昨年の秋に訪れた、海辺の町Worthing ワージング近くのHighdown Hill ハイダウン・ヒルで、チョークの採掘場跡地を再利用した庭園Highdown Gardens ハイダウン・ガーデンズを見学した後は、頂上の鉄器時代の要塞遺跡を目指して歩きます。
この一帯は、NT(ナショナルトラスト)の管理になっています。頂上付近は非常になだらかな斜面になっており、最寄りの駐車場からの登りは全くキツくありません。
歩いてすぐに、いきなり古風な箱型の墓石が、ぽつんと一基だけ在るのが目に入ります(周囲のゴミが酷い。…イギリスだからね)。これは18世紀末の地元の奇人John Oliver ジョン・オリヴァーの墓で、彼の職業が近くの風車=millの製粉職人だった事から、Miller’s Tombと呼ばれています。が、それは表向きの職業で、実は密輸団のリーダーだったとも言われています。
彼は84歳まで生き、当時としてはかなり長寿でしたが、死の27年前に他人の土地に勝手にこの自分の墓を建てたり、棺桶も自ら生前に用意してその上で寝起きしていたとか、葬列時(本物)には既に有名人で物珍しさから二千人が参列したりと、奇妙な逸話に事欠かない人物だったようです。
墓を通り過ぎると、すぐに頂上の遺跡が見えて来ます。
鉄器時代のHillfort 丘砦に付き物の、明らかに人工の堀と土手が築かれているのですぐに分かります。
この丘は考古学的にかなり重要で、鉄器時代の前の青銅器時代から環状集落が存在し、鉄器時代の後は最も初期のサクソン時代の埋葬地となり、サセックス(南サクソンの意味)王国の歴代の国王の墓所も在ったそうです。
また第二次大戦時には、軍のレーダーが置かれていました。
緑地が削られて剝き出しになった土壌が白く、確かにチョーク質なのが分かります。
ここからの眺望は、確かに海抜100mにも満たないとは信じられない程抜群です。南には、ワージングの町(の端)と海。海上には、夥しい数の風力発電が立っています。
東には、Brighton ブライトンやHove ホーブと言った大きな街があります。その先に、国際的な観光地Severn Sisters セブン・シスターズの白い崖が見えます。
正にガイドブックに載っているような、セブン・シスターズの崖の形です。当たり前だけど、普通は海上の舟からでもないと眺められません。崖の右端はBeachy Headと言う岬。
北東には、他の鉄器時代の要塞遺跡Cissbury RingやChanctonbury Ringが在ります。
サウスダウンズ丘陵地帯が東西に伸びる北側でも、大して起伏があるようには見えません。中央の少し盛り上がって見える部分は、多分イギリス南東部で三番目に海抜の高く、サウス・ダウンズの最高峰Blackdown Hill ブラックダウン・ヒルではないかと思います。
南西には、まるでキノコのような奇妙な建物が見えます。前出のジョン・オリヴァーが働いていた、風車の羽根を撤去した土台のようです。こんな現役を引退した風車の土台だけは、イギリスで時々見掛けます。
この後ワージングの町へ出て、砂浜も少し歩きました。一日で庭園、山(丘だが)、街、海と歩いた、変化に富み充実した散歩の一日となりました。
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