九月の初めに開催されたArdingly アーディングリー(アーディングライ)のアンティーク・フェアにも、夫婦で行って来ました。今年のイギリスの夏は、暑さ自体は厳しくなかったものの、極端に雨が降らず、農作物の収穫に深刻な打撃を与える程の干ばつでした。しかし八月最後の週から、突如一変して雨ばかりの天候になりました。その次の週のアンティーク・フェア開催日も雨、しかも二日間とも酷い暴風雨でした。実際に、バケツをひっくり返したような豪雨に度々見舞われました。この悪天候では広大な屋外の売り場は当然全滅で、収穫も全く期待出来ないかと思いきや、…結果的には私もP太も収穫に恵まれ御機嫌で帰宅しました。そんな中買った一つが、このハンガリーの名窯Hollóháza ホロハーザ(ホッローハーザ)の昔のフィギュリンです。
半屋内のストールですが、屋根からはみ出たびしょ濡れの段ボール箱に突っ込まれて売られていました。値段を尋ねると、1ポンドとの事。フリマ並みの値段で、今時のチャリティショップより安いのは確かです。
高さは約15㎝。段ボール箱に無造作に突っ込まれていた割に、カケもヒビもないミントなコンディションです。埃塗れでばっちくはなっていたので、家に帰ってから拭きました。埃は最早苔のようにこびり付いて中々落ちず、特に狭い部分は難しく、最終的にパイプ・クリーナー、つまりモールを差し込んで掃除しました。釉薬の掛かっていない底面のみは、結局黒ずみが落ちませんでした。
ホロハーザで1950~60年代に製造された、子供や動物を模ったシリーズのフィギュリンで、絶妙なデフォルメの、超撫で肩で手足のひょろ長い独特な造形をしています。人気で買い占める人が多いらしく、20年前には既にほとんど見掛けなくなったと聞きました。例えアンティーク・モール等で高く売られていたとしても、今まで実物に出会った事はなく、ハンガリー本土の蚤の市やアンティーク屋でさえ、一度しか見た事はないかも知れません。
姉妹と思しき二人の少女が仲良く並んで腰掛けて本を眺める、童話的な優しさに溢れるフィギュリンです。
どの角度から眺めても愛らしく、優秀な意匠だとつくづく思いました。まるで、この周囲だけは別世界の空気が漂っているよう。
このシリーズは、本来ほんわかしたポップな色合いの彩色も魅力です。このフィギュリンにも同じ型で彩色付きバージョンが存在するようですが、顔の表現のクセが結構強い為、これの場合は無地の方が魅力的に見えます。
どちらにせよ、共産主義下の表現が色々と規制された中で生まれた、返って当時の東欧ならではの商業主義から懸け離れた純粋さが感じられる造形です。
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