2023/09/28

夕暮れのウェスト・ウィコムの丘


今年二月に夫婦でバレンタイン旅行として、最初にノーザンプトンシャーのBrackley ブラックリーのアンティーク・モールを訪れた後、バッキンガムシャーの丘の上の風車の村Brill ブリルから更に30㎞程南下し、その日の最終目的地West Wycomb ウェスト・ウィコムにやって来ました。

ウェスト・ウィコムはHigh Wycomb ハイ・ウィコムの西にある古い村で、NT(ナショナルトラスト)管理の「The Hellfire Cave」「West Wycomb Park」等の観光名所がある他、村全体がNTに保護されています。丁度日没時だったので、夕食前に村の中心のすぐ脇に聳える眺めの良い丘West Wycomb Hillへ行って見る事にしました。

時間がない為、今回は車で頂上近くまで行きました。村からの入り口が分かり辛いのですが、この丘の上には割と広い無料駐車場があります。

この丘の上には、村の教区教会St. Laurence’s Churchが在ります。見晴らしの良い小高い場所は古今東西信仰的に有り難られた訳で、教会が立つのは珍しい事ではありません。しかしここで教会以上に眼を引くのが、教会の墓地に隣接したDashwood ダッシュウッド家の巨大な霊廟です。

上空から見ると、六角形になっています。

入り口には鍵が掛っていて、内部には入れません。この壁面に安置された棺も見えますが、多分多くは墓標のみが壁面に掲げられ、棺は敷地の地面に埋葬されているのではと思います。

ダッシュウッド家は貴族(男爵家)で、反対側の丘に建つ「West Wycomb Park」と言うお屋敷に住んでいました。

これを18世紀に建てたフランシス・ダッシュウッドは、財務大臣を務めた事もありますが、道楽と放蕩の限りを尽くした悪名高い人物で、霊廟の丘の中腹には「The Hellfire Cave」と言う頗る怪しい秘密結社の為の人工洞窟まで作りました。この洞窟では、黒ミサ紛いの行為も行われたと言われています。


しかし道楽者らしく、それらの建設労働の賃金は気前良く惜しまなかったようで、少なくとも地元民に多くの働き口を与えると言う地域貢献は果たしたようです。 

夜間はライトアップされ、丘の上に堂々と聳える霊廟の姿は圧巻です。日本の大名クラスでさえ、これ程荘厳な霊廟は持っていませんでした。と言うか、イギリスでもこれ程派手な墓所は中々例を見ないと思います。

続いて、教会にやって来ました。やはりフランシス・ダッシュウッドに寄って18世紀に建設され、ヴェニスのプンタ・デラ・ドガーナに影響されたと言われる塔の先の黄金の球体が独特です。

この季節、墓地のあちこちがスノードロップで覆われていました。

別名夏の教会で、冬期は結構急な坂道の丘を登るのが困難だった為、後に麓に「冬の教会」を建てたそうです。

信仰に有り難がられた眺望の利く小高い丘は、太古から軍事的にも重要だった訳で、この場所は鉄器時代の要塞(Hillfort)跡でもあります。

更に、村から東のハイ・ウィコムの町へ続くまっすぐな道路は、実は古代ローマ時代に開かれた道。この村は、考古学的にも中々興味深いのです。

しばし丘の上を散歩した後は、麓の村のお気に入りのパブで夕食を取る計画を立てていました。

入店すると、未だ夕食を提供するには早い時間だった為、バーで地エールでも飲んで30分程待つ事になりました。

やっと夕食を提供する時間になった時に、オーナーらしき人物がテーブルにやって来て、今夜は「クイズ・ナイト」と言うイベント・デイな為、レストラン席部分は開けておらず、簡単な食事しか用意出来ないと言います。オーナーの説明では、このコロナ渦の不況で、本当は毎晩は店を開けたくない状況にあるが、苦肉の策でこう言ったイベント・デイを設けて、何とか営業を続けているとの事でした。

 

しかし! 前日にこのパブのHPを見ても、そんな事は全く記されていなかったし、入店時にもバーテンダーから告げられませんでした。このお店の美味しい、他のパブにはない独特なお料理が気に入っていたからこそ選んだのに、もし入店時に知っていれば、他のお店に換えた事でしょう。

仕方なく、ハンバーガーとスカンピなんて在り来たりな物を注文しましたが、これが不味くもなければ特に美味しくも安くもなく。おまけにバーの簡易な席なので、居心地も余り良くありませんでした。

折角楽しみにしていたバレンタイン・ディナーだったのが、結局ガッカリな事に。不況で何処も大変なのは分かるけど、残念ながら今後このお店に来る事は二度とないなと思いました。

 

 

 


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