2024/05/27

三春町文化伝承館の紫雲閣

 

三春町に在る、昔の裕福な商人の瀟洒なお屋敷を修復・公開している「文化伝承館」のすぐ隣には、離れの「紫雲閣」があります。東日本大震災で建物が傷み、安全性に支障が出て長らく閉ざされていましたが、修復が進み昨年の桜の開花時期に合わせて一般公開する事が決まっていました。しかし、開花が予想より大幅に早まった為、お友達のキチ吉ちゃんの三春訪問時には公開が間に合いませんでした。そこで、後日私一人で紫雲閣を訪れました。

場所は、文化伝承館の北西の一段上。王子神社と紫雲寺の中間にあります。紫雲閣の名は、このお寺に因んだ物と思われます。

伝承館は数寄屋造りの木造建築ですが、この紫雲閣はなまこ壁の蔵屋敷。三春に土蔵は数多くあれど、蔵を座敷として利用するのは相当珍しかったそうです。

南向きの高台にあるので、見晴らしと日当たりは抜群。庭のシュロの木が、モダンな雰囲気を加えています。

すぐ隣の離れと言っても、母屋との間にはかなり急な段差(土手と言うかほぼ崖)があります。

その土手に私用の階段が設けられていたのでもない限り、母屋と離れを行き来するのは神社やお寺の参道を通らなければならず、結構面倒だったと思われます。

この離れは、元持ち主の商人・吉田誠二郎の趣味の謡曲の練習や披露の場として建てられたそうです。何はともあれ、離れとは言え母屋に負けない程贅沢で、随所に技術・意匠を凝らした内装が見られるのに違いありません。

やはりやはり、床の間の要、床柱からして物凄く高級そう。

伝承館でもそうでしたが、何故か床柱が途中でぶった切られているように見える造りがありました。

床近くに設けられた、小さな扉。

開けて確認はしていませんが、茶道の為の水屋や躙り口だと思います。

出ました、建具大工のプライドが感じられる、驚く程細かい桟の障子戸。

江戸後期から明治時代に掛けて三春藩一帯は和算が盛んで、図形問題を解いては算額(でかい絵馬のようなもん)を神社仏閣に奉納するのを競い合ったと聞きます。こう言う障子の凝った桟を見ていると、和算が影響しているのでは?と勝手に想像する程幾何学模様的です

階段の途中には、こんな明り取りの窓(…プライバシーはない)

二階へ来ました。ここの床の間も、圧倒的な高級感を放っています。

欄間の木彫は、宮大工レベルの立体感。

戸袋の襖絵は絵巻のようだし。

こんな小さな障子戸まで凝っているし。

和の粋を、凝縮したような丸窓。

丸窓の縁すら、この凝りよう。

そしてこの蔵屋敷のハイライト、中華風のお座敷です。

和風の座敷にこの煌びやか過ぎる装飾は、正直趣味が良いとは言い難いのですが()、工芸品としての技術的には目を見張る物があります。


もしかして鳴き龍の仕組みになっている?と疑うような天井。円に描かれた灰色は、雲を表しているようです。

東照宮を思い起こさせる欄間。

「キングダム」の背景に描かれているような(もうちっとマシな表現ないのか)文字。襖に木彫の文字をはめ込んだと言うアイディアは、今見ても斬新です。

襖紙(実は布製?)の意匠も興味深い。

文字がびっしり過ぎると、正直落ち着かない。

入館無料の伝承館と違い、こちらは入館料が掛かりますが(200円。郷土人形館と共通、更に歴史民俗資料館との共通券300円も有り)、伝承館と共に見応えはあり、歴史や建築、美術工芸に興味がある人には特にお勧めです。

 

 

 


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