昨年の夏の我々夫婦で訪れたWorcester Cathedral ウースター大聖堂で、いよいよ回廊から本堂の中に入ります。
今や音楽の演奏会を開催する大聖堂は珍しくありませんが、ここは最西側が既に雛段式の客席になっており、コンサートに力を入れている事が分かります。普通最西は教会建築の正面玄関なのですが、ここは最早入り口としては使用していないようです。
大抵は大聖堂で最も大きい、西側のステンド・グラス。上部が円型のバラ窓になっていて、驚異の細かさです。
この大聖堂は7世紀に起源を持ち、現在の建物は11世紀後半にノルマン(ロマネスク)様式で建設が始まりました。その後ゴシック様式が加えられ、また17世紀の市民戦争では荒廃した後に修復され、今では様々な様式が複雑に入り組んでいるそうです。
大聖堂の長い歴史を考えると、多分そう古い物ではありませんが(多分ヴィクトリア時代)、繊細で清らかな天井画が見事でした。
特に、身廊と翼廊の交差するクロッシング部分の天井には、宇宙的な美しさがあり必見。イギリスの大聖堂は、この真上に最重量の塔(中央塔)が立っている場合が多く、建築工力学の腕の見せ所でもあります。
昔は家畜でさえ大聖堂に入るのを許されたそうですが、ここから先は不浄を禁止する聖域と言う意味で建てられたのが内陣障壁。ここの装飾は、大抵一際凝っています。
内陣の聖歌隊席も、特に木彫等に力を入れられています。
やはり、この部分の天井も美しい。両脇のパイプ・オルガンが、見るだけでも迫力です。
そして、ここの大聖堂には英国最大のノルマン様式の、crypt クリプトと呼ばれる地下聖堂があります。
ヨーロッパ大陸の教会や大聖堂の地下は、棺桶がずらりと並んでいたり、時々骸骨(主にペストで亡くなった)が剝き出しで山積みされていて、入るのに結構度胸が要る場所です。しかしイギリスの大聖堂の地下で、少なくとも一般公開されている部分は、祈りの場所となっています。
ここの墓地に埋葬されていて近年発掘された、15世紀の巡礼者の脚…ではなく(一瞬焦る)ブーツの残骸が展示されていました。遺体は恐らくロバート・サットンと言う洗濯屋だったかも知れない、と言う事まで解明されています。イギリスの巡礼地としては、大聖堂都市カンタベリー~ウィンチェスター間が有名ですが、大聖堂に寄って祀る聖人が異なる為、自分の願いに御利益のある聖人の大聖堂を礼拝に行くのが人気だったそうです。
この地下には、古代ローマ時代の遺跡が残っていました。壁画の描かれているのが、うっすらと見えます。イギリスの~cesterと名の付く市町村は、必ず古代ローマの駐屯地か入植地として関わる場所だったので、その遺跡が残っていても何ら不思議はありません。
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