2023/11/30

ルーサイトのインタリオのリング


6月に訪れたArdingly アーディングリーのアンティーク・フェアの最後の去り際に、このプラスティック製の指輪を買いました。其処は屋外のストールで、実はこの指輪を最初に見付けたのは、フェア会場を見回り始めたばかりの頃でしたが、姉へのプレゼントを買いにフェアに来たのだし、この指輪はあくまで自分用だから、その時は現金を出来る限り残しておきたくて見送りました。会場を去る間際には、このストールは既に店仕舞いし始めている所だったので、ぎりぎりセーフで買えました。値段を聞くとたった1ポンドで、フリマ並みでした。もしこの値段を予め知っていたら、躊躇いなく最初に買っていた事でしょう。

単なるプラスティック製のポップな指輪ではなく、195060年代のルーサイトのインタリオ(裏彫り彩色)の指輪です。勿論、裏彫り彩色は手作業。ルーサイトのインタリオに指輪も存在するのは知っていましたが、自分で手に入れるのは初めてです。モチーフは、ルーサイトのインタリオの定番のバラの花と葉。

面積が小さい分インタリオの面積も小さく、ブローチに比べると魅力は落ちますが、もっと手軽に着用出来ます。指輪のサイズは結構大きいのですが、私は指が短い割にぶっといので、幸か不幸かピッタリでした()

今回のアンティーク・フェアでは、結局私が買ったのはビンテージ・ジュエリーのみでしたが、姉へのプレゼントも中々良いのを幾つか集められたし、自分用にも買い物が出来て満足。やはりビンテージ・ジュエリーを買い集めるのは、アンティーク・フェアが一番です。

 

 


2023/11/29

とある少女の墓標

 

貴重な秋の快晴の日に訪れた、丘の上の孤高の教会Church of St. Martha-on-the-hill セイント・マーサ教会の周囲は、イギリスの古い教会らしく墓地になっています。このような高台の墓地、しかも眺望抜群の立地とあらば、ステイタスとして古今東西非常に人気があります。しかし、墓地の不足と価格高騰が深刻なのはイギリスも同じで、こんな恵まれた場所に死後眠る事が出来るのは、極限られたイギリス国教会の信者だけのようです。

現在の一般的な墓石は、せいぜいB4サイズ程度の板碑です。こんな、素朴な木製の十字架の場合もあります。また、埋葬を許可される土地代だけでも相当高く付くので、散灰するのみと言う形式も一般的になって来ています。

教会の入り口近くに、こんな大きな古風な墓石があるのに気付きました。一見シンプルな平べったい墓石なのですが、側面にネズミの彫刻が彫られてチョロリと覗いています。

イギリスの墓標のバリエーションは豊かで、また故人の人柄や意思を表した遊び心のある墓石も、イギリスではそう珍しくありません。

礎石を除いても縦130×横80cm位のかなり大きい墓石なので、すっかり第二次大戦以前の古い物かと思っていました。しかし、没年を確認すると、つい最近の2012年。しかも、享年9歳??

家に帰ってから、この墓の主の名前をググってみました。こんな年齢で亡くなるなんて、死因は交通事故かも知れない。もしそうであれば、事故のニュースの記録が残っているはずと、単純に興味を抱いたからです。検索すると、すぐに答えが出て来ました。家族がファミリー・ツリー(家系図と人物紹介)を製作していて、ネットで公開していた為です。その結果、このBlossom Barrowと言う名の少女は、5年間の闘病生活の後、「neuroblastoma 神経芽腫」と言う、5歳以下の子供に発病率の高い神経細胞の癌で亡くなったそうです。

またそのファミリー・ツリーを眺めていて、彼女の母親が翌年の2013年に52歳で亡くなっているのも気になりました。辿ってみると、この母は貴族の家系出身のライターで、ウィンザー城で誕生したそうです。しかし母の生母は出産直後に亡くなったようで、続いて父親も彼女が30代前半の時に亡くなっています。彼女自身は、娘の死の18カ月後に癌で亡くなりました。娘の看病に明け暮れていた為、自分の癌に気付いた時には既に手遅れだったそうです。夫とは正式には結婚しなかったようで、苗字が違うから見落としましたが、娘の墓の隣には似たような墓石があった事だけは憶えています。もしかしたらこの母は、其処に埋葬されているのかも知れません。

家族二人を立て続けに失くした悲しみは、計り知れない程大きかった事でしょう。しかしこんな教会墓地の一等地の、現代では珍しい程の大きな墓石を建てた位だから、相当裕福な家庭なのは疑いようもありません。5年の闘病生活の後に僅か9歳で亡くなったのでは、この少女の人生を知る人は少なかったであろうと想像しますが、親が大金持ちで立派なお墓を建てたお陰で、思いがけず全く縁のない東洋人の知るところとなりました。

 

 

 




2023/11/28

エンチャンティマルズ「フェリシティー」をカスタム

 

今年一時帰国した際の、P太の日本からのお土産の第一の希望は、自分がVR(ヴァーチャル・リアリティ)の中で使用しているアバターをドール化…する為の材料でした。

彼のアバターと言うのは、最初は「猫耳メイド服少女」だと勝手に思っていましたが、良く見ると「キツネ耳ゴス少女」でした(…どっちでもええわ)。今までもP太に頼まれてSNS用に、そのアバターのイラストを時々描いていましたが、正直全く乗り気がせず、常々いっそドールにして撮影した方が未だラクかもな~と思っていました。何せ好みのキャラじゃない上に、衣装が非常に複雑で装飾品が多く、描くのが凄~く面倒なのです。

他のVRユーザー達が、初音ミクや禰豆子等のアニメ&ゲーム・キャラのバチモンの、見るからにシンプルで精度の悪い無料()アバターを使っているのに対し、P太のは同じくアニメ顔なものの、韓国のアーティストから米国10ドルで買った(安ッッ)オリジナル・キャラだそうで、明らかに完成度が違って緻密で繊細な造りです。

しかし、イラストで描いても面倒な物は、当然ドールで表現しても面倒です。一応帰国の際にアゾンでピュアニーモ・ボディと植毛ヘッドを買って来ましたが、そう安くもない上にイギリスで簡単に手に入る材料ではないから、ちゃんと実現出来るかは未だ自信がありません。それで手始めに、フリマで激安で手に入れた中古ドールで、カスタムの練習してみる事にしました。

現在も玩具店で売られている、最近は中古でも良く見掛けるようになった、米国マテル社の「ENCHANTIMALS エンチャンティマルズ」と言う、少女達が動物の仮装をしたシリーズのドールです。その中でもこれは「FELICITYフェリシティー」と言う名のキャラクターで、玩具の正式名称を「ENCHANTIMALS HUGGABLE CUTIES FELICITY FOX DOLL & FLICK FIGUREP」と言うそうです。最近の流行りのようで、元は御供の動物フィギュア(例に寄って可愛くナイ)が付属していました。

身長は約20cmの小ささで、今時のドールらしく、頭が大きく身体が非常に華奢に出来ています。首は回るけど傾かず、腕脚は開くものの肘膝は曲がりません。右腕は、多くの安価バービー同様に曲がったままです。トップスやアクセサリーはボディに直接ペインント&型押しされている為、「ファッション」ドールと呼ぶには相応しくないかも知れません。

後ろを見ると、キツネの尻尾もちゃんと付いています。しかしこれが、尻からではなく背中から生えていて気持ち悪く、そもそもアバターの尻尾の色とも違うので切り落としました。念の為P太のアバターは、小学生位の子供じゃないし四頭身でもないのですが、キツネ耳があるのと、髪色が同じワインレッド、顔型が丸く眼穴の型押しがないと言うだけで、この人形をカスタムの材料に選んでみました。

しかし、この選択が甘かった事に、作業に入ってすぐに気付きました。派手にペイントされた顔のプリントを除光液で落とすのは、今迄と同じで造作ありませんでしたが…、

…問題はボディの服のプリントで、量的にかなり多くの塗料を使用している上、顔とは樹脂の素材が違う為、落とすのに相当苦労しました。落ちて行き場を失った塗料がいつの間にか顔に移り、顔が黄ばんでしまう羽目に。また服の装飾やクセサリー類がボディに型押しされている為、わざわざルーターを買って来て(フリマで2ポンドだったが)削り落とさねばなりませんでした。やすり掛け機能は付いていないので、削った部分はガタガタのままです。こんなアホな苦労をするよりは、潔くボディは他の物に交換すべきだったと思います。

また、口の型がかなり大きいので、これもルーターで削り落とそうとしたものの、素材が違う為に全く歯(刃)が立ちませんでした。日本の瞳の大きなアニメ顔って、大抵鼻と口は最低限に表現されています。結局でかい口の形の上におちょぼ口を描きましたが、歌舞伎の女形のメイクのように、一応これで何とかなったような。口の周りの削り損ねたガビガビのサメ肌のみが、悲しく残りました。

髪色がアバターと同じで、髪質の状態が良いとは言え、髪型自体は全く違います。この人形のデフォルトの髪型は、前髪無しの斜め分けで後ろはツインテールでした。前髪を作る為にお湯パーマを掛けましたが、やはりサイド・パートは何度固定しようとしても分かれたままです。

アバターはキツネの仮装ではなくキツネっ娘なので、キツネ耳が本来の耳な訳ですが、元のドールでは、あくまで動物の仮装をした人間の少女と言う設定なのだから、人間の耳が別個に存在します。それを隠す為に、姫カットの脇髪が人間の耳部分を覆わなければならないのですが、正直隠し切れていません。

キツネ耳は髪の色と同じにペイントしましたが(そう言うアバターなので)、中身は空洞になっていそうで、耳に付いた花型は切り落とせませんでした。仕上げに似た色の花モチーフを貼り、誤魔化しています。

兎に角身頃が非常に小さいので、デフォルト同様にボディに直接ペイントするか、脱ぎ着出来ないよう直接縫い付けるか検討しましたが、結局通常通り着脱可能な仕様にしています。こんなに小さくとも折角ダーツ二ヶ所×対で入れたのに、背面の留め具の厚みで相当嵩張ってしまいました。しかし、チューブトップがずり落ちないようには、取り敢えず仕上がりました。

複雑な服の装飾は、この小ささと私の不器用さでは到底再現出来ないし、相応しい材料も手に入らないので、雰囲気だけは出来るだけ近付けて随分端折りました。

しかし、こんな行き当たりばったりで不出来なドール・カスタムでも、P太は「正に僕のアバターのミニチュアだ!」と大喜びです。髪型や衣装が全く同じじゃなくとも、「だってちゃんとソレだと認識出来るじゃないか」と、理解ある許容範囲の広い旦那様で有難い限り()

正直自分でも、想像していたよりはずっとマシに仕上がったとは思います。元の人形からここまで一応アニメ・キャラっぽくなるとは、私もP太も期待していませんでした。こんな元が全く違う造形のドールからでも、イメージだけは近付けたのだから、アゾン製のヘッドを用いたカスタムに少しやる気が沸いて来ました。

唯一このドールの元からの造形で感心するのは、この小ささ&肘の関節がなくとも、指の表現の繊細さは流石だと言う事。最安価版バービーの曲がったままの腕も、せめてこんな表情のある手の平なら良かったのにと思います。

このアバターは黒い手袋を嵌め、右腕にのみレースのアーム・バンドを付けています。例えこの小ささで手袋を作って嵌めたとしても、指無しミトンになるだけなので、手をアクリル絵の具で黒くペイントしました。其処に、縫い縮めただけのリボンやレーステープを腕に通しています。素材的に絵の具の定着が悪く、ちょっと触れただけで剥げ落ちるのが難点。プラ用の塗料じゃないと駄目かも。

首のチョーカーも、ビーズを縫い付けたリボンを貼り付けただけ。削った首のボコボコを隠す為にもその方が都合良かったのですが、余りに首が細く貼り付けるだけでも結構大変でした。

足も非常に小さくて、サイズが合い尚且つデザイン的にも似ている手持ちの靴が全くなかったので、仕方なく手作りするしかありませんでした。

本当は白いピンヒールですが、白は浮き過ぎて合わないので、銀色のフラットシューズに変更。この切りっ放しで大丈夫な銀色の布は、実はアイロン台の替えカバーの切れ端です! 捨てないで置くと、意外に役に立つ物です。

P太はこのアバターで、VRの中で気持ち悪いダンスを踊って御満悦です。P太の参加しているVRチャットの男達は、決まって女性しかも美少女キャラのアバターを使っているそうです。…そうだろうよ(ケッ)

そもそもVRを楽しみたいなんて人間は、当然現実逃避願望がある訳で、はっきり言って彼の参加するVRコミュニティは不幸な人間の坩堝です。P太曰く、リア充なのは自分ともう一人だけだとか。発達障害率はほぼ100%、GLBT率と毒親率も極めて高く、就職、自立するのは生涯無理だろうと思われる人達が非常に多いと言っています。

念の為、発達障害や性的少数者、親に恵まれなかった人達が必ずしも不幸だとは限りません。が、少なくともP太のVR仲間達は概ね生き辛い状況にあり、実際に自殺未遂騒ぎも度々起きます()

余りに悲惨な状況で捨ておけず、P太は彼等の為にヲタク専用のネット・カウンセリングを行っていて、それを学ぶ為に数年前に大学で講習も受けました。蛇の道は蛇っつーか、やはりヲタにはヲタしか分かり得ない事が多いようで、プロのカウンセラーよりずっと話し易く役に立つと、評判が良い(あくまで自画自賛だが)だそうです。英語が話せて時差が合えばですが、VR参加者じゃなくてもOKで、実際に世界中から依頼があります。

私なんかは、不幸な人の側に居るだけでも伝染して気が滅入り耐えられませんから、そう言う人達の話を長々と聞いても平気で居られると言うのは、一つの稀な才能だとはつくづく思います。

 

 

 


2023/11/27

ガラス製小花+シズク型ビーズのネックレス

6月に訪れたArdingly アーディングリーのアンティーク・フェアでは、半屋内会場Pig Sheepでこのネックレスも買いました。ただしこれは姉へのプレゼント用ではなく、自分用です。値段は最初5ポンドと言われたのを、チェーンが切れて壊れているからと訴えて、3ポンドに値切りました。勿論切れたチェーンは勿論家に帰ってから修理しましたが、たったそれだけなのに、単なるガラクタから今でも着用可能なジュエリーに蘇り、見違えるように魅力が増して見えたのには、我ながらちょっと驚きでした。

壊れたネックレスに5ポンドはアンティーク・フェアでも高過ぎですが、この修理された状態なら、もしビンテージ・ジュエリー専門のストールとかであれば、20ポンド以上で売られていそうです。

中央にのみオーナメント類が付いているので、ペンダントと呼ぶ方が相応しいかも知れません。カットの美しい無色透明のシズク(小さいドロップ)型とソロバン型ビーズのあちこちに、パステル色のカラフルな小花があしらわれています。この小花も雌蕊も含めガラスで出来ていますが、奇跡的にカケが一つもありません。

恐らく、192030年代のチェコスロヴァキア製です。以前からこんなネックレスが欲しかったのですが、売られているのが、商品を物凄く丁寧に陳列している専門ストールばかりだったので、値段の手頃な物には出会えませんでした。姉にとってはボリュームも少な過ぎ、カラフルな色合いが子供っぽくて好みに合わないでしょうが、私の好みにはピッタリ。さり気ないのに一味現代の物とは違っていて、大いに普段使い出来そうなネックレスです。