2025/07/10

ノルマン様式のロムジー修道院 2

 

昨年の今頃訪れたハンプシャーのRomsey Abbey ロムジー修道院は、ノルマン様式教会建築の特色を色濃く残した建物自体が見応えに溢れています。

元は五百人以上の修道女が生活する広大な敷地を持つ大修道院だった為、教会の周囲には当時の修道院のその他の建築物の遺跡をあちこちに見る事が出来るようです。

ノルマン様式と言うのは、恐らくイギリス(とフランスのノルマンディー地方)でしか聞かない建築用語です。

欧州大陸ではロマネスク様式と呼ばれている単語とほぼ同意義・同時代で、ウィリアム一世の1066年の征服後にノルマンディーからイギリスに伝わり広まった為、「ノルマン=ノルマンディー式」と呼ばれているようです。

その中でも、「ノルマン・ジグザグ」と呼ばれるアーチの上のギザギザの装飾は、ノルマン様式の典型的な特徴。 

私は元々ゴシック建築が大好きでしたが、イギリスではこのノルマン建築の方が好きになりました。イギリスのゴシックはフランスやドイツ語圏に比べるとイマイチ迫力不足なのに対し、ノルマン様式の方が得体の知れない不気味さに溢れているからです。

その代表が、笑っちゃう位気持ち悪いガーゴイル。元々ガーゴイルは雨樋と言う実用的な装飾でしたが、どう見ても雨樋ではない単なる彫刻もあります。

キモ怖いガーゴイルは、その後の時代のゴシック様式教会でも見掛けますが、ノルマンのは寄りプリミティブで不気味で、中世の教会建築を観察する楽しみの一つとなっています。

ここのガーゴイルには、何だかバットマンのような顔も彫られているし…。 

一体何故神聖な場所の外壁を、邪悪な化け物の彫刻で覆い尽くすようになったのか? 常々もしかしたら日本の鬼瓦のような魔除けの意味があるのかとも思っていましたが、フランスのルーアン大聖堂で最初に悪魔払いのお守りとして飾ったと言う伝説が、一応元になっているそうです。

磔刑のイエス像は、屋内の聖アンナ礼拝堂の物と同じくサクソン時代作で貴重。11世紀の制作にしては造形に優れ、保存状態も良好です。外壁の装飾で唯一?の清らかさに、思わず安堵します。

本当に教会建築好きには堪らない訪れる価値のある修道院でした。この日の一番の目的だったモティスフォントのバラ園が花期を過ぎていて期待外れだったから、その後にここを訪れたのは余計に良い選択でした。




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