昨年の冬、暗くて雨が降って天気は悪いのに、夫婦でどうしてもドライブに出掛けたくなった週末がありました。その前の数週間もずっと天気が悪く、出掛けられない週末が続いたからです。しかし改めて天気予報を調べると、その日は東へ行けば行く程天気はマシで、午後には雨は上がるとの事。私達が住んでいるのはイギリス南東部だから、ここから東と言うと大して選択の幅はないのですが、久々に城下町で港町のRye ライへ行く事にしました。
ライへは早い道路が通じておらず、我が家からでもかなり遠いのですが、遅い時間の方が雨に遭わないからと、その日はわざと時間の掛かる、普段は通らない細いクネクネ曲がった田舎道を通って行きました。その途中、「こちら12世紀の教会」と言うサインを見掛け、突然立ち寄ってみる事にしました。
場所は、天下分け目のノルマン征服の戦場&修道院で有名なBattle バトルと、歴史的な村Roberetsbridge ロバーツブリッジの中間。周囲はほぼ牧草地&森林だけの、Mountfield マウントフィールドと言う村の教会です。民家も数軒しか見当たらず、これでは村ではなく集落規模じゃないかと思いましたが、実は教会から結構離れた場所に村の中心があるそうです。
周囲の土壌は石灰質で、白っぽいのが分かります。この近くには、大きな石膏の採掘所&工場もあるそうです。
正式名称をAll Saints' Church, Mountfieldと言い、1107年頃建設が始まったとされます。12世紀と言えば、イギリスではノルマン時代。日本では平安時代である事を考えると、かなりの古さなのが実感出来ます。ノルマン様式はヨーロッパ大陸ではロマネスク様式と呼ばれていますが、私が若い頃に良く彷徨い歩いた中欧では、ロマネスク時代の教会はかなり珍しく滅多に出会えませんでした。
しかしイギリスではノルマン時代の教会が割と多く、特にこんな寒村に残っていたりします。外観はシンプルそのもので何の変哲もない小さな教会こそ、実は当時の姿をそのまま維持していたりします。
本来教会の正面は西側ですが、イギリスの教会の場合、南に通常の出入り口が設けられている事が多いようです(時々北側も)。その出入り口に木製のポーチが設けられているのも、イギリスならではのように思います。
ここの木製ポーチは、一際武骨で歴史を感じさせます。
想像した通り、内部も極めて簡素でした。アーチ型の天井まで漆喰なのは、結構珍しいかも。
あ、古い壁画が残っている。文字のような物が、文様のように散らばって描かれています。その他にも、太陽のような物やレンガ壁模様が薄っすらと見えます。
祭壇側(東)から身廊を眺めたところ。記憶に全くないけど、今写真を見ると、この時一瞬だけ陽が差したような。
厳めしい石造りのFont 洗礼盤は、ノルマン時代作でサセックスで二番目に大きいそうです。一方市松模様のタイルの床は、ヴィクトリア時代に好まれたデザイン。
もしかしてこの不思議な壁の穴は、Hagioscope 祭壇遥拝窓と言うやつか?? 北欧&ドイツやフランスの教会でも見られるそうですが、イギリスでも割と珍しいようです。
分厚い壁の非常に小さな窓が、ノルマン教会らしさを伝えています。
しかし窓のステンドグラス自体は、イギリスでは大抵ヴィクトリア時代以降に改装されています。
多分それまではガラスの精度が悪く壊れ易かっただろうから、保てなかったせいかも知れません。
ヴィクトリア時代のステンドグラスの人物画は、ラファエロ前派風で超美形揃いなのも、イギリスらしい傾向だと思います。
イギリスの古い教会は、ヴィクトリア時代に大きく修復・改装された物が多いようです。その時代が、比較的経済的に余裕があったからだと思います。例えばドイツ語圏の村の教会だと、バロック時代に建て替えられた物が多く、その典型的な玉ネギ型の教会の塔は、アルプスの山村の典型的な風景に欠かせない物となっています。
教会の更に詳しい情報は、QRコードで読み取れるのが現代ならでは。この案内コーナーからも、今でも村人に大切にされている教会なのがひしひしと伝わります。ホーンジーの古い食器がペン立てとして使用されているのが、微笑ましいと思いました。
勿論、教会墓地での墓石ウォッチングもしました。
ケルト十字の墓標には、やはり目が留まります。
開いた形の本に、美しい天使が寄りそう墓石。
名前や没年享年だけでなく、西洋の墓標には様々な故人の情報が刻まれます。
この埋葬者は、きっと農業に捧げた人生だったんだろうな。 墓石にはトラクターのプリント、トラクターのミニカーもお供えされています。
壁に寄せられて集められているのは、縁者の無い墓石、日本で言う無縁仏かも知れません。
この後、丁度雨が上がった頃にライに到着し、無事散策を楽しめました。村の小さな教会こそ、その場でなければ知り得ない歴史や特徴があり、偶然行き付くのでもない限り訪れる機会はそうないのだから、出会ったら見学するのに限る!と改めて思いました。
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