柔らかくしてからでも、まるで親の仇のようにとんでもなく抜けにくく、力任せにヘッドを大きく捻ってしまい、ペイントが剥げ描き直す羽目になりました。特に、唇は塗装が落ちて寄ってしまい、その上に再びペイントしたのでガサガサ大荒れに。教訓:ボディの交換はリペの前に!

その上、元のボディの首のジョイント(別名:首ち★こ…)が外す際にボキーンと壊れてしまい、それは安い使い勝手の悪いボディだったから構わないのですが、折れたジョイントがヘッドの首穴の中に残ったままでカラカラ音がします(苦笑)。小さな首穴からジョイントを引っ張り出すのは、これまたリペを傷めそうな程大変で見送っています。

ピュアニーモやオビツ・ボディのように交換するのを前提に作られていないせいか、今のバービー人形の首は、全般的に非常に抜きにくくなっています。特に色白のMTMボディは、私は一体しか持っておらず使い回するつもりなのに、ヘッドを引っこ抜く際にジョイントを折ってしまっては元も子もありません。今後交換し易いように、ジョイントと首穴に小細工をしました。

2021年春節バービーは、赤地に水色のパイピングのチイパオでしたが、私は逆の水色地に赤いパイピングにしました。赤地で最も適した和柄生地では、既に何度かチイパオを作ってしまったし、この水色地は金彩の割合が一番多く派手で、更にこの生地で和服はもう何着か作ったから、違う印象で見てみたかったのです。

中華サテンもフリマで幾つか手に入れましたが、今回も金彩多めの和柄コットンでチイパオを作る事に。ボディ・コンシャスなフォルムで、更に自分で作成した初めての型紙で作るとなると、ツルツル滑るサテン地では自信がなかったからです。

結局、その選択は正解でした。このバービーのボディにチイパオを作るのは本当に難しく、試作一着+三着挑戦して実はこれが四作目です。型紙なんて、五、六回作り直したかな。未だフォルムがヘンで満足出来ませんが、流石に飽きてこれで以上作る気になれず、一応完成~と言う事に無理矢理しました。

もしバービーのMTMボディ・サイズ用の、基本となるタック入り身頃の型紙が何処かで手に入れば、少しはマシ&ラクだったはずですが、海外のダウンロード可な型紙は信用ならないし、日本ではバービーでドル活する人口が少なさそうな上、現在のバービー用の型紙が掲載されているドール服本なんて手に入るとは思えません。昔のバービーの服本なら何冊か持っているものの、その頃のバービーとは大きく体形が違います。

チャイニーズ・ノットも、基本の「あわじ玉」と言うのさえ上手く習得出来ず、仕上がった時はボンドでベタベタ&ガビガビに()。しかも苦労して仕上げたのにも関わらず、どう見ても服に対して大き過ぎ、一度貼り付けた物を外し、更にベタベタになりながら作り直しました。

MTMボディの関節は概ね固めなものの、足首の関節だけは緩過ぎて、こんなヒール靴を履かせても、勝手に踵がカクンと曲がってしまいます。着物の草履&足袋を履かせて立たせるなんて、スタンドを使っても無理そう。

肘が180度も曲がるのは素晴らしいのですが、肝心の腕自体が脇に密着出来ないのは、文字通り脇が締まらない気持ちになりやはり残念。バービーの他の可動式ボディに比べ、腕が少しだけ逞しいのは気に入っています。

あと、多くの日本人が指摘しているように、こんな露出の多い服装の場合、バリ(型から抜いた後の樹脂のはみ出し)が多いのはやはり気になります。肌の色は、バービーの中ではこれが一番白いそうですが、MTMボディを日本のドールに挿げ替えようとすると、これでも未だ肌の色が濃過ぎて合わない事が多いようです。

ボディの付いたままのヘッドの方が抑え易くリペし易いので、ついボディを替える前にリペしてしまい失敗しました。髪をカットするなりパーマする場合でも、リペの前にするのが望ましいのですが、リペしてから目指すイメージが固まり、後から髪型やボディを替えたくなる事が度々起こります。 

今後は、まず元のフェイス・ペイントを落とした後に、予め首を引っこ抜いてボディを替え易く改造しておく、西洋のファッション・ドールをカスタムする場合は、これが鉄則だと思います。