2024/11/29

ウィンクワースの紅葉 1

久々~に、最近のお出掛け記事です。今年からNT(ナショナルトラスト)の会員に夫婦で復帰し、NTを活発に訪れていますが、イギリス南東部で紅葉が最高潮になったと思われた先月末頃、秋には珍しく快晴と予報された平日がありました。P太が有休を取り、モミジが多い庭園で知られ、イングランドでは屈指の紅葉の名所であるNTの「Winkworth Arboretum ウィンクワース樹木園」に行くのを楽しみにしていました。

ところが、義母からガスコンロが壊れたとのパニックになった連絡が突然入り、その日は諦めなければなりませんでした。

しかし、その週末も珍しく晴れだったので、改めて朝からウィンクワースを目指しました。が、平日ではなく週末とあっては、同じ事を考えていた人達は非常に多かったようで、駐車場は午前中で既に満杯。狭い田舎道には、駐車場の空きを狙う無情の長蛇の車の列。かなり遠く離れた場所に駐車して、歩道のない道路を延々と歩いて来る(危険)人達も見掛けましたが、我々はさっさと諦め、別な場所へ紅葉を見に行く事にしました。

しかし、例えイギリスの自然豊かな森へ行ってみても、イギリス古来の樹木の紅葉は基本的に黄色と茶色(錆色っつうか)だけの為、どうにも日本人には、そして日本の紅葉の美しさを知ってしまった英国人には物足りないのです。

満足出来なかった我々夫婦は、その次の週末、天気はからっきし冴えなかったものの、朝一で再びウィンクワースを訪れました。開園の10時前に到着したし、前の週に比べて天気が良くなかったせいか、今回は駐車場を確保する事が出来ました。しかし余りに人出が多いので回転を早くする為にと、実は前倒しで9時半から入園する事が出来ました。朝早くからテキパキと働くボランティアの方々には、思わず頭が下がります。


入り口には、これからのクリスマス・シーズンに向けてコラボ開催が予定されている、「ひつじのショーン」のディスプレイがありました。

そしてハロウィーンの直後だった為、ショーンの周囲にはカボチャや骸骨が展示されていました。更に、恐らく敷地内で発見されたらしい、アナグマか何かの本物の動物の骸骨も展示されていました(おいおい)。…このドギツいセンス、イギリスならでは。

コロナの間はNT会員を止めていたから数年間ここを訪れていなかった訳で、今までも春のブルーベルの季節とか数回しか来た事がなかったようにも思います。しかし、何せ樹木がメインなので、NTの庭園としては正直地味だし、実際に道路にさえ長い渋滞が出来る程の混雑は、今まで一度も経験がありませんでした。ここの人気がこんなに高まったのは、本当にここ数年の事ではないでしょうか。


いつの間にか駐車場は増設され
ていて(それでも前週は満杯になった)、今までのカフェやトイレも最早小さ過ぎるので、新たに大きなビジター・センターを脇に建設中でした。

確かに入場者はかつて見た事がない程多く、朝から子供の奇声や遠吠えが、広大な敷地内の丘や谷間に響き渡っていました。

やはり一番多いのは白人客(多分生粋の英国人)ですが、その親子連れの多くは、これ程素晴らしい紅葉に大して見向きもしません。聞く話に寄ると、割と近年まで、イギリス人の間では紅葉を愛でに出掛ける、つまり紅葉狩りと言う習慣は、余り一般的ではなかったとか。

次に多いのが中国人で、現在イギリス中の多くの特定の場所で、中国人が急増して集中している事に改めて驚きます。恐らく在英&訪英中の中国人の間のSMSで、「今ウィンクワースがイケてるよ」とかバズっているのかも知れません。もっとも多くの中国人は、ここでは紅葉ではなく栗拾いに夢中になっていました。

イギリスの秋の様子や紅葉は、同じ北半球の温帯と言えど、日本のとは大分違います。日本の紅葉は12週間で野山や森、庭園全体が劇的に色付き変化しますが、イギリスの紅葉は植物の種類や立地に寄って始まる時期がてんでバラバラで、数カ月に渡ります。

早い広葉樹で最早8月から紅葉が始まり、しかし秋に入ると暴風雨が多くなるので、紅葉の進んだ樹木から順に風で葉がとっとと落とされます。

その為、例え数本だけ美しい紅葉の木があったとしても、その隣の木は既に冬木立だったり、逆に未だ夏同様に葉を青々と茂らせている場合もあります。全体的に見事な紅葉のピーク!と言うのは、ここでは期待出来ません。

それ故に、紅葉の色合いの豊かさだけでなく、紅葉が最高に美しく見応えあるのは日本とカナダとされ、この時期を狙ったパック・ツアーも多く組まれているようです。

このウィンクワース樹木園は、20世紀前半に一人の医師に寄って築かれました。彼は環境学には興味があったものの、植物の専門家だった訳でもなく、単に樹木が好きで、自分の農場の敷地にコツコツと数千本の木々を植えたそうです。現在ならまだしも、1930年代当時に、これだけの外国の樹木を個人で集め育てるのは、さぞ大変で熱意(と財力)が必要だったと想像します。

この庭園自体は1952年にNTに寄贈されましたが、脇の高台に私有地のお屋敷が残っているので、もしかしたら今でも其処に医師の子孫が住んでいるかも知れません。NTとしては、全国で唯一のarboretum=樹木園だそうです。

 

 

 


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