日本でも報道されましたが、今月の中頃、イギリスは記録的な熱波に襲われました。たった三日間だけですが、普段は夏でも気温30度を超える日が数える程しかない国だから、国中がうろたえて緊張が走るのには十分でした。暑さで英国初のRed Warning=避難勧告並みの警報が出て、三日目には実際に40度を越えた場所もあり、国内史上最高気温を更新しました。鉄道の線路は熱で曲がり、道路や空港の滑走路のアスファルトは熱で溶けました。
しかし、一番恐ろしかったのは火事です。米国のカルフォルニアやオーストラリア、スペイン、ギリシャ等が、熱波で度々山火事に見舞われる事は知っていましたが、それは気候と土壌の乾き切った、自然豊かな場所でのみ起こる物だと勝手に勘違いしていました。ところが40度を記録した日には、ロンドン近郊の住宅地でさえ熱波に寄る火災が多発しました。ほぼ同時に何件も発生した為、消防車や消防士が不足した程です。
煙草や焚火、BBQ等の不始末だけが原因ではなく、気温がそれ程高くなると、コンポストの中のピートや干し草が自然発火するそうです。通年比較的雨の多いイギリスでも、ここ一ヵ月近く真っ当な雨の降らない場所が多かった為、草木と土壌がすっかり乾燥し切って非常に燃え易くなっていました。おまけに、相変わらず風が強かったのも災いし、集落の大部分が短時間で焼け落ちてしまった場所もありました。
しかしその一方で、イギリス国民は猛暑にまるで慣れていない為、どんなにニュースで「これは災害だ」「出来るだけ外出するな」「スポーツ・イベントは控えろ」「する時は長袖を着ろ」「日焼け止めを塗れ」「帽子を被れ」「水を十分補給しろ」等の注意勧告をしても、聞かぬ構わぬ顧みぬバカは多いもので、ひゃっは~と祭りのように浮かれて出掛けて行き、多くが半裸でロブスターの如く赤焼け状態(それは日焼けではなくキッパリ火傷です)になっていました。そんな輩でも助けなくてはならない救助隊や医療従事者は、心底気の毒だと思いました。
我々夫婦はどうやってこの酷暑を乗り切ったかと言うと、その間は幸運にも外出する必要は全くなく、朝9時までには家中の窓とカーテンを閉め切り、一台だけの移動式エアコンをフル稼働し、扇風機数台を駆使して家中に冷気を送りました。それで何とか室内を30度以下には維持出来ましたが、27度と越えると屋内でも熱中症になる可能性はある為、水分をがばがば飲み続けました。あんまり大量に飲んで、胃液が薄まって胸焼けを起こした程です。
しかし旧式で騒音が凄まじくとも、我が家にはエアコンがあって本当に良かったと実感。今でもイギリスの一般家庭でエアコンを持っているのは少数派ですが、気温が35度を超える日が長く続けば、エアコン無しでは室内でも体力消耗して死にますよ。特にイギリスの家屋は、窓が少なく熱が抜けにくい、どちらかと言うと冬仕様に作られていると常々感じます。また暑さにも寒さにも、厚手のカーテンは本当に重要です。熱波は三日で去ったとは言え、家屋の熱された外壁が冷め切るまでは数日間掛ったし、我々の身体の熱に寄る疲労もすぐには抜けませんでした。
熱波の間の愛猫タラちゃんは、朝はいつも通り喜んで庭へ散歩へ出掛けました。日中は40度でも、夜間~早朝は20度位だったのです。気温が30度を超える前までに一度捕獲&撤収しようと試みましたが、いやにゃ~未だ庭で遊ぶにゃ~と抵抗した為、しばらく庭に放置したままにしていました。猫は犬に比べて暑さには割と強い生き物と言われていますが、それでも熱中症に罹る事はあるそうです。
10時頃再び家へ連れ戻す為に庭に出ると、タラちゃんは今まで居た事のないベンチの下でうずくまっていました。これまで経験した事のない暑さにビビッていたようで、抱き上げるとホッとしたようであっさり回収出来ました。
タラちゃんにラブ・コールを送る黒猫は、その後も度々庭に現れますが、こんな姿をしています。雄猫でも体がタラちゃんより小さくて、タラちゃんも心は許していないものの、この子には余り警戒していないようです。
しかし、二軒先のこのチャシロ君には、尻尾をぶっとくして怒り捲りです。
この猫は体格は大きく、タラちゃん同様にお腹たぶ~んです。
イギリスの暴力的な熱波はあっと言う間に去りましたが、インパクトは絶大でした。もう二度とあれ程の酷暑には戻って来て欲しくないと願っていますが、ヨーロッパでの広範囲での雨不足は相変わらず続いており、作物への影響が心配されます。私の住む地域の二週間天気予報にも、雨マークが一つもありません。
コロナの感染率も日本同様に増加していて、おまけにイギリスではサル痘の感染例も多く、物価高も凄まじく、交通機関もパニック状態で、先々を考えると心配事の多過ぎる世の中です。しかし、自分が心配しても正直余り意味のない事が圧倒的に多く、そんな暇があったら猫を愛でて今を楽しむのに限るのかも知れません。
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