イギリスで今年四回目のフリーマーケットは、三回目から雨天中止を挟んで二週間後となりました。基本的には毎週日曜日開催の予定なのに、結局この二ヵ月で実際に開催されたフリマは、天候不良に寄り半分以下だった訳です。しかし四回目のフリマは、早くから晴れと予報され、気温も上がってようやく夏らしい気候だった為、ほぼ満席に近い出店数でした。ただし正午過ぎ位から、ほとんどのストールが早々と店仕舞いを始めていました。出店数は多かったものの、この日の客の足は悪く、売れ行きが悪かったからだそうです。何故ならイングランドが参戦した女子サッカーW杯の決勝日で、時差の為に丁度フリマの開催時に試合が行われていたからです。
この日の私の収穫は、出店数が多かったのにも関わらず、やはり前回や前々回と似たような具合でした。ドール服用の手芸材料やリぺ用の中古人形は入手できたものの、ビンテージの収穫はありませんでした。ビンテージの販売自体が少なくなって来ているのもあるだろうし、元々ビンテージは単なるコレクションであって至急必要な訳ではないし、ジュエリー以外は保管場所も馬鹿にならないものだから、余程好みのアイテムじゃない限り、買うのを躊躇し勝ちと言うのもあります。そんな中、中々良さげなビンテージの絵本に出会ったので、久々に古絵本を二冊買ってみる事にしました。
その内の一冊が、この仔猫が主人公の絵本です。サイズは20×18cm位のハードカバーで、背表紙は傷んでいますが、中面は落書きもなく印刷の発色が綺麗なままです。凄く好みの絵柄ではないものの、猫盛り沢山だし、いかにも1950年代らしい作風で、ファッションやインテリアが興味深いと思いました。タイトルのロゴにも、50‘sらしさが溢れています。
これは裏表紙。発行・印刷はイングランドですが、元々の出版はアメリカで、所々に50年代の華々しかったアメリカ文化らしさが漂います。
中表紙を見ると、タイトルの「MIMI」の他に「The Merry-go-Round CAT メリーゴーラウンド猫」と言うのが付け加えられていて、ちょっとオチばれ。
お話は、ミミと言う名の仔猫の紹介から始まります。ミミには沢山の友達がいましたが、「凄く特別な友達」は未だいませんでした。そしてミミの友達猫は、皆それぞれ「凄く特別な友達」を持っていました。
例えば、ミッシー(お嬢様と言う意味)にはアマンダ老嬢と言う特別な友達が居て、ミッシーをフカフカで居心地の良い籠に寝かせてくれます。老嬢のミッシーに対する猫可愛がりぶりが、一枚の絵から十分伝わって来ます。
また、ジンクスと言う猫には、食料品店を営むマックギー氏と呼ばれる特別な友達が居て、名前の入った特注のボウルで御飯を食べさせてくれます。
シャムの仔猫っぽいミスチーフ(いたずらっ子と言う意味)の特別な友達は、メアリー・スーと言う少女で、大きなピンクのリボンを結んでくれたり、毎日沢山遊んでくれます。ミスチーフを羨ましそうに窓から覗くミミが可愛い。
ここまで来ると誰もが気付きますが、ミミの言う「凄く特別な友達」とは飼い主である人間の事で、ミミは人間に飼われていない野良仔猫なのです。良く「犬は主人を必要とする、猫は人間を召使いとして必要とする」と言われていますが、特別な友達はぬこ様の下僕よりはマシか…。
私が知る限り大抵の猫は、人間を「お母さん」として必要としているように見えます。そしてその「お母さん」とは、一生懸命世話してくれて可愛がってくれる人間であって、必ずしも女性であったり一人だけである必要はないのです。姉の家の灰斗にとっては、多分義兄がお母さんなのではと思っています。
野良仔猫のミミは、自分も特別な寝床で寝て特別な御飯を食べて暮らしたい!と、特別なお友達を探し始めます。
八百屋、肉屋、花屋、お菓子屋と当たってみますが…。肉屋を「butcher」ではなく「meat shop」、またお菓子屋を「sweets shop」ではなく「candy shop」と記している所がアメリカ作の絵本ならではです。
お店屋さん達は揃って親切で猫好きで、ミミにミルクや魚やキャットミントやお菓子をくれました。しかし皆既に猫を飼っていて、誰もミミの飼い主にはなってくれません。
その内犬に追っ掛け回されるわで、やっぱり安全な「ずっとのおうち」が欲しいにゃと願うミミ。すると、何だか楽しそうな音楽や笑い声が聞こえてきました。「陽気な」と言う意味で「gay」と言う単語を使うのも、50年代ならではの流行です。
その音楽の先は、メリーゴーラウンドでした。幸せそうな雰囲気でいっぱいです。
周りを見渡しても、他に猫は居なさそうです。そこでミミは、一人の朗らかな人間の足にシュリシュリしてみました。それはチャーリー・チャックル氏で、実はこのメリーゴーラウンドの経営者でした。
チャーリーさんは、ミミをメリーゴーラウンドの上に乗せてくれました。何て楽しいんでしょう。ここにずっと居たい!と、ミミはすっかり気に入りました。他のお客も、仔猫の飛び入りに大喜びです。
それ以来、ミミはメリーゴーラウンドのフカフカのクッションの上で眠るようになりました。
チャーリーさんは、ミミに鮭と黄色いクリーム(カスタードの事か?)を毎日与えてくれます。日曜日には、鶏肉もくれます。アメリカでは、例え缶詰でも鮭の方がチキンより安いんでしょうかね??
そしてチャーリーさんは、ミミに「M」のイニシャル入りタグ付きの赤い首輪を付けてくれました。誇らしそうなミミ。どうして彼がミミって名前を知っているのか?…なんて野暮なツッコミは、考えっこ無しで(笑)。
メリーゴーラウンドのチケット売り場でも、ミミは招き猫として大人気。今や日本のあちこちのローカル鉄道線では猫駅長が運営促進に貢献していますし、猫カフェが世界中に広まるずっと前から、イギリスでもパブの看板猫や教会猫が活躍して来ました。
こうして晴れてミミは、野良仔猫ではなく「メリーゴーランド猫」になり、ずっとのおうちと凄く特別なお友達を手に入れました。チャーリーさんが結構御高齢なのが気になりますが、全体的に猫に寛大で優しい社会なのが感じられる、猫好きにとって嬉しい絵本です。
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