2023/11/05

二千年の座標

!アニメ「進撃の巨人」完結。多くの漫画原作のアニメが、せいぜい1期か2期のみで尻切れトンボになったり、一応完結しても酷く話を端折られたりしているのに対し、「進撃」は最初のアニメ化から10年も掛かりましたが、着実に原作に沿って話が進められ、放送局や制作スタジオの変更を乗り越え、ファイナル・シーズン(4)を経て、更に特別版前後編85分放送になってまで華々しく完了しました。アニメ史上でも、中々稀有な素晴らしい事だと思います。制作者側の原作へのリスペクト、また長く支えて来たファン達の偉業とも言えます。

この間、実写映画の大コケ、出演者に死者が出た為舞台化の中止もありました。アニメ1期から2期の間が異様に開いたり、また3期前半の王政クーデター編には巨人がほとんど登場しない為、それを機に作品離れが結構進んだと聞きます(私は王政編は好きだがなー)。しかし、こんなイイ歳になっても10年間変わらずにファンを続けて来て、人生の中でこの作品に出会う事が出来て、私自身は誇りにすら思っています。

一時最終話は劇場公開されるのでは?との噂もありましたが、そうなるとイギリスではすぐには見る事が出来ないので焦りました。しかし、NHKがこんな美味しい番組をわざわざ映画に譲る訳がなく、特番や「おじゃる丸」の進撃化(笑)まで制作してくれました。そんな私のお祝いの気持ちは、流石に打ち上げオンライン・パーティーに金を払う気はなく()、せめてドールで表す事にしました。

まず、「プティットアンティーク」リカちゃん演じる、この話最大の謎で鍵である始祖ユミルさん。身分:奴隷、年齢:二千+α歳。劇中では長らく瞳がはっきりと描かれておらず、また舌を抜かれている為に喋れないので、独白すら一言も台詞がありません。それ故、彼女の思考は今だ謎のままです。

現世での人生を終わらせた時、ユミルは多分20歳代前半で、国王の妻妾の一人としてそれなりの小綺麗な身なりをしていましたが、座標の中では10歳位の子供で奴隷の姿に戻っています。この始祖ユミルの奴隷コス(人間用)も、イギリスのアマゾンで販売されています。

奴隷のドール服を作った事なんて今まで当然なく、一体どうやってボロ感を出すべきか迷いました。素材はどうするか、どの辺まで解れさせて良いものか、汚れはどうするか等です。端は縫い代を折り畳んで縫ったりせず、切りっ放しは基本だと思いました。

が、そうすると縫っている最中からぼろぼろと解れて来て、一応完成しても着用不可能になりそうだったので、結局通常通りに解れ留めはして、完成後に端に切り込みを入れました。

造り自体は極単純で縫う箇所も少なくとも、漫画やアニメで描かれる服を実現するのはやはり大変でした。そして 一番頭を悩ませたのは、実は編み上げの靴です。

世の中にゴマンと存在するリカちゃんでも、奴隷服を着せられる事はないかも…。自分で作っていても、余りに惨めたらしくて流石に楽しくはありませんでした。完成後に霧吹きで湿らせてヨレヨレにすると、何とかそれらしくは見えて来たので、不憫過ぎて汚れまでは着ける気にはなれませんでした。

奴隷と聞くと過去の話のように聞こえるかも知れませんが、実際には今でも度々耳にします。イギリスだと、不法移民が無償の労働=奴隷にさせられる事が多いようです。牢屋に閉じ込められている訳でもなく、脚枷が付けられている訳でもないのに、何故逃げ出さないんだ?と聞かれれば、扱う側は逃げ出せないように精神的にも上手い具合に完全に支配するからです。この始祖ユミルも、途轍もない力を持ちながら、自らの感情に寄る呪縛の為に、座標と言う異空間の中で二千年間も奴隷を続けて来ました。

一方、ジェニー・フレンズの(確か友達のエリーBF)レイフ演じる、主人公エレン・イェーガー氏。職業:兵士(調査兵団所属)、享年:19歳。度々誘拐されるので、主人公なのに長らく登場しない事が多く、最終的には主人公こそが人類最大の敵になると言う、少年漫画らしからぬ衝撃的な展開を迎えました。昨日の敵は今日の友(ジャンプならお約束のパターン)、ただし主人公以外! 殺人数の最も多い主人公として、ギネスに認定されるかも知れません。エレンの最終的な服装は、パーカーもボトムも黒ですが、上下同じ生地にすると制服みたいなフォーマル感が出そうだったので、何気に素材と色を替えました。パーカーはリネンで、ボトムはオックスフォードです。

丈が長目のパーカーは、最初は裏地付きにするつもりでしたが、ドール用では厚みが出過ぎてしまう為、途中から裏地無しに急遽変更しました。4期後半のOPではパーカーのポケットに手を突っ込んで壁の上を歩いているし、ピークからも「ポケットから手を出して」とか言われているので、ポケット付きなのは明らかですが、どんな形態なのかははっきりとは描かれていません。

髪はロン毛にして以来、ちょんまげのように結い上げている場面も多く登場しますが、この長さでは単なる一つ結びのポニテが限界でした。


パーカーの下は本当は長袖シャツですが、重ね着し易いよう半袖にしています。男のフレンチ・スリーブ…、好きじゃありません(笑)。エレンはこのヘンリー・ネックの編み上げのシャツを、子供の頃から成長してもサイズ違いで一貫して着ていて(元々父親グリシャが着ていたようだ)、長袖もあれば半袖版もあります。ジャンと喧嘩する度にシャツが破けるのを気にしていたから、やはりそれなりに気に入って着ているのだと思います。もしくは、破けるとミカサにこっぴどく怒られるから?

この作品に登場する兵団服(軍服)は、規定のジャケットの下のトップスは何を着ても良いようで、エレンは兵団服でもこのシャツを着通しています。白Yシャツを着ている人が一番多いものの、Tシャツを着ている兵士も居るし、兵長だけクラバット付きだし、アニなんかフード付きシャツなんてふざけた格好しているもんね…。

で、タイトルにもした「座標」は?と言うと…、どう頑張ってもクリスマスの電飾にしかなりませんでした~!!! フォトショで多少いじりましたが、いじり過ぎると初めから全部描いた方が余程マシになるので、インチキ具合が半端ありません。更に、遠近感を出す程背景布にもスペースにも余裕がなかった為、張りぼてユミルさんで誤魔化しています。自分で作っといても怖い…()

このドールで見る限り、児童福祉法に引っかかりそうなショットですが、物語の中ではエレンがユミルを奴隷から解放する非常に重要なシーンで、本当はやましさは微塵もありません。

劇中ではエレンは膝で立って背後からユミルを抱きしめていて、ユミルの年端の行かない体躯の小ささを物語っています。しかしリカちゃんとレイフでは、そこまで身長差は無かった為、リカちゃんを台の上に立たせています。

この作品の魅力を語り始めるとキリが在りませんが、手っ取り早い一つに、やはり確立された独特で壮大な世界観があると思います。その進撃の世界観も、絶望的に謎だらけだったストーリー前半と、巨人の謎が大方溶けたマーレ編以降ではガラリと変化しますが、圧倒的に不利な状況で残酷な世界なのは共通していて、それ故に底知れぬ魅力がある設定なのは変わりません。全く空想上の舞台とは言え、現実世界と重なる歴史や社会感があちこちに鏤められ、妙なリアリティがある為に、大人でも話に引き込まれて行きます。

何故アニメ制作会社が途中で変更になったのか長らく疑問でしたが、ウィキに寄れば、最初の制作会社WIT STUDIOは、予め3期で進撃の制作から引退したいと申し出ていたそうです。しかしフィルムの引継ぎは困難を極め、またこれだけ根強い人気作品な上にアニメのレベルも高かったので、後継会社探しは何十社も挫折し非常に難航したとか。そんな中MAPPA(友達の仕事場の近くに在るらしい)が受け継ぎ、完結してくれて本当に有難いと思いました。事実ファイナル・シーズンに入ってから、世界中で進撃の人気がぶり返したそうです。しかし、ドイツのネルトリンゲンを勝手に聖地化し、城壁に進撃の落書きをするのは、同じファンとして恥だから止めてくれ。

今後「進撃の巨人」の公式のエピソードが一切生まれないのは、勿論寂しくもあります。ハリウッドの実写映画化の話もありましたが、その後とんと聞かず、消滅したのかも知れません。元々どう考えても期待出来そうではなかったので、お茶を濁さずこのままそっとしておいて欲しいとも思います。原作漫画に引き続きアニメも完結した今、只ひたすら原作者の次なる新作がどうなるのか興味深々で待ち遠しく思っています。




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