2025/08/28

モーヴァン丘陵地帯の旅 ジョン王の眠るウースター大聖堂 1

昨年の夏の我々夫婦のMalvern Hills モーヴァン丘陵地帯方面の旅の最初の目的地は、大聖堂都市Worcester ウースター(※ウスターと日本語表記される事も)でした。イギリス国内には大聖堂は数える程しかありませんが、全てがイギリス人に良く知られている訳ではありません。例えば、ロンドンのウェストミンスター寺院やセイント・ポール大聖堂、英国国教会の総本山カンタベリーや北の総本山ヨーク、マグナカルタで知られたソールズベリーが、イギリスの大聖堂としては知名度の不動の地位にあるとしたら、Worcester Cathedral ウースター大聖堂は二、三番手と言った処。英国人にとってさえ、「言われてみれば大聖堂が在ったなあ」と思われている程度の知名度です。しかしセヴァーン河畔に立つ絵になる大聖堂で、以前から訪れてみたいと思っていました。

相変わらずのドケチ旅行で、出来るだけ駐車場にお金を払いたくない為(イギリスの駐車料金は高い!)、無料で駐車出来る街外れの普通の住宅地に車を止めました。結構丘勝ちな街で、かなり急な坂道の上です。さぞかし大聖堂の眺めもばっちりであろうと思いきや、何やら手前に醜い中途半端に古い建物が立ち塞がって見えます。

坂を下りた所にも、中途半端に古い武骨な大きな建物が立っていました。一応ホテルと書いてありますが、元は絶対に何かの工場であろうと思われます。

ウースターはかつて城塞都市だったので、この場所には市外壁が立っていたそうです。

その旧城壁沿いに立つ、仕切りの装飾がやたら凝っていて可愛いアパートメント。

思ったよりも割とすぐに、中心部に到着しました。これは付属学校を含む大聖堂一帯の入り口の一つの、Edgar Towerと呼ばれる門。

かつて大聖堂は修道院と一体化していたので、今は廃墟となった修道院部分が脇に立っています。

南の回廊部分から入ります。典型的なノルマン様式の装飾のアーチが残っています。

大聖堂の回廊は、今でも異教徒にとってさえ癒しの場だと感じられる場所です。

回廊は僧寮に隣接してたそうで、Lavatoriumと呼ばれる修道僧達の洗面所が残っています。グロスター大聖堂の回廊でも、同じような設備を見ました。 

天井の装飾がプリミティブで面白く、見逃せません。

稚拙で不気味な中世の石像は、私の好物。

しかし、この広大な大聖堂で、全ての小さく奇妙な石像を探し出すのはかなり難しく、売店の土産物で見た方がてっとり早そうです。

またこの回廊はステンド・グラスも、古い物ではないさそうですが、興味深いと思いました。一つ一つの人物像は多分ほぼバービー人形サイズ(他に形容出来んのか)の小ささで、歴代の英国王と王妃や聖人達が描かれているのだと思います。ヘンリー八世は、六人の妻全てが描かれているようです。

回廊の東側には、チャプター・ハウスがあります。チャプター・ハウスとは、大聖堂に設置されている場合は参事所で、修道院の場合は集会や読書、説教や対話の場として使われたそうです。多くは中心の大黒柱からヴォールト天井が広がる、上空から見ると円型や八角形の形をした美しいホールです。この壁面沿いにずらりと座り、会議をしたそうです。 

また、現在の大聖堂の回廊には、カフェが併設されている事も多いと思います。良く昔の棺桶の隣に席が設けられていたするので、死体の脇でお茶する貴重な体験ができます。

修道院の回廊の中心の中庭は、かつては修道僧達の瞑想の場所だったり、薬草園だったりしたようです。

今は庭園(&墓地)になっている事が多いのですが、ここのは薬草園の名残りを伝える為か、ハーブが中心に植えられていました。



2025/08/27

モーヴァン丘陵地帯の旅 ストラスフォード近くで昼食

ヨーロッパの人は伝統的に宿の予約をせずに突然旅行に出る事が多く、P太も「どうせなら泊まり掛けで出掛けようよ」と急に言い出す事があります。その為、この季節の一泊ならここ、二泊ならこっち方面、と常に幾つかの旅行プランを用意しています。昨年の夏に彼が二泊三日で出掛けようと言い出した時は、前から行きたかったMalvern Hills モーヴァン丘陵地帯方面を迷わず提案しました。

モーヴァン丘陵地帯は、ウェールズ国境から遠からぬイングランドの西部に在る、ヘレフォードシャー州、ウースターシャー州、そしてグロスターシャー州の北部に跨る、イングリッシュ・ローズの名前にもなっている風光明媚な丘陵地帯です。我が家から日帰りで行って帰って来るには滞在時間が少な過ぎて難しく、その近辺にも訪れたい場所が多い事を考えると、最低二泊は必要だと思っていました。

行くとなると、①高速道路4号線から西へ進み更に高速6号線を北上する、②高速4号線から国道417号線を通りコッツウォルズを横断する、③高速40号線で北西へ進み途中から国道で西へ進む、の三つのコースが考えられましたが、ネットの交通情報ともリンクするナビゲーターの指示では、③を通れとの事。お城で知られたウォーウィック辺りで高速を降り、シェイクスピアの出身地として有名なストラスフォード・アポン・エイヴォン近くで正午となったので、横道に逸れて持って来たお弁当を食べる事にしました。

後で調べたら、Snitterfieldと言う村の戦没記念碑の立つ小さな公園です。見晴らしの良い高台にあり、ベンチも用意されていますが、実は真下が交通量の多い国道46号線で相当うるさいのです。

そう言えば、長年イギリスに住んでいるのに、ストラスフォードには一度も行った事がありません。余りに観光地過ぎて行きたいとも思った事がないからですが、シェイクスピアには多少は興味があるし、喰わず嫌いしないで一度位は訪れてみようと試みた事があります。しかし調べると、どう考えても非常に駐車するのが難しく、全ての入場料が馬鹿高いのでアッサリ諦めました。

初日の天気は生憎曇天ですが、そんな訳で私達夫婦のモーヴァン丘陵地帯方面への旅の始まりました。

 

 

 


2025/08/25

葉月の浴衣

 

日本に帰国する度にドール服用の布をしこたま仕入れて来るのに、何故浴衣用の生地は毎回後回しにするかと言えば、浴衣は必ず和柄布ではある必要はなく、西洋の柄布も使えて浴衣らしく見える場合があるからです。 

しかし生憎この所、イギリスで浴衣にぴったりと思える生地に中々出会えていませんでした。

この浴衣に使用した葉っぱ柄の綿生地は、トルソー柄の布同様に中古布の詰め合わせのバスケットに入っていた物です。細長い中途半端な大きさの正に端切れで、1/6ドールのアウトフィットには柄は大き過ぎ、また間隔が飛び過ぎていました。

それなら浴衣を作るしかないと思い立ちましたが、縫い上がった時は、少し布目が晒のように粗目で白地が多くて涼しげで、最初に考えていたより浴衣らしく仕上がったと我ながら思いました。

これならちょっと北欧っぽくてお洒落かもと一瞬思いましたが、…実際ドールに試着してみると、どちらかと言うと寝巻の浴衣っぽく、どんな帯を合わせてもお洒落に見えません。もしリカちゃんサイズではなく、面積の大きなmomoko DOLL用に作ったのなら、もう少し似合ったのかも知れませんが、それには布が足りませんでした。

そこで急遽友達から貰ったマリメッコの端切れで帯を作り、モデルにリカちゃん&フレンズの中では余り甘ったるくない赤毛ショートヘアのパレットFちゃんを起用して、何とか納得の着こなしとなりました。

こんな僅かな面積でも「マリメッコでっせ」と主張する威力、改めてスゲエ。しかしこの端布は胴の表面だけしか残りがなく、結びや裏地は紺無地で賄っています。

背面は地味ィになるので、結びにオーガンジーのリボンを加えました。

浴衣の生地は意外と厚めで、着付けするとボリュームがもっさり出る為、リカちゃんボディより少し背の高いピュアニーモ・フレクションSに替えました。

和服の場合、身頃が華奢過ぎて肩幅の狭いエモーション・ボディより、フレクションの方が他の方の着付けをネットで見ていても合うように思います。

カンカン帽、リネンのサコッシュ、ビルケンシュトック風サンダルを合わせ、活動的なコーデを目指しました。

寒色で纏めると男の子の浴衣っぽく、特にショートヘアではそう見えるので、雫型のイヤリングをプラス。

帯と共布のマリメッコのショルダー・バッグを合わせると、こんな感じになります。

この撮影には、夏らしくモデルにアイスクリームかアイスキャンディを持たせたかったのですが、そんな基本的なアイテムのミニチュアさえ持っていなかった事に少し慌てました。粘土で自作する時間は無かったので、仕方なくプラ・ビーズで棒付き飴ちゃんらしき物を作って持たせました。

つくづく、日本のガチャや百均屋は、ドル活に大きく貢献していると思います。と言うか、この存在を知っているドール・ファンにとっては、こちらでは何もかもかが不便で…。

イギリスにも精巧なミニチュアの入った、何が出るかは買ってからのお楽しみのカプセル・トイが今は売られているのですが、あくまで子供用玩具のくせに一個2000円以上するので、大人の私でも今だ新品を買った事はありまへん。売り方も自販機式ではなく、万引き防止用のアラーム付きセキュリティ・ボックスに入った高級仕様。…ガチャのくせにふざけんなと、ちゃぶ台を(持ってないけど)ひっくり返したくなります。







2025/08/23

ラインストーンの葡萄型ブローチ

六月に開催されたアーディングリーのアンティーク・フェアの最大の屋内会場Abergavennyで、この葡萄型のブローチに出会いました。

ビンテージと呼ぶ程古くなさそうですが、その分状態は良くて沢山鏤められたラインストーンの欠けもなく、何より姉のジュエリーとして好きなモチーフの葡萄で、ボリュームもインパクトも十分ある今まで見た事のないデザインですから、これは買って置かなきゃ!と即座に判断しました。

この葡萄の実それぞれを、一つのラインストーンで表現するのではなく、沢山の紫色のラインストーンで半球体状に覆い、更に一つだけハイライトとして無色透明+AB 加工のラインストーンを加えている所が独特です。

地金はマットな金色で、葉っぱ部分にも小さなABラインストーンが鏤められ、更にヘアラインが型押しされている凝ったデザインです。

また裏面を見ると、ペンダントとしても使えるようループが付いています。

その上、このループはヒンジで繋がれていて、使用する際は一度ピンを外し、引っ張り上げてからチェーンを通すスマートな仕組みです。

裏面にはサインが刻印されてあり、Suzanne Bjontegrad、通称Suzie Bと言うデザイナーのブランド製品です。名前はスウェーデン人とか北欧っぽく聞こえますが、1990年代にアメリカで流行した、高品質のラインストーンを多用したコスチューム・ジュエリーのデザイナーだそうです。90年代だからビンテージと呼ぶには若いのですが、今でもコレクタブルとして人気が高く、中古品のブローチが2060ポンド位で取引きされています。

この葡萄の他にもイチゴや洋ナシ、リンゴ、サクランボ等の果物シリーズのブローチが存在しますが、正直ケバくギラギラしいデザインで、もし見掛けたとしてもこの葡萄以外は興味を引かなかったかも知れません。葡萄には、黄緑色のマスカット風の色違いもあるようです。




2025/08/22

身長19㎝のキャッシー人形

 

その日のいつものフリーマーケットは、買いたいと思える物に中々出会えなくて、一通り見渡した後に最終的に、前の週も出店していたストールの再出店で、前回買っても良いかもと思っていた物を買いました。その一つが、このビンテージのファッション・ドールです。  

198090年代位のバービー人形の類似品を思わせるデザインですが、実はバービー達29㎝ドールより顕著に小さい、身長約19㎝の小さなドールなのです。前の週には、多分同じシリーズの人形が23体、他の最近の中古人形と一緒に段ボール箱に詰められて売られていましたが、買った時にはこれ一体のみ残っていました。

スケール的には、デイジー人形(1/6)ピッパ人形(1/12)の中間位で、1/8辺りのサイズに近いかも知れません。しかし90年代製造と言う中途半端な古さな為、デイジーやピッパのようなレトロな魅力はありません。老け顔の割に頭はデカく、腕が短くて幼く見えるボディとのバランスが悪く、金髪バービー同様の汚い地黒肌で正直可愛くありません。初めて見る古い人形で珍しいとは思ったものの、その可愛くなさが前の週に買うのを見送った理由です。

兎に角眼の位置が顔の上過ぎて老けて見えるし、瞳のデザインも三白眼気味です。顔は英プディグリー社から米ハスブロ社へ移ったばかりのニューフェイスのシンディを真似て、更にミニチュア化したような雰囲気にも見えますが、シンディの方がずっとマシなデザインです。前髪付きでクローズ・マウスであろうと、可愛くない人形は可愛くないんだな…と妙に納得しました。

髪が余りにもぐじゃぐじゃ過ぎて顔が良く見えないので、↑リンスして(※静電気を抑える為)整えてみました。元のフェイス・プリントを落とすと、アイホール等の顔パーツの型押しの位置からして、どうリぺイントしようとも自分の好みには仕上がらないだろうと確信しました。そもそも、バービーより遥かに小さいこの瞳を、果たしてリぺ出来るか自信はありませんでした。

しかし、顔を落としてしまったからにはリぺするしかなく、世の多くの女性達が何が何でも瞳を大きく見せるメイクに必死なように、瞳は型押しを無視して強引に出来るだけ大きく描きました。

髪質は古さの割には綺麗な状態で残っていますが、すぐにボサボサに広がってしまいます。ヘッド大きさに対して髪が大量過ぎて盛り上がって見えるものの、植毛密度は疎らで、掻き分けると簡単にハゲが見えます。

背中に「HORNBY ©1991」との刻印があり、ググってみると、有名なC.M.バーカーのイラスト「フラワー・フェアリー」を、ファッション・ドール化して販売していたのと同じイギリスの玩具メーカー製の、「Cassy キャシー」と言う人形だと分かりました。そう言えばあのフラワー・フェアリーの人形も、「原画へのリスペクトまるでないだろ」と思える程、全く絵に似ていない上に、ドールとしても可愛くなかった…。因みにHORNBYは、元々は鉄道模型で知られた有名な玩具メーカーです。

唯一このオリジナルと思われるアウトフィットだけは、やけに可愛いと思いました。白地のコットンに刺繍の入ったサマードレスで、こんな素直に少女らしくて清楚な服は、欧米のドールのアウトフィットとしては非常に稀です。刺繍は勿論機械刺繍ですが、裏に接着心が付いて補強されています。

この服の背面の留め具が面ファスナーなので、それ程古くない人形であろうとは検討が付きました。しかし、90年代の西洋のファッション・ドールのアウトフィットのデザインの酷さを考えれば、この服の可愛さはほぼ奇跡的です。肩紐が経年で伸びてしまったのか、少し油断すると身頃が下がり過ぎて胸が見えてしまうのが玉に傷。

フットウェアとしては、多分バービーのビンテージの透明ウェッジソール・サボを履かせています。どう考えても大き過ぎますが、ブルータックで固定して立たせています。この小ささでも一応ヒール足なので、他の小さなお人形の子供仕様のぺたんこ靴は合わないのです。 しかし、今まで出番のほとんどなかったこのサボのキッチュさと透け感が、結構この人形と格好には合うような気がします。

また、この小ささの割には可動域が意外とあり、腕の付け根は前後に動くだけでなく、球体関節式で開き、首も傾きます。膝は元々クリック式で曲がる仕様になっていますが、向かって右は壊れていて曲がりません。

キャシーには家や家具、馬屋(西洋の人形には必ずある!)も存在し、ファッション・ドールとして本格的に展開していたようです。しかしフラワー・フェアリー人形以上に見掛けた事のない稀さを考えると、商業的に成功したとは言い難いようです。 

その体の小ささから服を作るのも面倒臭く、結局リぺしても可愛くない事から、今後再びモデルとして出番があるとは思えませんが、何事もチャレンジで勉強にはなりました。 

しかし、毎度ドール撮影の背景でお馴染みのカレンダーには十分な面積がなく、他のファッション・ドールでは部分的にしか使えないのに対し、小さいサイズの為に全身を入れても大丈夫と言う利点はあります。