2025/03/21

墓場で花見! 4

昨年の桜の時期に姉と訪れた青山霊園は、幾つかの区画に分かれていますが、最後に外人墓地=西洋人の墓の多く集まる区域を訪ねました。

キリスト教徒の墓なら、イギリスで見慣れていて珍しくないだろうと思われるかも知れません。しかし、今の時代より外国に対する情報が非常に限られ、渡航が遥かに大変だった昔、わざわざ日本を訪れた欧米人は、皆測り知れない覚悟と大きな使命や志を持ってやって来たはずです。

そんな人達が祖国から遠く離れた土地で生涯を終えたのは、感慨深い物があります。

例えばこの、イギリスに在るのと全く変わらない完璧なケルト十字の墓標は、果たして日本の石工が見様見真似で作ったのか、それともわざわざ輸入したのか。日本に存在するからこそ、見学する価値があります。 

彫刻が繊細で美しい十字架も、昔の日本の石工が彫ったとしたら素晴らしい出来です。

十字架や四角柱型だけでなく、イギリス同様に横長の棺桶型もあるのか…と思ったら、教会を象ったらしい家型。

これらは外人墓地区域からは離れていますが、粘板岩に十字架のレリーフが彫られた墓石は他で見掛けた事がなく、日本のキリスト教徒ならではかも。

カタカナの墓標ってのも、意外とかなり珍しい。中央は、西洋医学の発展に重要な貢献をしたドイツ人外科医ユリウス・カール・スクリバの墓。 

鎖国明けの日本は、国としては赤子同然で、早急に西洋の文明に追い付く必要に迫られていました。その為明治政府は沢山の外国の知識人や技術者を招待雇用し、彼らはお雇い外国人と呼ばれました。全く違う文化に馴染めず、文明の遅れた東洋の国と侮って、高い報酬だけ頂戴して仕事に不熱心だったお雇い外国人も、多分中には居たと想像します。その一方で、日本の発展に尽力を注ぎ、任期後も母国へ戻らず日本を愛し続けた外国人も多かったと、この墓地からも感じ取れます。

日本の工学教育で大きな功績を残したドイツ人ゴットフリード・ワグネル(ヴァグナー)の、目を引くギリシャの神殿風の祠型の墓。

日本の紙幣・切手印刷技術の基礎を築いたイタリアの銅版画家エドアルド・キヨッソーネの墓の近くには、沢山の日本人名が刻まれた印刷局墓地。キヨッソーネの墓自体は、撮影しなかったようです。 

「あ、この絵柄の切手持ってる」と思ったら、林学教育者の松野礀の妻で、日本の幼児教育と音楽教育に貢献したドイツ人女性クララ・ツィーテルマンを描いているそう。ただし、夫の死後故郷ベルリンで亡くなった彼女の本当の墓は今だ所在不明らしく、これは顕彰碑です。2011年に、夫と娘の墓の傍らに立てられました。

2005年に、青山霊園の縁者の無い墓地を都が所有する事になり、この外人墓地の行方が危ぶまれました。しかし単なる埋葬地ではなく、日本近代史の遺物・資料としても掛け替えの無い程貴重なので、残っていてくれてつくづ安堵しています。

桜だけなく珍しい墓石も楽しめる、非常に充実した一日となりました。姉も墓地巡りが好きで幸運です。この趣味に付き合える人なんて、世の中に滅多に居ないとは自分でも思います()





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