2025/11/03

チョーク庭園ハイダウン

 

昨年の秋の始め、毎度ながら結構唐突に、天気が良いから夫婦で何処かへ出掛けようと言う事になりました。そして、やはりどうせなら未だ一度も行った事の無い場所が良いと思いました。 

そこで選んだ目的地が、ウェスト・サセックス州の海辺の町Worthing ワージングの北西にある小高い丘Highdown Hill ハイダウン・ヒルでした。この側ならしょっちゅう通過していますが、ハイダウン自体を訪れた事は未だなく、一度行ってみたいと思っていました。

小高いと言っても、海抜は81m足らず。しかし海岸線からそう遠くなく、周囲は更に低い平坦な土地な為ずっと高く見え、実際に眺望は抜群だそうです。その証拠に、ここには鉄器時代の要塞遺跡が在ります。

そして、遺跡の在る丘の頂上の手前に、イギリスでも珍しいチョーク庭園Highdown Gardens があります。チョークは南イングランド一帯の地層に多い全く珍しくはない鉱物で、ドーヴァー海峡セブン・シスターズの崖が白亜なのもその為です。石灰の一種として資源利用される為、イギリス南部のあちこちにチョークの採掘場が在ります。

しかし、チョークは園芸にとっては普通は厄介です。余程アルカリ質を好む植物じゃない限り、土壌のPHを大きく改善しなくてはならないし、そもそも地面がチョークだけだったら根が発育しません。ところがここの庭園は、チョークの採掘場を再利用し、チョーク質を出来るだけそのまま生かしている点が独特なのです。

入場も駐車場も無料ですが、駐車場は周囲の遊歩道用と共有でスペースは限られいてる為、晴れた週末はすぐに満杯になりそうです。まずは入り口で、募金の為の古いポストがお出迎え。  

この庭園は、スターン卿夫妻(Sir Frederic Stern Lady Sybil Stern)が20世紀初頭から50年以上を掛けて、当時貴重だった主に中国やヒマラヤの樹木を集めて築き上げた庭園でした。夫妻の死後、ワージング町に託されました。

採掘場跡の段差を生かした、ロック・ガーデンもあります。水の循環は、太陽光熱の電力で賄っているそう。右手には、洞窟が設けられています。

人工洞窟Grottoは、イギリスの大きな庭園では良く見掛ける物ですが、ここの洞窟には巨大な水晶の原石が飾られていて雰囲気満点。 

この窪地部分が、かつて実際にチョークを削り取った場所のようです。

今は樹木に覆われていますが、その合間に白い崖が見えます。

一見極普通の山林ですが、良く見るとイギリスの古来種ではない、外国の樹木が多く植えられています。極東の植物が多い事から、ここは湿度も高いのではと感じました。私にとっては、竹林はノスタルジックな風景。 

やはりチョーク土壌だけでは植物が育たない為、大抵は腐葉土等を盛ってから植栽します。しかしそうすると根は浅く伸び、時折イギリスを襲うストームやハリケーンの際には、多くの樹木が根こそぎ倒れる被害に遭います。 

庭園は丘の斜面に在り、採掘場跡、木々に囲まれた小径部分、ビジター・センターを囲む上段の庭、中段の庭、下段の庭と、大きく五つに分けられています。

この時期ここで沢山見掛けた植物は、まず「日本のアネモネ」と呼ばれる秋明菊。

秋明菊の白花は清楚で綺麗ですが、明るくポップなピンクも素敵です。

白蝶草と呼ばれる、背の高いガウナ。

この黄色が一際鮮やかな花は、もしかしてセイタカアワダチソウ(goldenrod)? イギリスにとっても、カナダからの外来植物です。

やはり、黄色が目を引くヘリオプシス。

和風庭園で御馴染みの秋海棠も、これ程群生するとまた違った見た目です。

同じ北半球の温帯でも日本とは結構花期が異なり、ダリアは初夏から秋まで長く咲き続けます。

しかし、セダムの一種ベンケイソウの開花は、イギリスでも日本と同じく秋の訪れを告げます。

地面には、原種に近いミニ・シクラメンがびっしり。ほぼ野生化して木陰でどんどん増えるはずなのに、我が家の庭では何度植えても消えた相性の悪い植物です。

アスターも、イギリスのそこかしこで零れ種で増えて雑草化しているのを見掛けます。 

四季咲きのバラの多くは、初霜が降りる時期まで咲き続けます。 

今となっては特に珍しい植物は見当たりませんが、一般人の庭では中々実現出来ない程群生しているので見応えがあります。

樹木では、ガマズミが赤い実をびっしり付けていました。南中国やチベットの原産で、香りの良い花も実も紅葉も楽しめます。

こちらのオレンジ色の実は、やはり中国原産のナナカマド。

人懐っこいロビン(西洋コマドリ)に遭遇。元々ロビンは、余り人を恐れない野鳥です。ロビンと赤い実の組み合わせは、イギリスのXmasカードの鉄板風景です。

堅苦しい程人工的には作られておらず、自然の趣を程良く残して手入れされていて、季節毎に訪れ変化を楽しみたくなる心地良い庭園だと感じました。

 

 

 


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