12月に入ったのにも関わらず、ニュースは深刻な物価高と貧困、あらゆる公共機関のストライキの嵐、ウクライナでの戦争で溢れ、クリスマスを心待ち出来る雰囲気では全くありませんでした。実際イギリスのクリスマスそのものが、最早私にとっては全く楽しくなく(日本の方がマシ)憂鬱の種でしかありません。地元の街の中心部へ行っても、相変わらず心躍るような商品は皆無。おまけに、本来商売にとって12月は一番の稼ぎ時のはずなのに、この不景気のせいで明らかに活気がありません。そこで、少しでもクリスマスらしさを味わいたいと、P太が金曜日に有休を取った日に、城と大聖堂の在る歴史的な町Rochester ロチェスターに出掛ける事にしました。
この数日後からはイギリス南東部の天気は見事に雨続きと予報され、またクリスマス休暇時期が近付くとガソリン代が値上がりする為、快晴の日のお出掛けはこの日が最良の選択に思えました。問題は丁度記録的な寒波に見舞われていた時期で、最低気温マイナス7度、日中の最高気温でも2度と予報されていた極寒の日だったのです。
大抵はこの町へ来る時は、メッドウェイ川に架かる橋を渡って北西から入り、駅周辺の有料駐車場を利用しますが、今回はナビに従って南側から入りました。実は中心部からそう遠からぬ住宅地の路上に、無料で時間制限無しの駐車スペースがあったので、今回は其処に車を止めました。駐車した場所の近くに、こんな立派な建物が。私立学校かと思いましたが、慈善団体の建物だそうです。建造は17世紀。
更に先に進むと、「Restoration House」なる歴史的な建物に出くわしました。国王チャールズ二世が滞在したと言われる、やはり17世紀築のお屋敷で、航空地図で確認すると庭園が見事なようです。
結構すぐに、ハイストリート(目抜き通り)に到着。この建物は、ビジターセンター兼ユグノー博物館。
市外壁の名残りの側に立つ為、「City Wall」の名を持つパブの看板。ロチェスターはかつては「市」でしたが、今はイギリスでは数少ない、大聖堂を持つのにも関わらず「町」の指定です。ただし、単一自治体(政令指定都市に近いかも)Medway メッドウェイの中にあります。
この町ですらクリスマス前の12月にしては人が少なく活気に欠ける…と思いきや、この日は凍てつく寒さに加え、鉄道の大規模なストライキが行われていたのも原因して、観光客が余り来なかったようです。
クリスマス・ショッピングの人混みでの感染を心配して来た私達夫婦でしたが、拍子抜けしました。感染のリスクは少ないものの、Xmas後に沢山の店が閉店を余儀なくされるんじゃないかと返って心配です。
普段なら結構観光に人気の町なので、イギリスとしては割と個性的な店舗が連なっています。
ここは化石専門店で、店名は「恐竜掘ったる」。
私がロチェスターへ来たかった目的の一つは、この生地屋さんを訪れる事でした。私が知る限り、イギリスで最も魅力的なプリント・コットン生地の専門店です。数年探している柄布がこの店ならあるかもと睨んでいたのですが、品揃えは意外とモダンな柄が中心で、結局ここでも出会えませんでした。しかし、今回も素敵なカット生地を何枚か買う事が出来ました。
歴史的な見応えのある建築物が多い事もあり、街歩きの楽しいロチェスター。これは元ギルドホールで、現在は博物館になっている建物。
この屋根の天辺には、黄金の帆船の風見があります。
その隣の建物も立派。今はイタリアン・レストランですが。
この建物が凄く傾いている事に、今回初めて気付きました。多分傾いたまま、百年以上も立っているんだろうな。
メッドウェイ川に架かる橋を渡って、向こう側にも行きました。
この橋の上は、城全体を眺めるのに格好のスポットで、更に観光気分を味わうのに持って来いだからです。
川は河口に近いので川幅がとても広く、海同様に潮の満ち引きがあります。船も多く利用されている為、港町の雰囲気もあります。
この川から西は、Stroodと言う別な町で、明らかにロチェスター程は雰囲気が良くありません。ただし大きなチャリティショップが在る為に行きましたが、この店に倒れそうな程酷い咳を始終し続けている女性客が居まして(勿論マスク無し)、例えコロナではなくとも絶対何かの感染症には罹っていそうなので、誤って近付かないよう緊張し、結局怖くて早々と店を出ました。そんなに具合が悪いなら、お願い出歩かないで💦
その後、古代ローマ時代の要塞跡地に建てられた、ノルマン様式の城の最良の見本の一つと言われるロチェスター城も訪れました。ところが、無料の敷地内に入る門はどれも閉ざされていました。城自体だけでなく敷地全体が閉鎖されているなんて、初めて見ます。
雪が積もったので、訪問者が敷地内で滑って転んだりしない為には、塩を撒く等の安全対策をしなくてはならないのですが、多分その費用を出せない&出したくないが為に完全閉鎖したのではないか、と言うのがP太の見解です。
しかし敷地に入らなくとも、午後の西側から城を眺める絶好のスポットを知っていました。
何はともあれ、積雪自体が珍しいイギリス南東部では、雪を被ったロチェスター城を眺められるのは滅多にない機会です。
城壁の窪みには、ホームレスの人々が住み着いていました。この寒さを乗り切るのは、彼等にとって一大事かと。
城の東側の窪地はかつての掘で、また墓地でもありました。墓石の幾つかは、掘の塀脇に未だ残っています。
城のすぐ東側には、イングランドの大聖堂としては二番目に古い起源を持つロチェスター大聖堂が立っています。
大聖堂にしては小ぶりな建物ですが、典型的なノルマン様式の教会建築の特徴を見る事が出来ます。
三時半位の日没とほぼ同時に町を去りましたが、気温は既にマイナス3度になっていました。しかし、ばばシャツやユニクロ・ヒートテックのパンツ、厚手の靴下、一番暖かいコート(キャッチコピーは「着る布団」)等で完全防備して来たので、寒さに縮こまる事もなく快適にお散歩出来ました。
ただし風は余りない日だったから、車の排ガスや暖房の煙等で、空気は喉が痛くなる程淀んで汚れていました。光熱費が恐ろしく値上がった為、薪を燃やして暖を取る家庭が一層増えたのかも知れません。上の写真は、帰路の車内から撮影した、やはりイギリス南東部では余り見られない一面の雪原の風景。
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