東京からやって来たお友達のキチ吉ちゃんの昨年の三春町訪問の二日目は、郊外の滝桜から旧町内に戻り、前々から行きたかった郷土人形館を訪れました(一日目は休館日だった)。ラッコ好きのキチ吉ちゃんは、ここの「ラッコ・コレクション」と呼ばれる展示を楽しみにしていました。
ところが実はこれは単なる名称で、ラッコの人形が沢山ある訳ではありませんでした。とは言え元から民芸品好きの私達なので、かなり古い郷土玩具やこけし等の渋い展示を楽しめました。規模は大きくありませんが、二つ分の土蔵を改装した建物自体も興味深い博物館です。
続いて是非キチ吉ちゃんに見て欲しいと思っていた「三春文化伝承館」へ、我々は行きました。
ここは100年以上前に建てられた裕福な商人の邸宅を修復・管理して一般公開している、いわゆる歴史的建築物博物館で、入館は無料。凝った造りも見所な上、前回はボランティアの方々に寄る見事な飾り雛が室内を埋め尽くし、古い建物との調和が素晴らしかったのです。
受け付けで「今年も飾り雛ありますか?」と尋ねると、スタッフの方はホクホク顔で「今年は更に増えてるわよ~」との事でワクワク♪
まず玄関先には、昨年は卯年だったせいか、兎雛がいっぱい。
籠の中には縮緬製のメデ鯛がぎっしり。このデコパージュ製の籠も、手作りらしく味があります。
美しい暖簾は、着物をリフォームした物のよう。
座敷に入ると吊るし雛尽くしで、確かにこれは圧巻です。
一体何人の方が手掛けて、どれだけの時間が掛かっているのか。一つのモチーフを作るにしても、相当手間が掛かっているはずです。
物干し竿のような竹に横並びに吊るしたバー・タイプも有れば、リングに吊るしたタイプも有り。
納戸?の前にもびっしり。
こちらは兎。
これは「雛」ではなく、明らかに岐阜県飛騨地方の魔除けの人形「さるぼぼ」です。
古風な石油ストーブも、絵になっています。防寒・防暑の為にも座敷は廊下に囲まれていますが、薄いガラス戸と障子では冬は相当寒いはずです。
吊るし雛に見とれて、うっかり見落としてはいけないのが、この家の内装。
物凄く広大なお屋敷と言う訳ではないのですが(田舎ではこの位の広さの家はザラに在る)、所々の建具が贅を尽くした凝った造りになっています。それが単に金を掛けた成金趣味ではなく、思うにこの家を建てた元持ち主の商人は、相当センスと教養のある人物だったと伺えます。
天井は日本家屋としてはかなり高く、 欄間の彫刻や障子戸の桟の意匠も凝っています。
床の間の一つには、半端なく古い大きな三春張り子が展示してありました。
色褪せて良い味出ている玉兎。
象に乗った稚児。昔は日本の誰も象の実物を見た事がなかったので(徳川吉宗時代に一頭輸入されたらしいが…)、象は龍や鳳凰並みの空想上の生き物だったのに違いないく、イギリスのヴィクトリア時代のイルカ同様に、形式的な意匠で表現されました。町内の田村大元神社の仁王門の彫刻にも、似た意匠の象が彫られています。
二階へ行きます。二階は二部屋のみですが、これらもまた贅と粋を凝らした内装になっています。
襖絵は一枚一枚絵師に描かせている訳で、正に芸術品クラス。
床の間の造り付けの棚の襖は、まるで絵巻のようだし。
当時の一般家庭ではまず見られないであろう障子戸の桟の細かさからして、建具大工の技量が発揮されるところだと思います。
田舎としては決して広くはない庭も、センス良くまとまっています。
二階に飾られていた吊るし雛は、菊花モチーフ。
この二階の円型の窓の中心に、曲がった天然木を配したセンスが心ニクイ。障子に写る外の木々のシルエットも、絵になっています。
後からスタッフさんに「二階の円窓、開けて御覧になりました?」と聞かれ、え?いや、もし繊細な桟を壊しでもしたら一大事で、勝手に開けらる訳ないよ~と戸惑っていたら開けて下さり、こんな素晴らしい眺めが! 隣の王子神社の石段と桜です。
現代の建築技術で考えると、気密性に乏しくて寒そう&暑そうな家屋で、機能的には絶対に住み心地は色々と良くないはず。なのに、抜群の居心地の良さを感じさせる、贅沢だけど華美ではなく落ち着いた、ワビサビと言った日本の美学を極めたような造りの三春文化伝承館です。
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