昨年の夏に訪れたHereford Cathedral ヘレフォード大聖堂で、いよいよここの最大の「売り」である世界遺産「Mappa Mundi マッパ・ムンディ」を見学します。マッパはラテン語で「地図」(進撃や呪術やチェンソーマンを作っているあのアニメ制作会社は素っ裸と言う意味ではなかったんだな…)、ムンディは「世界」を意味し、つまりマッパ・ムンディとは非常に貴重な中世に作成された世界地図の事です。
マッパ・ムンディは、「Chained Library 鎖で繋がれた図書館」と共に、回廊の南西端に在る別館に展示されています。大聖堂自体は入場無料ですが、この部分のみは10ポンドの入場料金が必要です。ドケチなP太は有料と急に知ると物凄く文句を言う為、ここが有料で10ポンドだと言う事は予め何度も伝えて来ました。
ところが‼ 興味がないから頭にとんと入っていなかったらしく、「たかが地図を見るだけに10ポンドも払うなんて在り得ない」と突如怒り出して入場を拒否し、おまけに私の入場料は私自身に払わせました(ヨーク大聖堂の時よりタチが悪い)。 声を大にして言いますが、単なる地図じゃねえっつーの。この遠い大聖堂にわざわざやって来て、マッパ・ムンディを観るのをケチる馬鹿が居るのか⁈と、今思い出しても全く腹立たしく嘆かわしい限りです。
と言う訳で、ぼっちでマッパ・ムンディを見学しました。図書館の入り口までの回廊には、マッパ・ムンディに関する説明と関連する展示物が並んでいます。
例えばこれは、当時大変高価だった本を保管&運ぶ為の櫃。今となっては、「葬送のフリーレン」に登場するミミックにしか見えませんが。
単に皮がボコボコ波打っていると思いきや、マッパ・ムンディのレプリカを標高に従って3D化した物。
実はマグナカルタの原本の一部も、ここには在ります。しかしマッパ・ムンディの方が✨スター✨過ぎて、他のマグナカルタを保持するソールズベリー大聖堂やリンカーン大聖堂と違い、余り宣伝していません。
図書館の入り口。扉は謎に自動で開きます。
まず、マッパ・ムンディそのものが入館者を出迎えます。実は最初に見た時は、この前には熱心に観察する人々が群がっていた為、私はこの奥の図書館の方を先に見学しました。
通路の反対側には、かつて地図の嵌め込まれていた樫の木製の額縁が。マッパ・ムンディは、元々は祭壇画の一つとして大聖堂内に展示されていました。
中世の世界地図は他にも幾つか現存し、その中でもこれは「ヘレフォード図」と呼ばれ、マッパ・ムンディの中では最大の物と言われています。縦158cm×横133cmで、1300年頃の制作。ヴェラム(羊か子牛の皮)に、黒インクをメインに赤、金、青、緑で描かれています。
当然測量をして作図した訳ではなく、そもそも地動説すら存在しなかった時代で、地理的な正確さはなく役立たずなものの、中世の世界観・宗教観・思想観を知るには極めて貴重な資料で、歴史的な価値は測り知れません。
キリスト教の聖地エルサレムを中心に、何故かヨーロッパとアフリカが逆転して表示され(地図の上が北を差すと言う決まりは未だ無かったのかも)、更にエデンの園やバベルの塔等の聖書の内容が記されています。
もう兎に角、当時の世界は化け物がいっぱいでした(笑)。特にアフリカ大陸に多いようで、良く知らない土地は恐怖でしかなかったのでしょうね。
この地図を見た率直な私の感想は、やはり中世は暗黒の時代と呼ばれるだけあり、閉鎖的で狂信的で底知れぬ不気味さに満ちていたと言う事です。やっぱ怖いのは、化け物ではなく人間です。
そしてこの奥にある、「Chained Library 鎖で繋がれた図書館」。建物自体は意外と新しく1990年に完成し、その開館式典は故女王様のテープカットで行われたとか。
本が余りにも貴重で高価だった時代、勝手に持ち出せないよう鎖で繋がれているのです。
本棚自体にも、厳重に鍵が掛かっています。
一冊がデカい上、ヴェラムで出来ているだろうから非常に重く、そう簡単には持ち出せないとは思います。そもそも、読める価値の分かる人は極僅かだった事でしょう。識字率が低い上、ラテン語で書かれているはずだから。
否応無しにハリー・ポッターの世界を思い出し、もしかして本自体が勝手に動き出すので鎖で繋いだのでは??とか想像してしまう程です。
期待を裏切らず興味深く、やはり私にはここまで来てマッパ・ムンディを観ないと言う選択は絶対に在り得ませんでした。自分の夫の歴史への興味の無さとケチ臭さが、強烈に忘れ難く今だ情けなくて仕方ありません(笑)。
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