昨年の夏、ソウブリッジワースのアンティーク・モール街を訪れた翌週位に、エセックス州のColchester コルチェスターを夫婦で訪れました。この町の郊外の布地屋さんに行きたかったのと(お陰で好みの布地をイギリスとしては安く買えました)、今迄見逃していた幾つかの遺跡を訪れたいと思っていたからです。コルチェスターはローマ時代に起源を持ち、イギリス最古の都市と主張しています。今でもローマ時代の城壁の一部が残り、それ以降の時代の遺跡も、ノルマン時代の城を始め点在しています。
まず訪れたのは、St. Botolph’s Priory 聖ボトルフ小修道院跡。この場所は、現在のColchester Town駅のすぐ北で、かつてローマ時代の市外壁の在った場所の外側南東に当たります。
イギリスに古城や修道院の遺跡は数多くあれど、壁一枚だけとか礎石のみが僅かに残っている場合もあります。しかしここは、当時の建物の様子に思いをはせる事が出来る程、十分廃墟らしさ(?)が残って絵になる遺跡だと思いました。
例によって、16世紀の国王ヘンリー八世に寄る修道院解散法により、ここも修道院としての機能を失い、徐々に廃墟化して行きました。
修道院の名前の元となる聖ボトルフことBotolph of Thorney ボトルフ・オブ・ソーニーは、アングロ・サクソン時代の7世紀のイングランドの修道院長で、後に列聖されました。この名に因むキリスト教施設は、イングランド南東部と東部に特に多く残ります。
この聖ボトルフ小修道院は、ウィリアム一世に寄るイングランド征服の後の11世紀末に、サクソン時代に既に設けられた教会を元に、国内初のアウグスチノ派の修道院として創建されました。完成したのは1177年で、建設に80年近くを費やしたようです。
prioryはabbey=「大修道院」に対して「小修道院」と訳されますが、在りし日の状態の復元図を見ると、規模はそれなりに大きかったように見えます。
確かに、元教会の西側の正面ファサードからして立派です。
正面ファサードのアーチを見れば、大抵その教会や大聖堂の規模が想像出来ます。
建築材料の煉瓦は、古代ローマの城壁を再利用しているそうです。
所々に、典型的なノルマン様式の装飾が残っています。
修道院が解散させられても、付属礼拝堂や教会(の機能)のみは教区教会として生き残っている事が多く、ここも遺跡のすぐ南隣にSt. Botolph’s Churchが立っています。
つまりイギリスでは貴重な、サクソン時代に起源を持つ教会です。現在の建物の大部分は19世紀に再建された物ですが、中々大きな教会建築です。内部も気になりましたが、扉が閉ざされて中に入れず。
また全体の写真を撮ろうにも、周囲に広い場所(逆光になっている東と北側の遺跡以外)が全くありませんでした。
遺跡と教会の合間の墓地は、市民革命後の遺跡が一層荒廃した後に設けられた17世紀以降の物。ここには、何人かの著名人が眠っています。
これは何かと言うと、地下墓所に通じる入り口だそうです。恐らくこの石板を引っ張り上げると、地下墓所に通じるようです。
遺跡としては大変興味深くロマンすら感じられるのに、敷地内ではホームレスやアル中・ヤク中が騒いでいて、決して治安の良い場所ではなかったのが残念です。
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