昨年の秋の紅葉の季節、イングランド屈指の紅葉の名所NT(ナショナルトラスト)のWinkworth Arboretum ウィンクワース樹木園を訪れたいと思っていました。が、やむを得ない理由で絶好の紅葉日和を見逃してしまい、次に週末に訪れた時には混み過ぎて駐車場に空きが無く入れず、結局その次の週末の天気の冴えない日に、朝一番にやって来てやっと入園する事が出来ました。朝一に来たので午後一には一通り歩き廻って見終わり、小雨も降り出して来た事だしウィンクワースを去る事にしました。余った時間で、その南に位置する、イギリス南東部では三番目に高く、国立公園サウス・ダウンズ内では最高峰(と言っても海抜300m以下)で、やはりNT管理のBlackdown Hill ブラックダウン・ヒルに久々に行ってみる事にしました。
雨が降っていたので車で通過するだけのつもりでいましたが、駐車場に到着した頃には霧雨程度になり歩行不可能ではなかったから、しばし歩いてみる事にしました。
ウィンクワースと違い庭園ではなく単なる自然保護区だから地味ですが、こんな天気の日でさえ、犬の散歩等の散策者に必ずちらほら出会うのがイギリス。最寄りのNTの駐車場から、しばらく鬱蒼とした雑木林の中の落ち葉の絨毯が分厚い遊歩道を通って行きました。英国南東部の丘に良くある事で、丘の上自体は余り起伏がありません。
そのうち視界が開けて、荒野が広がっていました。土壌がチョークのようなので、樹木が育ちにくいのだと思います。イギリスではハリエニシダが茂るような荒野をmoor、エリカが覆っていればheath landと呼びます。
特に変わった珍しい景色でもないのに、ここは何だか異様な程静かで、浮世離れした場所のように感じられました。実は町からそう離れておらず近くに民家も在りますが、この日は雲が厚くて音を吸収している為か、人口の高いイギリス南東部では必ず聞こえるはずの飛行機や車等の文明の騒音がここでは全く聞こえず、まるで異世界にでも迷い込んだような錯覚を抱きました。
そして、丘の頂上部分には湖と言うか池が点在してました。普通山の頂上には、火口湖やカルデラ湖でもない限り水は溜まりませんが、これまた少し異様な風景です。
浅く見えますが、実は水底は堆積した草や落ち葉等で驚く程深くなっている事があり、また周囲も沈む湿地帯になっている場合があるので、無闇に近付くのは厳禁です。
時々イギリス版「九死に一生スペシャル」のようなTV番組で、こんな場所に突き進んで嵌って戻れなくなった犬を救助しようとして、返って飼い主が抜け出せなくなり、救助隊にギリ一発で助けられたと言うのを見た事があります。助かった場合のみ報道されているから、本当は亡くなる方はもっと多いんじゃないかと…。
ここにはあちこちに眺望台も設けられていますが、生憎この天気なので下界の眺めはこの通り。
こんな地味な場所で天気も良く無く、その上ほんの短時間だったのに、まるでヤバい場所を彷徨ってしまったような、何だか異様に印象に残っている不思議な散歩でした。
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