2023/08/01

海辺の風車の村クレイ

 

今年二月に夫婦で訪れたノーフォーク小旅行の二日目は、最後に州都Norwich ノーリッジで夕食を取る予定でいました。宿泊したホテルからノーリッジはほぼ南に30㎞程離れていますが、ノーリッジは今までも何度か訪れた事があり、また時間はたっぷりあるので、我々は海岸線沿いに西へ進んで遠回りしてからノーリッジに行く事にしました。この海岸線沿いのA149号線はScenic route、すなわち眺めの良い道路と地図に記されていて、我々は昨日King’s Lyne キングス・リンからこの道を通ってホテルに向かいましたが、日没時間の早い二月の事なので、既に日が暮れていて景色を眺められなかったのです。

ホテルを出て、まずCley next the Sea と言う古い雰囲気の良さげな村で途中停車しました。

村の名前は「海の隣のCley」と言う意味ですが、普段は単にクレイと呼ばれているようです。

無料駐車場から、村の中心部に出ます。フリント石が使用された建築物を、割と多く見掛けます。

フリントは石英質の燧石で、イギリスでは良くチョーク層の中に含まれています。フリントを使用した建築物は、イースト・アングリアでは特に多いそうです。

イギリス人はドイツ人と違い、公道に面した窓辺を飾る習慣は余りないのですが、田舎は別。海辺の村らしいヨットのディスプレイです。

中心部は商店が数軒あるのみですが、イギリスの観光に人気の村に良くある事で、その内23軒はアート・ギャラリーです。

そのアート・ギャラリーの一軒で、P太の気になるモチーフ、キツネの絵画。結構好きなタッチです。

ドアのノッカーも、キツネの形。

立派な建物のパブ兼旅籠もあります。二月の平日でも旅行者をちらほら見掛けたので、夏場は海水浴客で結構賑わう村なのではと想像します。

いかにもイギリスらしくて、絵になる八百屋さんも在りました。この風景の彩の少ない季節は、鮮やかな野菜は目を引きます。

ここで、凄く人懐こい三毛猫ちゃんに遭遇。全ての通行人に、愛想を振りまいています。

背中を撫でさせて貰ったら、ぱんぱんに肉の詰まった感触がタラちゃんと同じで安堵しました。ただし体格は、タラちゃんより二回り位小さいのです。多分雌猫としては、それが標準的な大きさかと。

海岸方面の遊歩道を、歩いてみる事にしました。

海岸と言ってもひたすら湿地が広がっていて、実際の海岸線まで1㎞はありそうです。村名が、イギリスで良く見掛ける「~BY Sea 海辺の」ではなく「~next the Sea 海の隣の」なのは、こう言う立地のせいかも知れません。


この人は何をしているかと言うと、茅葺屋根用の茅を刈り取っているようです。

湿地のあちこちには水溜りと言うか沼が出来ていて、この一帯が高潮の際に氾濫原になるのが分かります。

 水路も設けられていて、舟で海へ出る事が出来るようです。

しばらく遊歩道は湿地の端の堤防脇を進み、張り出した建物のバルコニーの真下を歩く部分も。

古風な風車が見えて来ました。普通イギリスでは、こんな風車を風の強い丘の頂上に建てて来ましたが、イングランドでも特に標高の低いここイースト・アングリアでは、オランダ同様に湿地を灌漑する為に低地に立つ風車を多く見掛けます。

しかしこの風車は、実は今はBBになっています。建物が無造作に増築され、ちょっと「ラピュタ」のパズーの家みたい。こんな所に泊まったら面白そうと思いましたが、宿泊料金が結構高目でした。


茅の生い茂る合間の遊歩道を、更に歩き続けます。

海方面に向かって眼に入る景色は、兎に角一面真っ平ら。

山育ちの私は、平坦過ぎる土地では無性に不安になります。 

この日は青空も見えて一応晴れてはいるのものの、未だ二月なので日差しが弱く、哀愁すら漂います。

このノーフォーク北部の海沿いは、「あの頃はマーニーがいた」(ジブリ映画「思い出のマーニー」の原作)のモデルとなっていて、あの親子三代で肉親の愛に恵まれない悲壮な物語の舞台に相応しい、薄ら寂しい雰囲気に溢れていると感じます。


隣村の教会の塔が見え、この部分だけは若干高台になっているのが分かります。


こちらはクレイの村方面で、ここも僅かに高台になっています。しかしこの海抜の低さでは、やはり海面上昇の問題は深刻です。

遊歩道からの帰り道、不思議な筒のような建物がくっ付いた家が目に入りました。


2月の寒風の吹く湿地の散歩は意外と冷えたようで、お腹を壊してしまいました💦 駐車場にトイレはありましたが、広い割に個室は一つのみ(男女車椅子共用タイプ)で、出て来た時にはP太を含む待つ人の行列が出来ていました。ひゃ~恥ずかしい(〃ノωノ) 大して利用者の居ない駐車場なのに、何故その時に限って皆一斉にトイレに行きたくなる??…なんてのも、今となっては可笑しな旅の思い出です。




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