昨年秋に訪れた念願のLincoln Cathedral リンカーン大聖堂で、ガイドツアーに参加して内部見学しています。
このScreenと呼ばれる内陣障壁も、多くは大聖堂で最も装飾の凝った見所の一つです。教会や大聖堂は基本的に万人に開かれ、かつては貧しき人も(拝観料を払わずに)浮浪者も家畜でさえ入る事が出来ました。その為、かなり不衛生だったそうです。しかしこれより先は聖域で、不浄な者を遮断した、聖職者や許可された者だけが入る事の出来る特別な領域と言う意味でした。この時はコンサートが開かれる予定だったようで、内陣障壁の前にステージが設置され楽器が並んでいます。しかしドラムって…、教会でロックでも演奏するのか??
スクリーンのみならず、この周辺の彫刻の精巧さは、確かに凄い。
透かし細工の空洞の中も、実は彫刻されています。言わば、日本の宮大工の透かし彫りの石版。石工師の技術を極めたと言うか、執念と言うか、鬼迫のような物さえ感じます。
しかしこれら匠の石彫が、精巧だからって全て美しいかと言えば…、気持ち悪い人物や怪物も沢山彫られています。
この内陣の側廊(周歩廊)の床には、かつては見事な墓標の銅板が嵌め込まれ覆われていたそうですが、全て清教徒軍に引っ剥がされました。確かに当時の文化遺産は地位や権力の象徴でしたが、何でも破壊する清教徒革命。中国の文化大革命を、思い起こさずにはいられません。歴史家にとっては、オリバー・クロムウェルの評価は「民主主義・議会政治の先駆者」とか是非が分かれる所ですが、現在概ね王室を慕っている英国民にとっては総じて不人気です。共和制にしたと言っても、結局独裁者でしたしねー。
ここは内陣のSt. Hugh Choir セイント・ヒュー・クワイヤ。聖歌隊席です。聖歌隊席も、大抵は木彫が非常に細かくて凝った、大聖堂の見所になっています。
様々な天井のヴォールト(ゴシック建築のアーチ型の梁)も、リンカーン大聖堂の見所の一つですが、その中で最も興味深い、この聖歌隊席の天井の非対称に複雑に構成された「crazy vaults 気狂いヴォールト」を、どうも撮影しそこなってしまいました。
聖歌隊席に、一段高い説教壇のような一際豪華な席があります。これが「Cathedra カテドラ=司教座」でして、大聖堂が単なるデカい教会ではないのは、司教座が敷かれたかいないかの違いなのです。「へええ、初めて知った! 面白―い」とP太は驚いていましたが、…そんな事も今まで知らなかったのかよと、夫の歴史と宗教への関心の薄さに改めて内心驚愕しました。君、一応洗礼受けてキリスト教系の学校に通っていたはずだよね?
この聖歌隊席脇の、ガイドさんの説明がなければ絶対見落としそうな地味な棺には(棺とすら気付きにくい)、実は英国王室史にとって結構重要な人物が眠っています。ランカスター公爵夫人キャサリン・スウィンフォードと、その娘のウェストモーランド伯爵夫人ジョウン・ボーフォートです。二人は、ヨーク朝とその後のチューダー朝(※ランカスター家の血を引く)の共通の先祖に当たります。
続いて、この約90分のガイドツアーの最終案内地、祭壇の後ろ側へ向かいます。
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