2025/11/10

秋のヴァージニア・ウォーター 1

 

昨年の秋の平日にP太が有休を取って、何処かへ紅葉を観に出掛けようと言う事になりました。では、やはり未だ行った事のない場所が良いと思い、また紅葉を楽しむのには水辺である事が重要なので、前から訪れたいと思っていたサリー州のVirginia Water Lake ヴァージニア・ウォーター湖を目指す事にしました。

ヴァージニア・ウォーター湖は、有名なウィンザー城の南に伸びる広大なWindsor Great Park ウィンザー大公園の南端に在ります。この人造湖は東西に長く、正面入り口、主要駐車場やビジター・センターは、同名の町に面した東端に在ります。公園や湖自体の入園は無料ですが、専用駐車の料金はとんでもなく高い為、我々は西端の住宅地に駐車しました。これとて4、5台分しかスペースがなく、空きを確保出来たのは奇跡的な位ラッキーでした。

今回は、湖の南岸に沿った遊歩道を歩いて行きます。

周囲は鬱蒼とした森になっています。恐らく、原生林をそのまま生かしているようです。

木陰には、可憐な野草もちらほらと咲いています。これは今までイギリスでも見た事のない花で、中々突き止められませんでしたが、多分Himalayan Balsam(Impatiens glandulifera)で、和名はオニツリフネソウ。ヒマラヤ原産の帰化植物で、この周辺では良く見掛けるようです。透明感のある花色が美しいと思いきや、デカい上に繁殖力が凄まじい外来侵略種な為、日本を始め世界のあちこちで問題になっているとか。

湖と共に、絵になる石橋も見えて来ました。この橋はFive Arch Bridgeと言い、1820年代に建設されました。この場所に18世紀に最初に架けられた木造橋が洪水で破壊されると、18世紀末には石橋が架けられ、続いて現在の橋は三代目になるそうです。

湖岸に生えている植物の根は、まるで水鳥の巣か木の切り株のように奇妙に盛り上がっています。もしかしたら、変化の激しい水位に適応した結果かも知れません。元々この湖は、小川に通じる池程度の小さな天然湖でしたが、18世紀にこの場所を管理していたカンバーランド公爵が、当時イギリス最大の人造湖として拡張しました。 

お天気も良く、南岸から北岸の眺めはばっちりですが、肝心の紅葉はと言うと、残念ながらこの時は未だ余り進んでいませんでした。イギリスの紅葉は八月末から樹木の種類や立地に寄って少しずつ始まりますが、九月末にはほとんど紅葉が出来上がっていた今年に比べ、昨年は進むのが遅かったように思います。

またしばらく歩くと、対岸に白い建物が見えて来ました。

この場所にはかつてFishing Temple 魚釣殿と言う中国風の神殿が建てられ、英国王室の遊園の場になっていましたが、1936年に現在のスイス山小屋風に取って替わられたそうです。 

ダム湖を含む人造湖と聞くと、天然湖に比べて味気なく思えるかも知れませんが、周囲の豊かな自然は大抵厳重に保護されているので、風光明媚な場所が多いのは実は天然湖とそう変わりません。また人造湖は貯水目的と同時に、大抵は観光も考慮され建設されるので、周辺には憩の為の施設も多く設けられています。 

更に歩くと、湖に妙な形の石造物が付き出していました。

18世紀中頃まではここが湖(池)の端で、多分この場所はボート乗り場だったのではと思います。水上に出ない限り陸上からは全く見えないのですが、これらの石造物には湖に向かって顔の彫像が付いています。

そして、このほぼ反対側()に振り返ると、突然イタリアにでも飛んだかのような度肝を抜く光景が見えます。

1819世紀の裕福層の間では、自分の庭園に「なんちゃって遺跡」を建てるのが流行したようですが、これは偽物ではなく正真正銘の「Leptis Magna」と呼ばれる古代ローマ時代の遺跡。と言っても元からここに存在した訳ではなく、北アフリカのチュニジアから建築物の遺物を、わざわざイギリスに運搬して移築したのです。

2009年に修復されたそうです。昔はこの柵の中を自由に歩き廻れたようですが、今は外から眺めるだけです。


このトンネルの向こうにも、遺跡が移築されています。トンネルの上は普通の自動車道で、車からも一瞬この遺跡が見えます。

かつてヨーロッパの王侯貴族達は、中近東の貴重な古代遺跡を、現地人には価値が分からず保護出来ないからと、どんどん解体して自国に持ち帰りました。現在のヨーロッパの国立博物館クラスには、そう言う物が沢山展示されています。随分驕り高ぶった乱暴な思想と行動だと思ったものですが、現在過激派や紛争に寄って現地の世界遺産が異教徒の残骸だからと次々に破壊されている事を考えると、強ち間違ってはいなかったとも言えます。

更に歩いて、この湖のほぼ東端には、こんな物が見えて来ます。

数年前のコロナ渦中、イギリスでも40度を超える酷暑に見舞われた際、水辺に行きたい、特に滝でマイナスイオンを浴びたいと熱望しましたが、山が無いから(余程遠く行かない限り)滝は見れないと心底ガッカリしていました。しかし! 実はこんな近場でも滝を見る事が出来たのです。

勿論この湖が人造なら滝も人工で、古い大庭園で時々見られるCascadeと呼ばれる設備です。しかし、ここまで巨大で天然の滝そののもに再現された物は、中々無いであろうと思われました。この日は水量が多くて良く見えませんでしたが、周りの岩場には洞窟まで作られています。




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